クラフトビールの定義について徹底解説!日本が参考にしたアメリカのCraft Brewerの定義とは?

Craft Brewer Definition クラフトビールの定義

皆さん、こんにちは!

ビアソムリエの工藤です。

この記事では5400以上の醸造所が加盟している、アメリカのクラフトビール業界で最大の影響力を持つ業界団体『Brewers Association』が掲げる

今回のテーマ
  Craft Brewerの定義
について初心者の方にも分かりやすく、和訳を付けて、丁寧に解説していきたいと思います。

 

現在のクラフトビールの流行はアメリカから始まっており、2006年には既に『Craft Brewerの定義』は存在していました。

この定義は世界各国のクラフトビール業界に少なからず影響を与えています。

日本も例外ではなく『全国地ビール醸造者協議会』が『Craft Brewer定義』に準じてクラフトビールを定義しています。

  • クラフトビールとはどんなビールなのか?
  • クラフトビールの定義とは何か?
  • クラフトビールについて知りたい!

と思った時に避けて通れないのが

『Craft Brewerの定義』なのです。

という訳でこの機会にしっかり頭に叩き込んでしまいましょう!

分かりにくい点や疑問点などがありましたら、TwitterInstagramでご連絡頂ければ可能な限りご返信いたします。

合わせて

を読んで頂ければ、クラフトビールの定義に関する知識は上級者一歩手前くらいまでレベルアップするはずです。

では、早速解説に入ります!

1. アメリカに『クラフトビール』の定義は存在しない⁉

前回の記事を読んだ方は

「またこのパターンか…」

と思っているかもしれませんね…笑

 

ですが!

 

非常に重要な事だと思うので

最初に書いておきます。

 

クラフトビールに関連するアメリカ最大の業界団体Brewers Associationは『Craft Beer(クラフトビール)』を定義していません。

代わりに『Craft Brewer(クラフトブルワー)』を定義しています。

つまり、クラフトビール』そのものではなく『造り手(醸造者)』を定義しているのです。

ここは非常に重要なポイントなのでしっかり頭に入れておきましょう!

  • なぜクラフトビールを定義しないのか?
  • Craft Brewerが造ったビールがクラフトビールでいいんじゃないの?

など様々な疑問が浮かんでくるかと思いますが、読み進めて頂ければ解決できます。

定義の具体的な内容に入るまで少し長いかもしれませんが、この前提を学んでおかなければ『Craft Brewerの定義』を真に理解することは難しいので是非飛ばさずに読んで頂ければと思います。

 

1-1 Craft Brewer が醸造するビール=クラフトビール ?

基本的に『Craft Brewer』が醸造するビールを『クラフトビール』と呼んで間違いになる事はありません。

しかしながら、

『Craft Brewer以外』が醸造するビールは全て『クラフトビール』と呼べないのか

と言うと違うようです。

2006年に『Craft Brewerの定義』が初めて発表された時には

Craft beer only comes from craft brewers.

和訳:クラフトビールはクラフトブルワーのみから提供される

といった記載がありましたが、翌年の2007年に削除されました。

 

この一文を削除することにどんな意味や意図があるのか?

個人的には

『Craft Brewer以外』(=主に大手ビールメーカーやその傘下)が作るビールを『クラフトビール』だと言える可能性を示唆している

と考えるのが妥当ではないかと思っています。

Brewers Associationは『Craft Brewer以外』が醸造したビールを『クラフトビール』ではないと断定する事を避けているのです。

 

この事に関連して、大手の造るビールが『クラフトビール』の表示を使用しても問題ないのかどうか裁判で争われた例があるのでご紹介したいと思います。

 

1-2『Blue Moon』は『クラフトビール』と呼べるのか ?

2015年にカリフォルニア州に住む男性が、ホワイトビールの有名ブランド『Blue Moon』を所有するアメリカの大手ビール会社ミラークアーズを訴えました。

男性側の主張を簡単にまとめると

  • ミラークアーズは大規模な会社であり『Craft Brewer』の要件にあてはまらない。
  • ミラークアーズは『Craft Brewer』でないにも関わらず、『Blue Moon』に”Artfully Crafted”等の表現を使用し、また自社の製品であることを表示せずに『クラフトビール』として宣伝し消費者を欺いている。
  • 消費者は『Blue Moon』を『クラフトビール』と誤解してしまう事によって、必要以上に高いお金を支払わされている。

以上の3点です。

男性側の主張をもっと詳しく知りたい方はこちらをお読みください。

 

裁判の結果から言いますとこの訴えは棄却された為、ミラークアーズは罪に問われることはありませんでした。

この際、同社は

ミラークアーズが“craft beer”“Artfully Crafted”の表現を使用しても合理的な消費者が誤解することはない。なぜなら広く一般に受け入れられている”craft beer”の定義は存在しないからだ。

といった内容の主張をしています。

上記の内容が主張の全てではありませんが、裁判の結果はこうした主張を支持した形になります。

つまり、

クラフトビール』に明確な定義は存在せず『Craft Brewer以外』が醸造したビールを『クラフトビール』と呼べる場合もある。そして消費者にそれで不都合は生じない。
と司法機関は判断したと言えます。

こうした事からも

Craft Brewerが醸造したビール

||

クラフトビール

は成り立ちますが

Craft Brewer以外が醸造したビール

クラフトビール

は必ずしも成り立たないと考えられます。

 

いや、本当にクラフトビールって突き詰めていくとややこしい存在ですね(^-^;

そんな所も魅力の一つなのかもしれませんが…

 

ここまで読んで頂ければ皆さんお分かりかと思いますが、『Craft Brewerの定義』は業界団体であるBrewers Associationが定めたものである為、法的な拘束力はありません。

Brewers Associationの規模や影響力は決して小さくはないと思いますが、法的効力を持つほど強力なものでもないようです。

 

「じゃあ、裁判とかでもそこまで役に立たないのに『Craft Brewerの定義』を決める事にどんな意味があるの?」

 

次は章ではこんな疑問に対する回答をご用意しております。

先に定義の内容について確認したい方は記事の最初(PCをご利用の方は右のサイドバーにも)に目次をご用意しておりますので、そちらから知りたい内容をクリックして頂けますと幸いです。

 

1-3『Craft Brewer』を定義するメリットとは何か

簡潔に言ってしまえば、

クラフトビール業界の統計データを取れるようになることです。

その他にもBrewers Associationの記事では『Differentiation』、つまり大手の大量生産のビールとの差別化も挙げていますが、データを取れるようになる事が一番大きなメリットだと私は考えます。

 

きちんとしたデータを取るためにはデータを取る対象を明確に線引きして決めなくてはなりません。

そうしなければどれをデータに含めて、どれを除外すればいいのか分からなくなるからです。

 

極端な例を挙げれば『りんご』という言葉を知らない人に

「りんごが何個あるか数えてください」

と言ってもどれが『りんご』なのか分からない為、数えることは出来ません。

 

同じように『クラフトビール』や『Craft Brewer』も定義することによって、線引きを明確にしなければ統計データを取ることはできないのです。

 

Brewers Associationは『Craft Brewer』を明確に定義し、それに沿って年間の売上や生産量などのデータを集計し公開しています。

こちらから最新のデータに飛べますのでご興味のある方はどうぞ!

 

こうしたデータによって業界の市場規模や発展・衰退の推移を数字で把握でき、分析等もしやすくなります。

既存の醸造所新規参入を狙う人々はもちろん、流通業者・小売業者・銀行・メディアなどもその統計データを高く評価しているそうです。

 

このように『Craft Brewer』の定義はどちらかと言うと、消費者(いわゆる飲み手側)ではなく事業者・生産者の為に作られたものなのです。

では、

「我々消費者が『Craft Brewerの定義』について学ぶ必要はないのか?」

というとそんな事はありません。

今後クラフトビール業界がより良いものになっていく為には、業界の人間だけではなく消費者も『クラフトビール』や『Craft Brewer』の定義に関する問題意識を持つことが必要だと私は思っております。

ぜひ第2部以降の内容についても読み進めてみてください。

 

という訳で私自身もここまで長くなるとは予想していなかった『前置き』がようやくこれにて終了です(^-^;笑

皆さんお疲れさまでした。

 

ここから『Craft Brewer』の定義の中身について解説していくのですが、その前に…

定義を掲げているBrewers Associationがどんな組織なのか確認しておきましょう!

 

2. Brewers Associationとはどんな組織か

ACBE

・BAが関わる日本でのイベントACBEにて

簡単にまとめると

  • クラフトビールやホームブルーイング業界の発展のために尽力している
  • 会員数が非常に多く、業界内では最大規模の団体である。
  • クラフトビール業界に対する影響力はかなり大きい。

以上3つの要点を押さえておけばとりあえず問題ないと思います。

Brewers Associationは『Craft Brewer』税制上有利になるよう政府に働きかけるロビー活動なども行っています。

『Craft Brewer』を定義する事には自分たちが保護し発展させていく対象を明確化させるという意味もあるわけです。

 

下にBrewers Associationの概要についてもう少し詳しい説明を書きますが、定義に関する重要事項は上記のもので十分だと思いますので読み飛ばして頂いても問題ないです。

 

Brewers Associationは2005年に『The Association of Brewers』と『Brewers’ Association of America』の合併によって設立された非営利の業界団体です。

目的はアメリカの小規模で独立した醸造者(Craft Brewer)とCraft Brewerが醸造するビール、そして醸造愛好家達のコミュニティを促進し、保護すること。

また、団体の一部門としてAmerican Homebrewers Association(アメリカン・ホームブルワーズ・アソシエーション)を持っており、ホームブルワー(自宅でビール、ミード、サイダーなどを趣味で醸造する人々)の支援も行っています。

5400を超える醸造所、46000を超えるホームブルワーが会員として加盟しており、アメリカのクラフトビール業界において最も強い影響力を持った団体の一つである事は間違いありません。

 

以上Brewers Associationの概要でした。

それではお待ちかねのBrewers Associationが定義する『Craft Brewer』の具体的な内容に入っていきましょう!

合わせて読みたい参考リンク
Brewers AssociationのWEBサイト

3.『Craft Brewer』の定義

まずはBrewers AssociationのWEBサイトに掲載されている原文を載せておきます。

以下引用です。

An American craft brewer is a small and independent brewer.

Small

Annual production of 6 million barrels of beer or less (approximately 3 percent of U.S. annual sales). Beer production is attributed to a brewer according to rules of alternating proprietorships.

Independent

Less than 25 percent of the craft brewery is owned or controlled (or equivalent economic interest) by a beverage alcohol industry member that is not itself a craft brewer.

Brewer

Has a TTB Brewer’s Notice and makes beer.

以上が『Craft Brewer』の定義です。

 

…で終わってしまってはこの記事に価値はないので和訳を付けながら詳しく解説していきます。

 

ちなみにこの記事を読んでいる方の中には

  • Small(小規模)
  • Independent(独立)
  • Traditional(伝統的)

と覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、2018年12月に行われた定義の更新によって『Traditional(伝統的)』の項目は削除されました。

この理由については後ほど解説致します。

という訳で上から順に確認していきましょう。

まずは

An American craft brewer is a small and independent brewer.

和訳:アメリカのクラフトブルワーは小規模かつ独立した醸造者である。

について。

実はこの最初の一文が『Craft Brewer』の定義を簡潔にまとめたものです

後ろに続く『Small』『Independent』『Brewer』の項目はそれぞれの単語が最初の一文でどのような意味で用いられたのか補足(線引き)しています。

それでは『Small(小規模)』の規定から確認していきましょう。

 

4.『Small(小規模)』の規定について

小規模の規定

まずは内容の確認と和訳から

Annual production of 6 million barrels of beer or less (approximately 3 percent of U.S. annual sales). Beer production is attributed to a brewer according to rules of alternating proprietorships.

和訳:年間のビールの製造量が600万バレル以下(アメリカの[ビール業界全体の]年間販売数量の約3%)であること。ビールの製造量はalternating proprietorshipsというルールに則って醸造者に帰属する。

※〔〕内は意味を取りやすいように補足したものです。

重要になるのは前半に出てきた『600万バレル』という数字です。

後半の文章は「Tobacco Tax and Trade Bureau (=TTB:アルコール・タバコ税貿易管理局)が定めるalternating proprietorshipsというルールに従って製造量を数えますよ。」といった内容です。

 

alternating proprietorships についての詳しい説明は本題とズレる上にそれなりの文章量が必要となるので今回は省きます。

詳しく知りたい方は以下の外部リンクを参考にしてください。

次の章では小規模の基準となる『600万バレル』という数字について詳しく解説していきたいと思います。

 

4-1 年間『600万バレル』とは果たして小規模なのか?

先ほどCraft Brewerの定義においてSmall(小規模)の基準が『600万バレル』以下であると確認しました。

『バレル』という単位に馴染みのない私達には全くピンと来ないので、まずは単位をL(リットル)に直したいと思います。

ビールの場合はアメリカの税制上『1バレル=31米液量ガロン=約117L(リットル)』と定められているので

600万バレル=約7億L

となります。

……

………

単位をリットルに直しても膨大すぎる量なのでやはりピンときませんね^^;笑

 

そこで!

日本のクラフトビールのデータと比較してみたいと思います。

今回比較に使うのは国税庁が出している『地ビール等製造業の概況』の平成29年(2017年)度調査分です。

こちらからダウンロードできますので気になる方はどうぞ!

 

の資料上の日本のクラフトビールの販売数量は

3万5090KL(キロリットル)=3509万L(リットル)※1

※1 調査対象となっているのは大手5社(アサヒ・オリオン・キリン・サッポロ・サントリー)を除く275の製造者(≒クラフトビールの醸造者)で、回答者数は251者です。

24者(約9%)の回答を得られていない為、実際はもっと多いと思われます。

600万バレル=約7億Lですから日本の約9割の合計値の20倍ほどですね。

…皆さんの言いたい事は分かります。

 

「全然小規模じゃないじゃん!」

 

私もそう思います(笑)

がしかし、Brewers Associationの2017年のデータによるとアメリカ全体のクラフトビールの販売数量はなんと約30億L(約2540万バレル)。

日本のおよそ85倍です。

これだけ市場規模が違うため、日本にいる私達の小規模の感覚アメリカ人の小規模の感覚は全く異なるのかもしれません。

ですが、やはり私個人としては1社で600万バレルもの製造を行う醸造者を小規模と言うことに対して疑問符がつきます。

 

ちなみにこの『Small(小規模)』の規定ですが、2010年以前は『200万バレル』以下が基準となっていました。

市場規模の拡大を理由に2010年に3倍の600万バレルに引き上げられたのですが、この変更の際にBrewers Associationは批判を受けています。

詳しい内容はかなりの文字数が必要な為、別の記事にて書く予定ですので暫しお待ちください。

というわけで、次は『Independent(独立)』について解説していきます。

 

5.『Independent(独立)』の規定について

『Small(小規模)』の規定と同じく原文の確認と和訳からやっていきましょう。

Less than 25 percent of the craft brewery is owned or controlled (or equivalent economic interest) by a beverage alcohol industry member that is not itself a craft brewer.

和訳:クラフトブルワー(Craft Brewer)ではないアルコール飲料業界のメンバーによって所有または管理される(もしくは同等の経済的利益の)割合が25%未満の小規模醸造所(クラフトブルワリー)である事。

非常に訳しにくい文章なのですが、上記の和訳でなんとなく意味を理解して頂けるのではないかと思います。

言い換えるなら

「25%以上の権限をCraft Brewer以外の酒類メーカーに渡した醸造所はCraft Brewerと認めないよ。」

といった感じでしょうか。

 

この『Independent(独立)』の規定が話題に上がるのは、大手ビールメーカーによるCraft Brewerの買収の時がほとんどだと思います。

所有または管理されているかどうかを判断する基準としては株式を保有する割合(持株比率)が主に使用されます。

Craft Brewer以外の会社に25%以上株式等を持っていかれたらアウトとなる訳です。

日本の大手ビール会社がアメリカの有名ブルワリーを買収したり、資本提携した例をご紹介しながら解説、そして浮かび上がる問題点に言及していきたいと思います。

 

5-1 日本の大手ビール会社によるCraft Brewerの買収・資本提携の例

・キリンビールによるNew Belgium Brewingの買収

ニューベルジャン Voodoo

まずは2019年の11月に報道されたキリンビールによるNew Belgium Brewing(ニューベルジャン・ブルーイング)の買収の例から見ていきましょう。

まさか日本の企業がこんなクラフトビール大手を買収するなんて…と驚いた方も多いのではないかと思います。

日本のメディアでは「米クラフトビール3位」と紹介する記事をよく見かけましたが、2019年のBrewers Associationのデータによればクラフトビール醸造業者(Craft Brewing Companies)として第4位、アメリカのビール業界全体では第11位の規模のブルワリーでした。

2020年3月までにキリンが全株式を取得するとの事でしたので、ニューベルジャンは現在キリンビールの完全な子会社となった訳です。

大手に100%株式を保有された為、当然Craft Brewer定義からは外れました。

 

・サッポロビールによるAnchor Brewingの買収

アンカー参考画像

2017年には歴史上最初の現代的なクラフトブルワリーと称される事もあるAnchor Brewing(アンカーブルーイング)をサッポロビールが買収しました。

アンカーブルーイングは現在Craft Brewerとして第3位の売上を誇るSierra Nevada Brewing(シエラネバダ)の創業者ケン・グロスマンをして『レジェンド』と言わしめる人物フリッツ・メイタグが倒産寸前に買収し、再建した事で知られる醸造所です。

 

高品質で付加価値のあるビールを作り、プレミアム価格で販売するという戦略は現在どこの醸造所でも行われていますが、そのビジネスモデルを最初に成功させたのがフリッツ・メイタグの率いたアンカーブルーイングなのです。

そんなクラフトビールの歴史上でも重要な役割を果たした醸造所も現在はサッポロビールの傘下になった為、Craft Brewerではなくなりました。

ちなみに買収される前年の売上はクラフトビール醸造業者中22位でした。

 

・キリンビールとBrooklyn Breweryの資本業務提携

2016年にキリンビールとBrooklyn Brewery(ブルックリン・ブルワリー)は資本業務提携を結びました。

その際キリンビールはブルックリン・ブルワリーの株式を24.5%取得しています。

 

これは25%未満ですのでギリギリCraft Brewerの定義には抵触しません。

 

2017年にはキリンビールが60%、ブルックリン・ブルワリーが40%を出資したブルックリンブルワリー・ジャパンが設立され、日本国内のブルックリンブランドの事業を展開しています。

今年(2020年)の2月には東京・兜町に旗艦店の『B(ビー)』がオープンしましたね。

 

このように大手ビール会社と手を組んで事業を行ったとしても株式等が25%以上保有されなければ、現状Craft Brewerと認められるようです。

 

『株式の保有率』と『equivalent economic interest(同等の経済的利益)』の両方を合計した場合25%以上になるんじゃないか、とか個人的には思ったりもしますが…

Brewers Association的にはOKなのでしょう。

その証拠にブルックリン・ブルワリーは2019年の統計データにクラフトビール醸造業者として12位にランキングされています。

 

5-2 大手に買収されたCraft Brewerのビールはクラフトビールと呼べないのか ?

大手傘下のビール

先ほど挙げた以外にも日本でも良く知られる

  • Lagunitas(ラグニタス)
  • Ballast Point(バラストポイント)
  • GOOSE ISLAND(グースアイランド)
  • Founders(ファウンダーズ)

など知名度が高く規模の大きい『Craft Brewer』海外の大手メーカーによる買収資本提携等によって『Craft Brewer』でなくなった例は存在しますし、これからも増えていくでしょう。

 

実際、これらのメーカーのビールを『クラフトビール』だと認識していらっしゃる方も多いと思いますし、私もそう思います。

しかし、現在Brewers Association では『Craft Brewerの定義』から外れた醸造所のデータは『クラフトビール』のデータとして扱いません。

 

もし、あなたがこれらの醸造所のファンだったとして

「Craft Brewerじゃなくなったので、彼らのビールはもうクラフトビールじゃありません。」

と言われて納得できるでしょうか?

 

大手の資本が入る事によって大きく味が変化したり、劣化してしまった場合にはむしろこちらから

「クラフトビールを名乗るな!」

と言ってやりたい気持ちになるかと思いますが、品質もブランド名も変わらないまま醸造されているのであれば、それは『クラフトビール』と呼んでいいんじゃないかと思う方も多いはずです

 

長い長い『前置き』でもお話しましたが

「Craft Brewerが造るビールだけがクラフトビールだ」

という訳ではないのです。

 

上記の事を考慮するとBrewers Associationのデータはクラフトビール業界の現状を把握するのに正しいデータと言えるのか疑問が残ります。

Brewers Association Announces Top 50 Brewing Companies by Sales Volume of 2019では

『Craft Brewer』ではなく『Craft Brewing Companies』という名称を使用しているわけですから、『Craft Brewer以外』でクラフトビールを醸造しているブルワリーのデータが入ってきてもおかしくないはずです。

 

ですが、『クラフトビール』が定義されていないので、どれをデータに含めるのか選択する事もこれまた非常に難しい…

このように現状の定義はある種の限界を迎えているのは確かだと思います。

私が解決策を提示できるわけではありませんが、我々消費者が一人一人がこのような問題点を把握し発信していく事が問題解決への足掛かりになるのではないかと思います。

この記事が皆さんにとって考えるきっかけになってくれると嬉しいです。

 

さて、長くなってしまいましたが『Independent(独立)』の規定についてはこれにて解説終了です。

 

続いて『Brewer』の規定について、削除されてしまった『Traditional(伝統的)』の規定についても触れつつ解説していきたいと思います。

 

6.『Brewer』の規定について

まずは他の2つの規定と同じように原文の確認と和訳から

Has a TTB Brewer’s Notice and makes beer.

和訳:TTBのBrewer’s Noticeを得て、ビール造りを行っている。

和訳が全然和訳になっていませんが、とりあえずTTBBrewer’s Noticeについて説明いたします。

  • TTBとはTobacco Tax and Trade Bureau (アルコール・タバコ税貿易管理局)の事で、その名の通りお酒やたばこに関する事を管理する行政機関です。
  • Brewer’s Noticeとはアメリカで『販売を前提とする商業的なビール醸造』を行う際に取得する必要のある資格・免許・ライセンスのようなものだと思っていただければいいと思います。

つまり「行政機関の許可を得て商業的なビールの醸造を行っている」というのが『Brewer』の条件である訳ですね。

ものすごく当たり前の事で記載がなくても良さそうな気がしますが、Brewer’s Noticeを取得していてもビールの醸造を行っていない所もあるのでしょう。

 

【3.『Craft Brewer』の定義】の冒頭でお話したように『Brewer』という規定は『Traditional(伝統的)』という規定が削除された事により加えられたものです。

なぜそのような変更が行われたのか、『Traditional(伝統的)』の規定の内容について確認しながら次の章で解説していきます。

 

6-1 『Traditional(伝統的)』の規定の変更について

書類

『Traditional(伝統的)』の規定は2018年の12月削除されたのですが、その前に2014年に変更が加えられています。

まずは、変更前の規定から確認していきましょう。

変更前の『Traditional(伝統的)』の規定

A brewer who has either an all malt flagship (the beer which represents the greatest volume among that brewers brands) or has at least 50 percent of its volume in either all malt beers or in beers which use adjuncts to enhance rather than lighten flavor.

和訳:麦芽100%のフラグシップビール(その醸造者のブランドで最大の製造量のビール)を持っている、もしくは少なくとも製造量の50%が麦芽100%のビールであるか、フレーバーを軽くするためではなく高める為に副原料を使用したビールである醸造者。

そのまま和訳すると非常にややこしいですね…

簡単に整理してみましょう。

  1. 麦芽100%の醸造所の看板となるビール(=フラグシップビール)を持っている。
  2. 醸造されるビールの50%以上が麦芽100%である。
  3. 醸造されるビールの50%以上がフレーバー(≒風味)を軽くする為ではなく、高める為に副原料を使用したビールである

以上の3つの内どれか1つを満たせば条件クリアという事です。

 

回りくどい言い方をしていますが、要は

「大手のような米やコーンを使ってライトに(=風味を軽く)仕上げたビールをウリにしている醸造所はCraft Brewerとして認めないよ」

って事が言いたかったんだと思います。

 

◎2014年の変更後の規定について

●変更後の『Traditional(伝統的)』の規定

A brewer that has a majority of its total beverage alcohol volume in beers whose flavor derives from traditional or innovative brewing ingredients and their fermentation. Flavored malt beverages (FMBs) are not considered beers.

和訳:製造されるアルコール飲料の過半数が伝統的もしくは革新的な原材料とそれら原材料の発酵に由来するフレーバー持つビールである醸造者。フレーバード・モルト・ビバレッジ(FMBs)はビールと見なさない。

変更前は原材料の麦芽の含有率や副原料の使用について言及していましたが、変更後は原材料についての縛りは実質なくなったと考えていい内容になりました。

変更に至った理由として

  1. 利用可能な副原料を使用した醸造は長年行われてきたものであり、伝統的であると認識を改めた。
  2. 定義を変更することにより、新たなビアスタイル(ビールの種類)を生み出したり、既存のビアスタイルの中で創造性を発揮する余地を醸造者に提供できる。

以上の2点をBrewers Associationは挙げています。

その他

  • Craft Brewer』が初めて定義された2006年に比べて積極的に副原料を使用するブルワリーが多くなった事
  • 風味を軽くする、高めるというのは主観的な判断に頼らざるを得ない事

が理由ではないかと分析しているクラフトビール関連のメディアもありました。

◎定義の変更による影響

定義の変更によって、現在もTop 50 Craft Brewing Companiesでトップの座に君臨するD. G. Yuengling & Son Inc.(イングリング)など、小規模、独立の基準は満たしているが、『伝統的ではない』と見なされていた商品が看板ビールである醸造所がCraft Brewerの仲間入りをしました。

その結果統計データで2014年に着目するとものすごい伸びを見せているのですが、こうした定義の変更があった事を念頭に置かなければ、分析を誤る可能性があるので注意しましょう。

 

◎FMBsとは何か ?

スミノフ

変更後の規定には

Flavored malt beverages (FMBs) are not considered beers.

和訳:フレーバード・モルト・ビバレッジ(FMBs)はビールと見なさない。

という一文がありましたが、Flavored malt beverages (FMBs)は私達、日本人にとって馴染みの無いものなので解説いたします。

簡単に説明しますと

FMBsとは
ビールと同じように麦芽を発酵させて作ります(アメリカの法律ではホップの使用も義務付けられる)が、炭素ろ過など様々方法を用いて麦芽やビールのような風味を取り除き、その後添加物で風味付けをしたもの。

となります。

アメリカではワインやスピリッツベースのフレーバー飲料に高い税率が課される為、このような飲料が生まれました。

詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

 

日本ではウォッカベースで作られているスミノフアイスなどがアメリカでは税率を安く抑える為、FMBsとして生産されているようです。

日本ではビールに高い税率が課される為、麦芽以外の原材料を使用してビールの味を再現しようとした訳ですが、アメリカではどうやったら税率の低いビールをカクテルのような味に出来るのか研究されてきたようです。

 

国の定める税率がお酒の文化に強い影響をもたらす事を示す例と言えますね。

 

さて、本題からはややそれてしまった感はありますが、気を取り直して次は『Traditional(伝統的)』の定義が削除されるに至った理由について解説していきたいと思います。

 

6.2 『Traditional(伝統的)』の規定が削除されるに至ったのは何故か ?

キーワードとなるのは“majority”=『過半数』です。

『Traditional』『Brewer』の規定で大きく違うのは製造する酒量の過半数(=50%以上)がビールでなければならないかどうかです。

 

『Brewer』の規定では政府機関の許可(TTB Brewer’s Notice)を所持しビールを醸造していれば、ワインやサイダー(リンゴの醸造酒)、ミード(はちみつの醸造酒)などをメインに醸造しても問題ありません。

『Traditional』の規定ではこれは許されませんでした。

 

Brewers AssociationのチーフエコノミストであるBart Watson氏によれば2017年には約60の醸造所が『Traditional』の過半数の要件に反する為、データから除外されたそうです。

また、2018年に『Brewer』の規定への変更がなければ、その数は100前後になっていただろうと予測しています。

 

加えて『Brewer』の規定への変更が行われる際(2018年12月)にBrewers Associationが公開したFAQによれば

約40%以上のCraft Brewerがビール以外(サイダー、ミードなど)の醸造をすでに始めており、今後醸造を検討している所も含めると半数以上にもなる
とのこと

 

こうしたCraft Brewerの実情を踏まえると『Traditional』の規定は業界発展の妨げになると判断され為、『Brewer』の規定に置き換えられたようです。

7. まとめ

いかがでしたでしょうか?

この記事で『Craft Brewerの定義』について理解を深めて頂けたのなら幸いです。

 

クラフトビール文化の先進国であるアメリカでも『クラフトビール』については明確に定義できておらず、苦肉の策(かどうか本当の所は分かりませんが)で作った『Craft Brewer』の定義についても何度も変更が加えられ、試行錯誤が繰り返されているようです。

この記事を書いていてクラフトビールは魅力的ですが、本当にややこしい存在だと改めて認識させられました。

 

定義の変更についてはその度に

「定義がブレてしまってはそもそも定義としての役割を果たせていないのではないか?」

などの批判にさらされている訳ですが、クラフトビール文化の歴史はまだ浅く、変化も目まぐるしい業界であるため仕方のない部分もあると思います。

 

今回はあまりに長くなってしまう為ご紹介できなかったのですが、いわゆる『大人の事情』が絡んでいる事もあるようなのでその辺は批判されて然るべきですね。

『大人の事情』についての詳しい内容は別の記事にて書くつもりですのでお楽しみに!

 

また、アメリカの定義と合わせて日本のクラフトビールの定義について知りたい方は

を是非お読みください!

 

感想やご意見などございましたらTwitter等のSNSでお待ちしております。

 

これからも良きビールライフを!

 

それでは、また。