青木真也、K-1開催への批判に持論「自粛を要請って言葉として変じゃない?」

日刊SPA! / 2020年4月29日 15時50分

写真

取材に応じてくれた青木真也選手

 新型コロナが猛威を振るう中、エンタメ業界を始め興行の中止が相次いだ。もちろん、それは格闘技の世界でも同じである。

 まさに、開催自体の意義が問われる渦中の4月17日、AbemaTVにて「今」だから「格闘技」を!のコンセプトの元、「Road to ONE:2nd」が生中継された。メインを務めたのは元ONE世界ライト級王者の青木真也と柔術家の世羅智茂。その試合後のマイクで「死にたくねえ? 負けたくねえ? だったらずっと家にいろよ」と、世間に一石を投じた青木真也。そんな彼に、リモート取材を通して今の心境を聞いてみた。

◆「ステイホーム」な空気は気持ちが悪い

――まずは開催自体に賛否両論が飛び交った「Road to ONE:2nd」の経緯について、教えてください。

青木:4月12日にニューピアホールというところに決まっていたんですけど、それが4月17日にずれて、次の会場はライブハウスだったんです。でも、緊急事態宣言後に会場を発表してしまっていたので、会場にクレームの電話が殺到したんです。ライブハウスに対してリスクがあるだろうって。結局、別の都内某所で開催になりました。

――格闘技の無観客試合って、選手からしたらどんな感じなのですか?

青木:選手にとって無観客は超やりにくいよ! だってお客さんの反応がわからないから。暗闇で試合しているみたいな感じだから。

――久々の格闘技のイベントでしたが、どのような手ごたえがありましたか?

青木:今回は、世間と戦って面白かったかな。やっぱり、プロレスとか格闘技って世間と戦ってなんぼだと思うんですよ。社会になにか投げかけた。社会とこう「わちゃわちゃやってる感」が楽しかったですね。

――今回、興行が開催されたことへの周りの反応はどういったものだった?

青木:厳しい反応も多いですよ。その分喜ばれる反応もあるし。二極化していますよね。コロナ秘密警察みたいなメンツと、おおらかに楽しいことを楽しむメンツと。

――青木選手自身に浴びせられるバッシングもありますよね……

青木:はい。バッシングは、ぶっちゃけますけど、この前みたいなマイク(死にたくねえ? 負けたくねえ? だったらずっと家にいろよ発言)をやると誤解曲解もあって、「けしからん!」と、みんな言うわけですよ。

――でも、昨年の試合での「36歳になって、家庭壊して、好きなことやって、どうだお前ら羨ましいだろ」発言と比べると、今回は世間に対してのマイクに感じましたね。それは今の時代を意識しての発言ですか?

青木:僕自身が、今の「ステイホーム」みたいな空気を気持ち悪いと思っている。みんながみんなっていう風潮を、気持ち悪いと思っているわけ。みんなが通勤ラッシュを避けて、リモートで仕事できるわけじゃないわけじゃないでしょ。正論でいると、家でステイホームしている方がいいけど、裕福である程度働かなくても平気な人が「ステイホーム」って言っても響かないし。

 みんなが同調圧力で正論に逃げてる。正論っていうのは、こういう時に一番叩かれないこと。ウィルスに罹らないってことで言えば、家に居続ければいいんだけれど。そもそも、「人が生きるって、そういうことじゃないよね」って思うんですよ。人間的な生活っていうのは、なにか文化的なことも必要だし、楽しみがないと生きていけない。結局、そういうところを逃げて上から「ステイホーム」と言ったところで、「そんなもんじゃないでしょ」って気持ちは、僕はある。

――しかし、今回の新型コロナは死への恐怖もあると思いますが。

青木:あ、そうそう。死にたくないのも当然わかりますよ。だったら家にいればいいんだよ。と僕は思います。

――なるほど。どんな時でも、好きなように生きている青木さんに対して、嫉妬を感じる人もいると思います。

青木:人に押し付けんなよってことを僕は言いたいんです。ツイッターのクソリプでいうと、送ると気持ちいいんでしょ。こう正論言って、得意になって。

 コロナ論みたいなこと話しだすと長いけどさ。俺、べつにそんなに恐怖に感じていないんだよね、実は。そこら辺の温度差は正直あると思います。前に言った、「いつ死んだって、いつ(格闘技を)辞めたっていい」っていうことだって、半分以上本気だし、「それくらい俺は今を必死にやっているからね」ってことだし。一生懸命生きているからね。

――では、今回の興行に関して批判する人たちに対してどう感じていますか?

青木:俺はコロナ界隈の話でいうと、集団ヒステリックだと思っている。みんなが感情的になっていますよね。練習することも、試合もすることも違法じゃない。だから極めてこの国って民主的な国って思うんだけど、同調圧力ってもので、社会をコントロールしているのって伝わりますよね。

――ちなみに、3月に開催され、非難を浴びたK-1についてはどう思いましたか?

青木:俺はやっていいと思ったね! だってやるのは自由でしょって。実際、結果論になっちゃうけど問題は何も起こっていないし。「自粛を要請する」って、言葉としておかしくない? って思ってる。

◆自己責任で生きていかないやつはダサい

――4月に横浜アリーナで開催予定だったRIZIN.22が中止になりました。今の自粛ムードの中、RIZINの榊原信行CEOから「夏に格闘技のビッグイベントをやりたい」という発言が出ていますが、これについてはどう思いますか?

青木:夏にメガイベントをやるっていうのは正直、現実的じゃないと思う。だってもう、そんだけ行き詰まってることだって僕は解釈しましたけど。ある程度順調な時は、人は現実論を言うんですよ。ただ日和ると、めちゃくちゃなことを言い始めるっていう。典型的な人を騙す人たちの手法だから(苦笑)

 でも僕はそれで怖いなって思ったのは、見る側のファンもそれに乗っちゃってること。これはつまり、ファンも詰まっちゃってるんだなって思った。格闘技のファンたちも、余裕がなくなってきている。

――ただ、現実論でいえば、新日本プロレスを始めとする7団体が、馳浩議員に休業補償を求めに行きました。

青木:僕は、それをダサいと思いました。だってさ、そもそも国が助けてくれるわけじゃないし、なんでそんなところを当てにしてんだよって思うし。「そこは自己責任で生きて行けよ」って思っちゃうんですよ、僕は。プロレスという文化って、体制の反対側というか。国から離れたところにあるものだって思うんですよ。

――では、思うように興行ができない今、格闘家としてどのように立ち回ろうと青木選手は考えていますか?

青木:僕は根本的な解決をしないとだめだと思っている。生き方も含めて。コロナによってルールがバッサリ変わったんで。それに見合うように生活だったり、仕事の仕方を変えていかなきゃならないですよ。

 僕はそこを今考えていて。格闘技でいうと無観客が続けば、収入が減っていくかもしれない。それに代わる収入も作っていくことも、視野に入れていかないといけない。

――青木選手は新型コロナが収束するまで、どのように活動を続けていきたいとか、プランはありますか。

青木:格闘家っていうのは自分の軸で生きるということで。青木真也として生きていくための。

 今、イベントができないっていう状況で、自分自身も大きな収入が入ってこないから、長期戦だなって思っていますね。ネガティブにはとらえていないんですよ。もうなんだろう…1年2年、もっと言うと3年間耐えるシフトで考えています。

――それって、不安は感じない?

青木:実は不安はあまりない。元々、格闘技なんてメジャーにならなくていいと思っているから。超インディーってあっていい。収入が減った中で、「いかに楽しく生きていくか」っていう考えにシフトしたっていう。

 だから、今は徹底的な経費カットと小さい仕事をコツコツやっていく。数年後、生き残った時に一社独占で潤って、オールオアナッシングになっていくと僕は思っているので。今が勝負だと。何とかしてゲリラ戦を生きていくしかないという感じですかね。

――過剰な自粛ムードにnoを突きつける青木真也。賛否両論はあるだろうが、周りに流されずに信念を貫く生き様は真似出来るものではない。彼が格闘技を通じ、今後世の中になにを訴えかけるのか。注目していきたい。<取材・文/池守りぜね>

この記事に関連するニュース

ランキング