荒牧 要はファンタジーとイコールというか、もう手に入らないものをそしゃくし直すことで、今のヒントを得ようとしていると思うんです。未来に希望が持てない中で、そこにヒントがあるんじゃないのかなと。
●2人が考える“攻殻らしさ”
―― 原作が世に出た当時、あるいはS.A.C.が放送されたころは、まだインターネットが黎明(れいめい)期または普及期で、それ故にSFとしての『攻殻機動隊』にも心引かれるものがありました。しかし2020年の現在は、かつて夢見たような未来感はなくて意外に平凡な世界ですよね。その辺りも踏まえて、“攻殻機動隊らしさ”はどこに宿ると考えられているのでしょうか?
神山 もはやサイバーパンクがノスタルジックなものになりつつありますが、攻殻機動隊はそうしたイメージも持たれているのも確か。僕は原作コミックの「人形使い」のエピソードは触れずにきましたが(編注:S.A.C.シリーズは草薙素子が人形使いと出会わなかったパラレルワールドとして描かれている)、草薙素子はあれを人類史に残る三大事件相当に評価しています。