女性市長としての最年少当選記録を更新しただけではない。難病を抱えながらまちづくりの分野などで活動し、小学生の子を育てる母親であり、学び直しのために大学に籍を置く。
さまざまな顔を持つリーダーとして、多様な人々に市政への参加を呼びかけ、山積する課題を解きほぐしていけるか。その挑戦に注目したい。
36歳の内藤佐和子氏が徳島市長に就いた。
市の音楽・芸術ホール建設をめぐる県と市の対立に危機感をもち、市長選が無投票になるのを阻もうと立候補を決めたのが今年1月。議員など政治経験がない中での決断だった。
選挙戦も異例の展開となった。新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から、討論会はネットでの配信になり、街頭での握手も自粛。手探りの運動をしいられながらもSNSを駆使し、女子高校生らからの投稿に返信を欠かさなかった。そうした取り組みを通じて、特に若い世代での支持の広がりを感じたという。
投票率が4年前の選挙に及ばないなか、「保守王国」徳島での自民党議員の分裂に支えられての当選であることは否めない。20歳の時に難病の多発性硬化症を発症し、今も定期的な点滴治療を続けるだけに、健康を不安視する声もある。
しかし、再選を目指した現職との激しい戦いを乗り切った内藤氏は、体力的にも自信がついたという。起業にかかわったり、まちの課題解決を目指すコンテストを企画したりして、「病気だから無理」という心の中の壁を壊しながら人生を歩んできた。病や障害を持つ人をはじめ、さまざまな立場の人たちが活躍できる。そんな社会でありたいと、ふるさとへの思いを語る。
全国市長会によると、東京23区を含む全国の815市区長のうち、女性の首長は3%余りにとどまる。世界経済フォーラムが発表する男女格差指数で日本は153カ国のうち121位と低迷するが、政治分野での女性の少なさはとりわけ深刻だ。内藤氏の当選に関心が集まるゆえんだが、止まらない人口減少や高齢化に直面する地方都市のかじ取りが試されることになる。
男女共同参画や障害者施策など、20を超える県や市の審議会の委員を務めてきたものの、首長としての手腕は未知数だ。今年の阿波踊りの中止を主導したのを皮切りにコロナ対策に追われる日々で、今後さまざまな壁にぶつかることも予想される。
それをどう乗り越えるか。内藤氏は「みんなでいっしょに前へ」というスローガンを掲げてきた。実践が問われる。
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