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もうけの落とし穴

製造方法を特許出願した時の落とし穴

社長はあるロボットの製造コストを大幅に引き下げることのできる効率的な製造方法を開発した。その製造方法は、完成した製品を見ただけでは想像できない方法であったが、念のため他社の模倣を防止すべく特許出願した。がしかし、模倣品が出回り、ロボットの売り上げは低迷!なんでこうなるの~!!<平成24年度制作>

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どんな落とし穴だった?

A社は、ある製品の製造コストを大幅に引き下げることのできる効率的な製造方法を開発した。その製造方法は、完成した製品を見ただけでは想像できない方法であったが、念のため他社の模倣を防止すべく特許出願した。出願から1年半後には出願内容が公開されるとともに、A社が審査請求を行ったところ、従来技術と比較して進歩性なしとの拒絶理由通知がなされ、反論したものの拒絶されてしまった。一方B社は、A社の公開公報を参考にして自社の製造方法に適用するとともに、A社の特許出願が拒絶されたのを確認してから、A社と同じ製造方法により効率的な生産を開始し、製造コストの大幅な引き下げに成功した。

この落とし穴に落ちないために

特許が認められると、特許権者には一定期間その特許発明を独占排他的に実施する権利が与えられます。一方で、特許権は技術内容の公開の代償として与えられるものですから、特許出願にあたっては発明の内容を詳細に記載する必要があり、出願から1年6カ月が経過すると出願内容が公開されて誰でもその内容を知ることができるようになります。このように、特許出願は、特許権を取得できる可能性を生じさせるとともに、競合他社に技術内容を知られるというリスクを伴うものであることを理解しておく必要があります。

例えば、完成した製品を見ただけでは想像できないような製造方法であれば、特許出願するよりも、自社内でノウハウとして管理して、競合他社への情報流出を防ぐ方が得策かもしれません。また、製造方法のような場合には、競合他社に模倣されたとしても、その侵害行為の発見自体が困難な場合もあります。厳格に管理を続けることができるのであれば、特許権のような存続期間がない分、ノウハウとして管理していく方が有利といえます。

 一方で、特許出願せずにノウハウ管理するといっても、法律上の保護を受けるためには様々な要件があり、技術者の流出等への対策も含めて適切な社内体制を構築する必要があります。

 従って、対象となる技術内容や社内体制等を勘案しつつ、特許出願とノウハウ管理のメリット・デメリットを考慮して、自社技術の保護方法を検討する必要があります。

信末 孝之

信末 孝之

弁理士

三原・信末特許事務所

特許・実用新案・意匠・商標の権利化や侵害問題に精通。企業の知的財産戦略策定の支援も行う。技術分野は、生活用品、一般機械、運輸、土木建築、制御、メカトロ、コンピューター(ハード)、ソフト、情報処理、通信、電気・電子回路、ビジネスモデルなど。