岩崎 衣料品の中でもファストファッションの製品を運ぶんです。
貞平 なるほど~。確かに船で何週間も運んでいる間に、デザインの旬が過ぎてしまっては意味がないですものね。時代によって航空貨物も変化してきているわけですか。
岩崎 中国路線ではスマートフォンの部品も多く運んでいます。部品は日本で作られ、中国で組み立てて、完成品がまた日本に運ばれてきます。
医療機器も医薬品のニーズも増加
岩崎 777Fのもう一つの長所は航続距離です。767Fに比べて航続距離が長いので、首都圏の空港から世界各地へ直接行き来ができます。現在は上海へ飛んでいますが、10月末からは米国のシカゴへも就航する予定です。
貞平 なぜシカゴなんでしょうか。
岩崎 航空貨物で輸送する品目で多いものは自動車部品や半導体関連製品です。シカゴは自動車関係の企業が多いため、航空マーケットにおいては大きな市場のひとつなんです。アジアと北米を結ぶ太平洋路線はこれからも安定的に市場が伸びていくと見ています。シカゴを直行で結ぶことによって、さらにスピーディーな輸送を提供することもできるようになります。その他航空貨物では医療機器や医薬品関係のニーズも伸びています。
貞平 医療機器や医薬品も、ですか。想像以上に多岐にわたっているんですね。
岩崎 自動車部品や医療機器関係は、振動を避けるため、船便より航空便を選ぶ企業も多いですね。医薬品に関しても、錠剤医薬品より厳密な温度管理が求められる最先端の医薬品などで航空輸送が選ばれる傾向にあるようです。
貞平 速度だけじゃなく、振動が少なくて温度管理が厳密にできるのも航空貨物の強みというわけですね。あとは、すごく高価なものや貴重なものも航空貨物が選ばれそうな気がしますけど。
岩崎 日本でも10月24日から東京モーターショーが開催されていますが、そういったショーに出展される1台限りのショーカーや、開発中で世界に1台だけのテスト車なども、航空貨物を利用するケースが多いですね。
貞平 車をまるごと1台飛行機に載せて運ぶのって想像がつかないんですが、どうやって積むんですか。まさか大きな段ボールに入れるとか。それとも飛行機の中まで車を走らせて載せるとか。
岩崎 パレットという大きな板に車を載せて固定して機内に搭載します。自動車が載ったパレットは、床に伸びているレールに沿って機内を移動して搭載完了です。
荷主席も用意
岩崎 他にもこれからは競走馬の輸送もしていきたいと思っています。
貞平 でも動物を運ぶときって関係者が付き添ったりはしないんですか。
岩崎 そのために、今回導入した777Fには通称「荷主席」という座席があるんです。貨物スペースにつながる通路もあります。
貞平 これが荷主席ですか。後ろの貨物スペースに競走馬を乗せていても、厩務員さんや獣医さんがこの席に座って同行していたら安心ですね。ちなみにこの座席の座り心地は、旅客機の客席でいうと、どのくらいなんでしょうか。
岩崎 ビジネスクラスくらい、でしょうか(笑)。
貞平 どんな人が乗れるんですか? 「荷物と一緒に私も乗せていって」なんてお願いは?
岩崎 競走馬を輸送する際の厩務員など、輸送に必須な同行の場合に認める予定です。
貞平 引っ越しのとき、引っ越しトラックに同乗させてもらうみたいなわけにはいかないってことですね(笑)。ちょっと気になるので教えてください、ずばり荷主席で機内食はありますか?
岩崎 777Fにはキッチンも備え付けましたので、ロングフライトは1人2食まで提供は可能です。この設備はパイロットも利用させていただきます。
貞平 機長さんがコーヒーを入れに来ることもあるわけですね(笑)。もう一つ、個人モニターで映画は見られますか?
岩崎 残念ながら荷主席に個人モニターの設置はありません。
貞平 荷主さん、残念(笑)。でも、旅行ではなく、仕事での同行なので我慢ですね。
「アオカケス」を愛称に
貞平 777Fは貨物機だけど、愛称があるんですよね。
岩崎 はい、「BLUE JAY(ブルージェイ)」といいます。社内公募で決めました。
貞平 マークもかわいいですよね。
岩崎 モデルになったのは、日本名でアオカケスという鳥です。このマークの色のようにきれいな青い鳥なんですよ。色がANAグループにぴったりなだけでなく、真面目な性格でせっせと枝を運んで巣作りをするところも、ANA Cargoの777Fの愛称にぴったりじゃないかと。
貞平 本当にそうですね。ぜひBLUE JAYを空港で見てみたいんですけど、どこで見られますか?
岩崎 貨物地区はお客様が利用する地区からは離れているんですが、成田空港の滑走路から見えるかもしれません。ぜひ離着陸時に機内から探してみてください。
貞平 探してみます!
1981年3月16日生まれ、O型。元地方局アナウンサー。現在はホリプロに所属し、NHK-FM「クラシックカフェ」などを担当。趣味は、飛行機と愛犬とビールと旅。一人旅でアマゾン川のピラニアを釣ったり、愛犬を連れてパリに行ったりするなど、大の旅好きでもある。
(写真 吉村永)