心の扉を開いてみよう――デビュー5年目の家入レオに訪れた“変化”
撮影/平岩 亨 取材・文/古俣千尋 制作/iD inc.
スタイリング/山口翔太郎 ヘアメイク/KUMI
衣装協力/1/2 Un-Demi (ESTEEM PRESS:tel.03-5428-0928)、5-knot(5-knot design:tel.03-5860-6539)、W&M (INDLE CO.,LTD:tel.03-5808-3977)、Cuvee(Cuvee:tel.048-256-7071)
“僕の”じゃなくて“僕たちの”未来
――新曲『僕たちの未来』は、どんなふうに生まれたのですか?
はじめにドラマの主題歌のお話をいただいて、そのイメージに合う曲を書き下ろしました。台本を読んで、自分なりに受け取ったこと、思ったことを落とし込んでいった感じです。
――幽霊や死神が出てくるなど、登場人物や設定も特殊ですよね。
そうですね。コメディかと思いきや、テーマとしては命を扱っていて。ドラマのプロデューサーさんからも「希望があふれる、明るい気持ちになれるものを」とのお話をいただきました。“明るく前に向かっていくような曲を作っていきたい”と思っていたところで…運命を感じたというか、いい機会をいただけたなと思いました。
――詩、曲ともに前を向いて進みたくなるような、ポジティブな強さを感じます。特に、タイトルの「僕たち」という言葉。これまでの家入さんの曲では「僕」と「君」が、一人ひとりきちんと独立して描かれていたというか…
うん。「個々な感じ」でしたよね。
――それが、今回のタイトルは「僕たち」に。詩の中でも「僕」と「君」との距離がとても近づいたようにも受け取れます。
(プロデューサーの)多保孝一さんに「自分はこういう曲を歌いたい」と伝えて、メロディーを作ってもらったのですが、最初に聞いた時点で「絶対いいものになる!」という確信がありました。そのあとは、自分と向き合う日々になって、“自分にとって大切なものって何だろう”、“未来って何だろう”、“じゃあ希望って何?”という質問を、自分にしていったんです。
――詩の中の言葉を通して、自分とじっくり向き合ったんですね。
そうしたら、本当にふっと「それは、歌を聞いてくださる人たちだ」って、答えが出てきたんです。空気を読んだわけでも、誰かに気を遣ったわけでもなく、無意識に。潜在的にそう思いながら普段から日常生活を送っていたということがわかったんです。心から「私は今、ひとりじゃない」って…ありきたりかもしれないけど、そのことにすごく感動しました。
「壁を作らなくても大丈夫なんだ」
――以前と考えが変わってきたとも言えますか?
正直これまでは、自分の見たい景色を1分でも1秒でも早く見たかったんです。「私の車に今乗らないなら、私は先に進むから!」のような(笑)。
――確かに、そんな勢いが感じられたような(笑)。
でも、見たい景色を私が見ることが目的じゃなくて、一緒にその場所に行くことが幸せなんじゃないかなって。デビューしてからちょっとずつ出会いとか悔しいことを経て、やっと今そう思えるようになって。だからこのタイミングで、“この気持ちを歌にしよう”、“一緒に未来を作っていこう”という想いで曲を書きました。ここまで出口が光に向かっているのは、初めてですね。
――いつ頃からその変化を感じるようになりました?
去年ぐらいですね。今までは「私の領域は侵さないでね」っていう思いが強かったんです。(自分のスイッチを)オフにして黙っているほうがラクだったりするじゃないですか。でも、それってよくないなと思って。多保さんをはじめ、素晴らしい方々と曲を作らせてもらっているのに、自分から心の扉を閉ざしているのはもったいないなって。そこで、初めて「私で遊んで」って思えるようになりました。
――「私で遊んで」!?
私を使ってどういうことをしたら楽しんでもらえるのかを周りにどんどん言ってもらって、それを私がやっていけばいい、って。そう考えたらすごく自由な気持ちになって、製作スタッフの意向や提案に、積極的にチャレンジできるようになりました。
――スタッフのみなさんとも、よく飲みに行かれているとか。
チームみんなで過ごす時間は大事にしていますね。食事の席って本音が出やすいし、「こういう気持ちで私のことを支えてくれていたんだ」とかわかるので。もちろん、プライベートの話もしますよ。気分転換にもなるし、スイッチのオン・オフもはっきりさせて、楽しんでいます。ステージに立つのは私かもしれないけど、後ろで支えてくれているスタッフさんあってのことなので、小さなことでも普段からできるだけ伝え合うようにしています。
――曲にも、そうした変化がどんどん表れてきているんですね。
音に対しても、自由になってきました。以前はどうしても「私は歌で勝負しているんだ」っていう気持ちから、いろんなものと一線を引きたくて、明るい曲を書こうと思っても結局は影に落とし込んじゃうところがあったんです。でも、少しずつ自信が出てきて、計算せずに光を描けるようになったというか。最初から壁を作らなくても大丈夫だって。