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もうけの落とし穴

自社のノウハウと思い込んでいる時の落とし穴

新しいロボットの製造。他社には真似されるおそれがないため、特許出願ではなくノウハウ管理することにしていた。が、ある日工場長が・・・!<平成24年度制作>

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どんな落とし穴だった?

特許出願せず,ノウハウとして製品の効率的な製造方法を工夫していたが,技術者が会社を辞めた後で,その技術の資料が全く残っていなかった。さらに技術者は,その技術を他社に教えて大金を得ていたことが判明し,会社は大損害を被ってしまった。その技術者に抗議し,賠償を求めるとともに,あらためて資料の引き渡しを求めたところ,資料は会社にいるときから,ずっと自分のノートパソコンに入れており,会社に提出するようにとか,秘密にするようにとか指示は受けていなかったし,技術を売ったときに売り先との間で他には教えないと約束したから,教えられないと拒否されてしまった。

この落とし穴に落ちないために

ノウハウ等の営業秘密は,不正競争防止法により保護されていますが,そのためには,(1)秘密として管理されていること,(2)有用な情報であること,(3)公然と知られていないこと,の3つの要件を満たすことが求められています。このうち,秘密として管理されているか否かについては,いくつかの判例が出されており,その分析をもとにして,経済産業省から営業秘密管理チェックシートが公表されています。法律上の保護を受けるためには,これを活用すること等により適切な管理をしておく必要があります。

自社の有する技術や情報について,秘密としての管理が不適切だった場合,重要な技術が他に流出したり,技術者の退職により失われたりする危険性もあります。秘密は一度公になってしまうと元の秘密には戻せません。しかし,秘密として管理されている間は,自社の事業戦略が他社に明らかとならず,期間制限なく他社との差別化を図ることができるというメリットがあります。自社の技術について,営業秘密としてではなく,特許等の知的財産権を取得して管理する方法もあります。この方法によると,排他的独占権を取得でき,秘密管理の必要性がないというメリットがある一方,公開がなされることにより他社に模倣されたり,周辺特許を取得されたりする可能性があり,また存続期間の定めもあります。

それぞれのメリット・デメリットを考慮したうえで,適切な知財戦略を立てることが重要です。そのためにも自社が有する技術や情報の内容と価値を把握しておくことが大切です。

※営業秘密・知財戦略等についてのご相談は、お近くの知財総合支援窓口

山本英雄

山本 英雄

弁護士

加藤・山本法律事務所

昭和62年弁護士登録、加藤・山本法律事務所に所属。
企業の監査役のほか、特許に関する講演やセミナーなど、知的財産に関し法的観点からの支援を行う。