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小川 茂雄 院長の独自取材記事

小川耳鼻咽喉科医院

(港区/神谷町駅)

最終更新日:2020/03/16

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東京メトロ日比谷線・神谷町駅から徒歩1分、六本木ヒルズや東京タワーなどを一望できるビル内に「小川耳鼻咽喉科医院」はある。院長は、祖父、父に続いて耳鼻科医師の道を進んできた小川茂雄先生。先生が「今ではだいぶファミリー層の患者さんが増えてきました」と語るように、患者は会社員を中心に幼児から高齢者までと幅広い。繁華街である六本木近くで街のかかりつけ医を自認する小川先生のモットーは、患者と病院の橋渡し役となること。そのために医師会の勉強会や講習会に積極的に参加し、専門の耳鼻科はもちろん、他の診療科の治療法や情報についても貪欲に吸収している。そんな小川先生に、画像情報を駆使した説明の方法や漢方の併用、耳鼻科医院の利用法について聞いた。
(取材日2014年1月27日)

本人には見えない部分の治療だからこそ説明は丁寧に

初めに、先生が医師になったきっかけから院長に就任されるまでの経緯について伺います。

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幼い頃から、耳鼻科の医師だった父の姿を間近に見てきたことが大きいです。当院は、約50年前に父がここ神谷町で開院しました。家業を継いでくれとは言われませんでしたが、私にとって「仕事=医師」というイメージだったので、医師の道を選んだのはごく自然なことでした。父は仕事が終わるとすぐに自宅に帰ってくるような真面目な性格で、そんな父の姿に「医師にとって日々の勤勉さは大事なことなんだ」と感じていました。診療科目も父と同じ耳鼻科を選びました。父も川崎で耳鼻科の医師をしていた祖父の後を継いで医師になったので、場所は移っていますが、当院は3代続く耳鼻科医院ということになります。慶應義塾大学医学部を卒業してからは、医学部の耳鼻咽喉科学教室に在籍し、大学病院や川崎市立川崎病院、東京医療センターの耳鼻科で働き、その後体調を崩した父に代わり当院の診療を行うようになりました。院長に就任したのは9年前です。

どのような患者さんがいらっしゃいますか?

当院は、父が神谷町に開院。その後虎ノ門1丁目に移転、私が院長になってから再び神谷町に戻ってきました。虎ノ門時代はオフィス街ということもあり、患者さんの多くは会社勤めの男性でした。現在の神谷町もオフィス中心の街ですが、神谷町に移転後はお子さんの患者さんがだいぶ増えてきました。それでも郊外の耳鼻科医院などに比べるとお仕事をされている成人の患者さんが多いと思います。中には、父の代から含めて40年以上通っていただいている方もいらっしゃいます。家族2代、3代で通っていただいている方もいて、よちよち歩きをして通っていた子が母となり、かつてのご自身と同じような年頃のお子さんを連れてご一緒に受診されます。来院される患者さんの症状は、風邪による喉の痛みや咳、声枯れ、鼻水、鼻詰まり、耳痛、耳のかゆみや耳垢、耳鳴り、めまい、難聴など耳鼻科全般多岐にわたります。

診療時に最も心がけていることは何ですか?

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耳鼻科は本人では見えない耳、鼻、喉の奥などクローズな部位を扱うので、言葉の説明だけでは患者さんは理解しづらいと思います。当院では可能な限り、電子スコープや顕微鏡などで撮影した画像を使って解説し、さらに過去の画像を瞬時に参照できるシステムを用いて、病態の変化や比較を画像でわかりやすく説明します。そして、体や疾患に関する情報を可能な限り提供し、自身の状態を知ってもらった上で治療に参加してもらうように心がけています。MRI、CT検査は必要に応じ、近隣の専門クリニックに予約を取り、さらなる精密検査や手術が必要な患者さんは適切な病院へご紹介しています。紹介先の病院、先生方の様子やお人柄を知った上で患者さんをお任せできるよう、医師会や学術講演会には可能な限り出席し、多くの先生方と知り合うことも心がけています。

漢方や鼻うがいなど、あらゆる方法で疾患にアプローチ

子どもの患者さんで、最近気になる症状などはありますか?

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耳鼻科に通うケースで意外に多いのが、お子さんの長引く咳です。元気で、ごはんもよく食べるのに、咳が治まらない。吐いてしまうほど咳が出ることもあり、保護者の方はとても心配されます。このような場合、咳の原因は肺ではなく鼻にあることが多いのです。風邪から副鼻腔炎になると、後鼻漏(こうびろう)といって、鼻汁が喉の後ろに垂れてくる症状が現れることがあります。大人でも気持ち悪いのですが、お子さんはうまく鼻汁を出せず、喉に引っかかり、咳が出るのです。治療は、鼻汁の吸引や、吸入治療、薬の処方を行います。喉や鼻の奥の治療というのは大人であっても気持ち良いものではありません。当院では子ども用にやわらかく細い吸引管を使用しています。

最近では、治療に漢方を取り入れているとお聞きしました。

漢方は副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、喉の痛み、扁桃腺炎、めまい、耳鳴りなどの耳鼻科全般の症状に対して処方可能で、当院では病気の初期と慢性期を中心に漢方薬を用いています。重症期には抗生物質などの西洋薬が主体となりますが、症状や体質に合わせて西洋薬と漢方薬を上手に併用しています。例えばインフルエンザでは抗ウイルス剤に併せ、発汗による解熱効果を期待して、麻黄湯や麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などを処方します。当院には漢方に理解がある患者さんが多く、ご自身に合うものが処方されると、その後は進んでその薬をご希望されます。

先生の奥さまも耳鼻科の医師だそうですね。

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私が隔週に1度、東京医療センターで診療する日に、彼女が当院で診療を行います。妻は当院以外の医療機関でも働いていますので、そこで知らなかったさまざまな治療方法や医療情報を仕入れてきて教えてくれます。その一つが「鼻うがい」。温かい生理食塩水を用いて鼻粘膜を洗浄するというもので、鼻洗浄器があればご自宅でも可能です。また、当院では上咽頭塩化亜鉛塗布治療、いわゆる「Bスポット治療」も積極的に行っています。これは、喉や鼻から上咽頭に1%塩化亜鉛を咽頭捲綿子を使用して直接塗布する治療で、風邪などの急性炎症から慢性の咽喉頭炎、咽喉頭異常感症のほか、音声障害の方に対して行うこともあります。ただしこの方法では、痛みが出たり、喉から出血したりすることがあるので、通常の治療以上に丁寧な説明をするようにしています。

美術館のキュレーターのように幅広い情報を提供したい

印象に残っている患者さんのエピソードはありますか?

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耳や喉の痛みが1ヵ月以上続いていると来られた患者さんにファイバースコープ検査を行ったところ、鼻の奥、上咽頭にがんが見つかるというケースがありました。上咽頭がんというのは頭頸部がんの中でもまれな疾患で、発見が遅れると予後の悪いことが多いのですが、幸い早い段階で発見することができました。もともと、耳鼻科の医師が扱う頭頸部がんの症例はそれほど多くなく、開業医になるとその機会はさらに少なくなります。耳鼻科で最も多いがんは喉頭がんですが、中には今お話ししたような上咽頭がんのケースもあるので、見過ごさないよう電子スコープを活用して診療しています。

趣味や休日の過ごし方について教えてください。

最近の趣味は、ガーデニングと料理です。自宅に庭はありませんが、小さな別荘があり、周りに樹木や草花を植え、料理を作り、食べ楽しんでいます。また、東京には多くの美術館があるので、美術館巡りも気に入っています。絵画それ自体も好きですし、作品が描かれた背景にも惹かれますが、美術館を一人で歩くということ自体が好きなんです。ガーデニングで草花の知識が増えたので、絵画の中で知っている草花がどのように描かれているかも興味深く見ていますね。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

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鼻詰まりや喉の痛み、耳に違和感があるといった症状が出たらまずは耳鼻科に診てもらうことをお勧めします。風邪というのは、寝ている間に体が冷えて鼻が詰まり、口呼吸になって喉が渇いて痛くなるというパターンが多く、早いうちに初期症状が出る鼻や喉に薬を塗り、鼻汁を吸引するといった治療を始めたほうが良いと思います。当院は耳鼻科ですが、基本的には患者さんにとってのホームドクターという気持ちです。美術館で展覧会の企画運営、作品の選別、解説などを担当するキュレーターのように、積極的に新しい医療の情報を仕入れ、皆さんに還元していきたいです。そして患者さんと病院をつなぐ橋渡しができれば良いと考えています。耳鼻科に限らず、体に関することで困ったことがあれば気軽にご相談にいらしていただければ幸いです。

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