鳥栖赤字20億円以上に気がかり…竹原社長の不透明な手法
J1鳥栖を運営するサガン・ドリームスは26日の定時株主総会を開き、当期純損益が20億円を超える赤字となる第16期(2019年2月~20年1月)決算を承認した。今期も新型コロナウイルスの感染拡大を受けて収入が滞るなど経営は厳しく、オンラインで記者会見に臨んだ竹原稔社長は「他のJクラブよりも(資金ショートに陥る時期は)早いとは思う」と危機感を示した。
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前期の約6億円を大幅に上回る赤字を出したJ1鳥栖。衝撃的な数字以上に気になるのは債務超過の回避方法だ。竹原社長は会見で金額も出資元も明かさなかった。不透明なその手法は「クラブの私物化ではないか」という不信感を招き、もし今後資金ショートに陥っても周囲が手を差し伸べてくれないのではないか。
赤字の大きな要因であるフェルナンドトーレスら高額年俸の選手補強にしてもそうだ。竹原社長は鳥栖の価値を高めるため、ハイリスクな手法でも優勝を狙えるチームづくりを狙った。しかし安定した経営を望む地元関係者や株主からは反発が続出。大口スポンサーが離れる一因にもなった。
J1は平均のクラブ年間予算が年々膨らむ。大企業の後ろ盾が期待できない地方のクラブが定着するのは難しく、竹原社長の資金調達力は評価できる。その点で、周囲の危機感も過去の存続危機と比べると薄い。
ただ地方都市にとってクラブは「公共財」だ。竹原社長は会見で「共創」という言葉を用い、この苦境をみんなで乗り越える方法を考えていくと掲げた。クラブの存在意義であり、結束力を表現した「砂岩」を感じにくい現状。まず周りに耳を傾け、オープンな経営を打ち出してはどうだろうか。(サッカー担当・末継智章)