挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
222/983

ゲーム知識

「……その先は?」


 ガエリオンの事は後回しにするとして、今は今後の方針を考える事が先決だ。


「未実装だ」

「未実装です」

「はい?」

「その先はまだ実装されてない。後はローカルマップばかりで本筋から離れている」


 ああ、そうだよな。世界が平和になったらゲーム終了だもんな。

 延命処置万歳。延命処置畜生! 死に去らせ!


「霊亀がアップデート7だったか?」

「ああ、大規模アップデートはな」

「波に関しての想像とかはないか?」

「俺達が召喚された時期をサービス開始と照らし合わせると、最初に参加した波はアップデート2だと思う」


 正式サービスがラフタリアとかが経験した波だとするなら数字は間違っていない……のか?

 で、グラスが来た時は3。


 4、5、6はどこに行った?

 錬達が封印を解いたから飛んだとか?

 というかグラスだったか、意味有り気な言葉を残していたな。


 霊亀だけではなく、錬達はグラスにも負けていた。

 という事は霊亀の様に、不測事態だった可能性が高い。


「波で人型の敵が出るのは知っていたか?」

「いや、そう言うのは無かった」


 ふむ……。

 錬や元康の知識を鵜呑みにする訳ではないが、グラスの登場は想定外だったのか。

 考えても見れば厄災の波と呼ばれる一連の事件で、あの女は浮いている。


 ラフタリアが見たという黒い獣も、三勇者が倒したソウルイーターも知的生命とは言い難い。

 それは霊亀も例外では無い。

 鳳凰とやらだって本当に出現するかはわからないが、知性のある敵とは思えない。

 ……グラスだったか。あの女は一体何者だ?


 わからない。

 捨て台詞も未だどういう意味なのか判明していすらいないし。


 そもそも青い砂時計で出現した霊亀、そしてその関係と思わしき鳳凰、麒麟、応竜を波としてカウントした場合、俺達はかれこれ三回も波と戦っている。

 その中で逃げられたのはグラス唯一人だけだ。


 アイツはどこから来て、どこに逃げたんだ?

 異次元? 異世界?

 本当にどういう存在なのかすらわからない。


「想定外だから負けたのか?」

「ああ、ものすごく強かった。尚文が良く倒せたと思うが、後の事を考えると当然だったんだな」

「お世辞はいい。そもそもだ。お前等のゲームで波ってどんなプレイをするものだったんだ?」


 クエストのボス?

 それとも大規模戦やギルド単位で挑むイベントボス?


「俺の世界だとアップデート前日にサーバー単位で挑むイベントボスで、その後はクエストでリプレイという類だ」


 ふむ……わからなくはないゲームだな。

 あまり見る類のゲームじゃないが、TRPGみたいな感じで脳内変換してみる。


「一応、霊亀の時に起こったイベントは被害によって使えなくなる都市がーって言うフレーズがあったらしい……リプレイだと自分が守れなかった都市が鳳凰を倒すまで使えなくなる」

「そうか、面倒な仕様だな。ちなみに被害はどれくらい出たんだ?」

「……確か、プレイヤーが相当、引退してやめるくらい被害が出て、リプレイじゃ弱体化し過ぎたとか」

「そんな相手にお前は挑んだのか! 弱いはずだったんだろ?」

「その当時の最大Lvは50だったんだ。80もあれば楽勝になるはずだった……とは言い訳だな。設定だと時間を掛け過ぎて復活したとなっているから早めに倒せばと思った」


 どんだけLv低い設定で挑ませた訳?

 まあ、俺の知るゲームだと、サービス開始時の最大Lv50でアップデート毎にLv5ずつ増えていくとかしょっぱいのがあるけどさ。

 FPSっぽいVRMMOじゃLvの依存率が高いとか言っていたもんなぁ。

 極端に上げるとプレイヤーが追い付けなくなるか。

 で、後から弱体化パッチが来てライトユーザーも楽にってタイプ。


「元康の方もか?」

「はい」

「ふむ……」


 そういや、こいつ等は本格的に霊亀が暴れ出す前に止めようと封印を解いたとか言っていたが……。


「クエストで速く封印を解くと楽になるのか?」

「ああ、他に強力なドロップ目当てにワザと遅らせるという選択肢もある。そっちは80必要だ。そっちが来ても……と言うのは逃げだな」


 ネトゲの業だな。アイテム目当てで選択肢の悪い方を選ぶって。

 つまり、一応は世界の為に早く封印を解こうとした訳……なんだろうな。

 ゲーム感覚で、国に相談する選択は悪化すると思いこんで。そっちをやらなかっただけ救いか?

 あの状態の錬共じゃパワーアップ霊亀に勝てる筈もなく。その頃の俺も一応は100越えしてそうだけど勝てたか怪しい。


「ちなみにだ。本来はどれくらい被害が出るんだ?」

「地名が色々と違うから一概に言えないが、良いか?」

「ああ」


 俺は地図を出して錬と元康に見せる。


「アップデートの歴史をみると、この辺りまで被害があった設定になった」


 えっと……。

 霊亀の眠る国とその周辺諸国、メルロマルク、シルドフリーデン他、俺が行った事の無い周辺諸国がほぼ全域入っている。

 例外はゼルトブルか。確かにあの辺りはミニゲームとか多そうな地区だ。下手に外せないか。

 他だとフォーブレイやシルトヴェルト辺りは安全っぽいな。


「プレイヤーの拠点が強制的にフォーブレイになるようになったんだ。この辺りは利便性の関係で直ぐに復興したとなったが、相当不便だったらしい」

「もう少し話を整理したい。メルロマルクはー……」

「プレイヤーが選べる初期の首都の一つだ。だけどこの時期は壊滅して選べなかったそうだ。俺がこの世界に来る前は出来たけど」


 一応……俺のお陰で被害は抑えきれた事になるのか。

 実際あの時の霊亀ならこれくらい被害を出してもおかしくはないし。


「俺は罪から逃げるつもりはない。この話をして贖罪になるだなんて思ってはいない」

「はいはい。わかったから自殺はするなよ」


 これ以上錬に聞くと責任を取って自害するとか言いそうだから切り上げよう。


「となると次は鳳凰か」

「ああ」

「そうです」


 しかもバランス的に狂った強さを持っていると。

 ま、何処まで信用できるかわからないけど有益な情報が聞き出せたな。


「場所はわかっているか?」

「はい」


 錬と元康が一緒の場所を指差した。

 えっと……メルロマルクから西にある国を指差した。

 霊亀が東で鳳凰が西か……これは相当大変だな。


「青い砂時計はどうやら転送機能が無いみたいだから……行くしかないだろうな」

「その事で提案なんだが」

「ん?」


 錬が言い辛そうに視線を逸らしながら言ってくる。

 なんだ?

 どうも錬って人に何かを頼むのが苦手な感じだよな。

 まあ、立場的に言い辛いのはわかるが。


「作戦指揮は尚文に任せたいんだ」

「そりゃあ、俺が一応は先頭に立って指揮はするだろうな」


 霊亀の時も実質、俺が前に出て戦っていたようなものだ。

 もちろん、作戦指示とかは女王とか各国の首脳陣が手伝うけどさ。

 私兵の育成をした俺からしたら、本格的な作戦指示も担う事になるだろう。


「いや、そう言う意味じゃなくて、俺達への指示も任せたい」

「……まあ、わからなくもないが」


 ぶっちゃけると錬や元康は大規模戦闘の経験は無いに等しいと分析している。

 元康はどうも弱小ギルドの経営をしていたっぽいが。


「言っては何だが、そう言う経験あるのか?」

「昔な……俺は最大Lvではないけど大きなギルドの経営には関わっていた」

「やはりそうか」

「わかるのか?」

「初めて会った時の尚文を見て、ああ、なんとなく知り合いと空気が似てるなって思ったんだ」

「知り合い?」

「そうだ。そいつは昔の尚文と今の尚文を混ぜたみたいな性格なんだけど、面倒見が良くて、自然と人を集めていた」


 昔の俺……か。

 あの頃は、誰とでも話せる自信があった。

 騙されるかもしれないとかそういう考えよりも、楽しくできれば良いと考えていたと思う。


「大きなギルドも経営していた。だから尚文も大規模戦闘の経験があるのかと思って」

「定められたルールによる大規模戦闘や攻城戦ならある」


 ネットゲームの醍醐味の一つだからな。

 自分たちがサーバー内でどれだけ強いのかを主張するため、他にも一部の上位ギルドだけしか入れないダンジョンや手に入らないレアアイテム。

 無数にそんなイベントが存在する中で、ソロでは決して手に入らない経験を得る事が出来るのがギルドやチームの醍醐味だ。


 だが、波とそれを比べるのは些か早計だ。

 波は何が起こるのか想像が出来ない。

 常にギリギリの戦いを要求される。


「ゲームにもよるが、既に何処のギルドが勝つかを事前に取り決めをする事だってあった」


 ギルド用のダンジョンや専用アイテムは大規模戦で勝たねば手に入らない。

 そのダンジョンには多大な経験値をくれる敵やレアアイテムが眠っているからこそ、強豪ギルドが奪い合う訳だ。

 しかし、マンネリ気味になると大手ギルド同士で同盟を結ぶ事だってある。


 同盟同士のギルドが不可侵条約を結び、多大な損失を出さない為に、中小ギルドを撃退するだけの戦いを行ったりもする。

 もちろん、規約的には問題もあるだろうが、そうして地位を守っている所が無いわけではない。


 ギルドやチームのマスターに取って、自身の運営するギルドは常にメンバーへ利益を与えなければならない。

 その点で言えばギルドマスターに必要なのは個人の最強ではなく、ギルドやチームでの最強だろう。


「誰が指揮しても変わらないと思うがな」


 連携は重要だが、100人200人での戦闘ではそこまで意識を裂く事は出来ない。

 結果的に個人の力は元より、大々的な進行や撤退の宣言くらいしか意識が回らない。

 事前の打ち合わせはあるだろうけどな。

 少なくともネットゲームの大規模戦で、歴史物みたいに作戦で相手を翻弄したというの話を、俺は経験したことが無い。


「尚文は知っているゲームでどれくらいの規模のギルドを運営していたんだ?」

「複数あるサーバーの一つでー……三番目くらいに大きい同盟ギルドの首脳陣だった。だけど世界大会に出るほどではなかったな」


 一応同盟内の発言力は高い方だったけど、最強では無かった。

 俺の育てたキャラクターも最大Lvじゃ無かったし、どちらかと言うとテクニックを鍛えるよりも金を稼いで人との繋がりを重視して楽しんでいたからな。

 高価な装備や回復アイテムが重要なゲームだったのも理由か。


 基本、昼間は大学に行くか、アルバイトをしながら、商売スキルでパソコンを放置しながらアイテムを売却して、夜になったらギルドの連中と遊びに出掛ける。

 イベントがあれば、その限りではないが、正直ネットゲーム以外にも、マンガだのラノベだのと色々と手を伸ばしていたからな。


 だから、最大Lvに魅力は感じなかった。

 複数のキャラを掛け持ちして制限Lvより若干弱め程度で満足する。

 最大Lvにするより5か10低い位までは、案外簡単に上がるんだ。

 後はギルド内のメンバーで経験値を稼ぐ手伝いと称して、その時必要な持ちキャラを出せば良いだけだ。

 よくあるプレイヤーではあったと思う。


 そもそもネットゲームで最強とか、パワーバランス的にありえないだろう。

 仮にそうなっても、アップデートで弱体化するか別の職業が強化されるのが落ちだ。

 最終的に多少の強弱はあれど、どんぐりの背比べになるのが、MMORPGの宿命だ。


 ここ等辺も現実との差異が出ているな。


「じゃあ俺よりも遥かに経験があるんだな」

「一応は、だな。だけどそんな経験が役に立った事は正直、無いに等しい」


 最初の波では村の連中を守るだけで精一杯だったし、二番目の波でも同様だ。

 霊亀の時は女王や連合軍が実際には指揮をしていた訳で、俺は足止めをしていたに過ぎない。

 まあ、四聖の勇者の中では一番経験が高いのかもしれないが。


 錬はソロプレイの後輩育成しか経験が無く。

 元康は弱小ギルド運営。

 樹は、コンシューマーだろ? 戦略ゲームだったという可能性もあるが、波での戦い方を見る限り否だ。


 次の波である鳳凰との戦いで作戦を練るくらいしかない。

 事前にその地を調べて伝承とか探り、倒す方法を模索するのが良いだろう。

 霊亀の時も壁画があったし、過去の勇者が何か残しているかもしれない。


「鳳凰の方じゃクエストはどんな感じなんだ?」

「ゲーム内のストーリーだと霊亀の被害を受けて、各国も本格的に調べ上げる感じだ。手遅れや強化してしまうとかは無いが、それでも封印はできなかったらしくて、結局阻止できずに復活する」

「そうか」

「大丈夫ですよ、お義父さん。この私、北村元康が鳳凰如き容易く倒して見せます」

「お前は黙ってろ」


 都合の良い事ばかり言いやがって……元康、お前は前回霊亀に負けたばかりだろうが。

 元康とは後で話をするとしよう。錬と同じような内容だろうからな。


 そういえば……霊亀との戦いで、封印の魔法が失敗したんだった。

 理由は不明だ。霊亀に勝てなかったからと考えるのは簡単だが、それだけではないように思える。

 昔の勇者が残した碑文の謎だってまだ解けていない。


 そもそも、意図的に削ったかのような虫食い状態だったし、重要な所が読めなかった。


 ――波による世界・・の阻止が目的の化け物。


 だったか。

 結局・・の部分に当て嵌まる文字はなんだったんだろう。


 崩壊? 破滅?


 それを阻止するために命を刈り取る?

 またこの考えに入り込んでしまった。


 とにかく、鳳凰復活の阻止は失敗する可能性が高い。

 一応は女王に伝えておくとしよう。

序盤を見ればわかると思いますが、裏切られる前の尚文はお調子者で外交的な人物です。

OFF会なども盛んに参加していたでしょう。

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。