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『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE』は『FINAL FANTASY Ⅶ』の REMAKE ではなくて『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE』だった

ネタバレします。感想っつうかなんというか。

えー、『FINAL FANTASY VII』(旧作)をプレイしたのは小学生の頃。それ以来『Ⅶ』関連作品は全部網羅している……ってほど追いかけてきてないです。『FFⅦ AC(アドベントチルドレン)』を観たくらい。『ダージュ オブ ケルベロス』をちょっと触ったかな? あ、『エアガイツ』はやりましたね。あれをカウントするかはともかく。あとは『キングダムハーツ』とかでクラウドとセフィロスが永劫の追いかけっこをやってるのを見て「お、今日もやってんな」とほっこりしてただけというのが正直なところ。それでも多感な時期にプレイしたので心の根深い部分に刺さっているのは実感してた訳です。

そうしたらこの度リメイクされるとの事で、丁度時間も出来たし、内なる小学生に餌を与えてやるつもりでプレイしてみたんですよ。面白かったです。面白かったんですが……そういう次元の話ではありませんでした。

FF7R

ビジュアル・イメージ

『FF7R』は「新作」でした。

これは本編をプレイした方なら大体そういう見解になったと思うので考察とかではないです。何というか「やってくれたな」というざわつきを手短にでも形にしたくて書いてます。

そもそも序盤から「おや?」と思わせるようには仕上げてきていて、その象徴となるキャラクターが「フィーラー」と呼ばれる怨霊めいた影です。旧作の記憶が良い感じに薄れている身としては「こんなのいたっけ」と思いつつ付き合っていました。そしてクラウドが過去のビジョンを苦痛と共にフラッシュバックさせる演出が度々入ります。これはもしかたら旧作にも多少あったのかもしれませんが、『REMAKE』では結構過剰気味です。後はセフィロスがガンガン出てきます。「リユニオン」という単語も序盤で出します。ああ、やっぱりリメイクなだけあって、終盤の展開に対する前振りを強調する作りにしていくんだなと思いながらプレイしていました。ただ、どうもこう……なんというか「原作に存在した描写を膨らませているだけですよ」という顔をしながら、懐に何か不穏なものを忍ばせているような気がしてなりませんでした。そんなふわふわした違和感を抱きながら遊んでいたらですね、エアバスター戦後に教会に落ちたクラウドが「もう一人の自分」に「今度は立てるか?」というような事を言われるんですね。この辺で違和感は疑念に変わります。まさか、と。そしてもうむしろ笑ってしまったのが、チャプター 9 冒頭にウォールマーケットへ向かう際、別れたはずのエアリスが再び目の前に現れ、そこでクラウドの瞳から涙が零れ落ちるんですよ。なぜかフラッシュバックの苦痛と共に流れる涙は、恐らくクラウド自身も理由が分かっていないはず。そして現れるトロフィーの名は「再会」。チャプター名が「再会の花」なので、これはスラムの花売りと教会で再会したという意味に受け取るのが自然だとは思うんですが……。

『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE』のシナリオラインは旧作と同じです。そりゃ「リメイク」ですから。予告されていた通り「ミッドガル脱出」までが描かれます。しかし終盤辺りから、前述したフィーラーたちが酷くざわつき始め、やがてその存在感はただ事ではないほどに膨れ上がってきます。曰く、フィーラーとは「運命」の修正力のようなものらしいです。そこに善悪はなく、ただ「本来の筋書き」を忠実に護ろうと働いているだけの模様。だからプレート落下もどうにか「防げてしまえそう」だったのに邪魔するし、何と生き残ったウェッジを、しかし死なせようとする。かと思えばセフィロスに刺されたバレットを生還させてくれました。でも同じように処されたプレジデントを癒す事はしない。だって筋書きが変わっちゃうから。

これ地味に巧妙なのが、ちょくちょく挟まるフラッシュバックや予兆から、旧作通り世界がメテオの脅威にさらされ、そこにセフィロスが関わっているのだという事を強く印象付けるように仕向けているんですね。つまりセフィロスの陰謀成就こそが「運命」であり、クラウドたちはその筋書きに抗おうとしている。そしてフィーラーたちはメテオ激突という「運命」をこそ守ろうとしている……と読めるようにしているんです。しかしそうじゃないんですね。逆なんです。ラストバトルにおいてフィーラーを撃破していくに連れ、クラウドたちの脳裏にビジョンが過ぎります。それは未来の像であり、抗ったクラウドたちから、それは失われていくのだと。そして失われていく未来像、それは「旧作」の光景でした。そしてラスト、どうやら「運命」は書き換わり、セフィロスは宇宙空間、曰く「世界の先端」にてクラウドに言います。「気をつけろ。そこから先はまだ存在していない」

つまりそういう事のようです。「運命」とは『FINAL FANTASY Ⅶ』(旧作)それ自体を指し、即ち本作『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE』とは『FINAL FANTASY Ⅶ』(運命)を文字通り「REMAKE」するという内容の、「新作」であり「続編」だったんです。

……クリア済の方に向けての記事であるはずなのに初見さんに語り掛けるような物言いですが、許してくださいテンションが上がっちゃったんです。

で、エアリスやセフィロスたち、ライフストリームに溶け込んだ上位者たちは、どうも「旧作」の記憶を引き継いでいるっぽいです。でもエアリス曰くフィーラーに絡まれる度に何か剥がされていくらしいので、たぶん記憶やら諸々が削ぎ落されていっているんでしょう。本作での初対面の際に、「旧作通り」の出会い方をしたにも関わらずエアリスの周囲にフィーラーが纏わりついてましたが、あれはたぶんエアリスの邪魔な記憶を抹消する為だったんじゃないでしょうか。クラウドもクラウドで、度々のフラッシュバックや、エアリスと「再会」した時の涙を鑑みるに、心のどこかでは未来を知っているような描かれ方をされています。或いは前作で生き残ったキャラクターは皆が少しずつ「未来の記憶」を持っているのかもしれません。ここらへん、『ジョジョ』6 部の「メイド・イン・ヘブン」をイメージすると掴みやすいでしょうか。これもまた巧いのが、クラウドのフラッシュバックは過去の故郷炎上に纏わるものが大体なので、そこに良い感じに「未来の記憶」が混ぜ込んであって、あえて分かり辛く、しかし明確な違和感として浮き立たせているのが憎らしいんですね。

ちなみに終盤戦のフィーラーたち、統合されて三種類(+ 1種)になってましたが、構成が「剣士」「ガンナー」「格闘家」でした。あれ、たぶん「クラウド」「バレット」「ティファ」にそれぞれ対応してるんですよね。運命を変えるという事は、「旧作」の出来事、決意や思い出に至るまでを、ある意味で否定する事になります。だからこそ「ファイナル・ファンタジー 7」の具現として、フィーラーたちはクラウドたちの似姿を取ったんじゃないかと。

後はラストバトル後のクラウド vs. セフィロスのタイマンも象徴的。「旧作」のラストのなぞりを今やったというのは、『REMAKE』では同じ結末になりませんよという意思表示なのか、或いは、やはり最後にはまたセフィロスと決着をつける事への前振りなのか。同じように言及したいのが、神羅ビルから落下しそうになったクラウドを引き上げるティファの図ですな。あれも「旧作」最後のなぞり。

今度どういう話になるのか

セフィロス視点を考えると奴の目的は結構想像し易くて、旧作ではメテオで星を破壊してライフストリームを自分に集約させるとか言ってたんですけど、どうもそんな事を言ってられなくなったみたいです。「世界の先端」において、それは「終末の 7 秒前(≒ファイナル・ファンタジー・セブン?)」らしく、それを免れる為に過去を変えようと、『REMAKE 』においては暗躍しているんじゃないかと思います。「リメイク」というタイトルは「リユニオン」とも掛かってるんじゃないでしょうか。終末が何を指しているかは勿論不明ですが、もしかしたらジェノバがそもそも「どこから来たのか」なんて事まで描かれるのかもしれません。バラバラにしてもやがて一つに「リユニオン(再結合)」するジェノバ。しかしそのジェノバ自体が、更なる大きな何かの一部に過ぎず、そこに向かって「リユニオン」しようとしていた……とか。あと、ややこしいですが、あくまでリユニオンを果たそうとしている「今の時間軸」のセフィロスと、世界をリメイクしようとしている「終末を知る」セフィロスは別人である可能性もあるので、だとすると両者がどう対峙するのかはちょっと楽しみ。

いまいち分からないのがエアリスです。彼女もまた「運命」を変えようとしていました。という事は、かねてよりまことしやかに囁かれていた「エアリス生存」が鮮明になってきた事に他なりません。実際に原作で死亡したキャラクターは何人か生存していますし、フィーラーを倒した事で「失われた未来」の像の一つに、忘らるる都のものもありました。つまりあのシナリオは変えられる可能性が高い。でもエアリスが死亡しないとなると、ホーリーが発動できない……はず、たぶん。本作のセフィロスは恐らく、より大きな敵と対峙した上で、「リユニオン」ではなく「リメイク」をこそ主題に動いていると思われますが、或いはエアリスを生存させる事でメテオ発動という王手をかけようとしているのかもしれません。あくまで「リユニオン」を完遂する為の「リメイク」なのだと。エアリスはそれを踏まえて「セフィロスが本当の敵」と言っているのか、或いはセフィロスと同じ視点で「終末」を防ごうとはしているけども、それはそれとしてセフィロスのやり方にも迎合できないというスタンスなのか。ラスト、「何が正解か分からない」と言っているので、敵は明らかだけども闘い方が分からないという立ち位置なんでしょう。

さてザックス。見事生還を果たしました。全ての時間に跨って存在するらしいフィーラーを倒した事で、ザックスは死亡する「運命」から解き放たれたようです。個人的には平行世界設定って便利過ぎてあんまり好きじゃないので、彼の生存はあくまで同じ世界の、確かな過去の出来事として改変されてくれないかなと期待しています。エアリスの生存がメテオ阻止に関わるように、ザックスが死亡した事で「今のクラウド」があるなら、ザックス生存がクラウドに何らかの影響を及ぼすのかもしれない。もしくは死ぬはずの誰かが生き残った事が、生き残る筈だった誰かの生死に影響する……なんてことも。「今度はティファ殺しましょう。エアリス出しましょう」……それだけは止めてくれ!

最終的な感想として

ただの「リメイク」にしなかった。素晴らしい。大好物です。ありがとうと言いたい。しかし「ただのリメイクにして欲しかった」人は当然おられるはずで、ド待望の「リメイク」を「続編」として制作したのは結構すごい決断だったんじゃないかと思います。この作りにノれるかノれないかははっきり分かれるはずで、ノれる側に位置できたのはありがたい。続きは PS5 になると思いますが、お付き合いさせて頂きます。ティファは殺すなよ。

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