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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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解放時間

「「なん、だと!?」」


 思わず錬とハモった。そりゃハモるだろう。

 あの緑鳥、オスなのか? 人型時の姿は美幼女としか言いようがない外見だぞ。

 フィロリアルキング?


「そ、そういえば他二匹はちゃん付けなのに、彼だけ呼び捨てだ」

「自分が男の子なのを気にしているみたいで、君付けで呼ぶと怒るんですよ」

「面倒な人間関係だな」


 いや、フィロリアルは人間じゃないのか?

 世界観的に見て魔物の分類だから……いいや、考えるのが面倒臭くなった。

 こうして俺は考えるのをやめた。なんてな。

 夜だし、少し疲れてるから楽な方に行っている。


「男だろうと女だろうと、私の与える愛は変わらないのにですね」

「ああ、そう」


 錬も俺も顔をひきつらせて頷いた。

 こいつに取って、フィロリアルは等しく子供なんだっけ?

 でー……妻はフィーロにしたいんだったか。

 だけど、三匹は元康の恋人になりたい。

 歪んだ関係を築いていやがるなぁ。

 他のフィロリアル共はそこまで元康の事を好きではないみたいだけど。


「一人称がボクで敬語口調か……樹は今頃何をしているのだろうな?」


 錬が思い出にでも浸るみたいに言った。

 あの毒舌緑鳥から樹を連想するとか、中々発想が突飛だな。


 ……言われて見ればキャラが似ているな。インテリっぽい所も重なるし。

 ま、樹は敬語キャラの中に物凄い自尊心を持っているけど。


「樹か、ヴィッチに捕まってそうだよな」

「そうなっていないと良いんだが……」


 淡い期待だな。


 ドンドンとみどりが抗議のノックを繰り返す。やかましいなぁ。

 元康は青いのにじゃれながら俺に次の問題を出す様に頼んでくる。

 面倒だが、適当に作っておいた問題を渡した。


「話は戻るが元康、お前は何か手に職を持たないのか?」

「フィロリアル牧場の主になりたいです」

「だから、それ以外のだ」

「お義父さんが望むなら何でもやりますよ」


 キラッと歯を輝かせて来た。

 俺はその姿にイラッとなった。


 ……はぁ。

 コイツと話すと疲れる。

 まあ、適当に何かを覚えさせるのが良いか。


 ぶっちゃけ、錬か元康辺りには武器や防具作りとかを覚えて貰うのも手だ。

 親父の仕事を手伝う意味でも製鉄辺りを習得させるのも良いな。

 他に採取、採掘辺りも悪くはない。


「とりあえず錬、近々村で武具作りを始めるから、お前はカースの呪いが弱くなったらその手伝いをしてくれ。覚える技能は製鉄辺りを重点的に」

「わかった」


 錬が剣の形状を変える。

 おそらくは製鉄関連の解放を狙っているのだろう。

 ……おい。それくらい覚えておけよ。

 いや、俺みたいにコピー品が多すぎて追いついていないのか?


「そう言えば錬、お前、解放状況はどんなもんだ? 時間を無駄に使うのもどうかと思うから、それくらいの素材の提供はしてやるぞ」

「解放……? ああなるほど」

「何納得した顔してんだよ」

「いや、解放で手に入るステータスなんて微々たるものだろ? そりゃあ尚文が強いのは納得できるけど、それが理由だったのかってさ。そうか塵も積もれば山となるだったのか。そうか……尚文は凄いな」


 は? 何を勝手に理解してんだ?


「えっと……一応聞く、お前、まさか解放を」

「ああ、スキルとかボーナスが優秀な奴以外は後回しにしていた」


 頭が痛い!

 道理でLvの割に弱いなと思ったんだ。

 おそらく、固定概念にブレイブスターオンラインだったか? がまだ根付いているんだ。


 確かLv依存でステータスは二の次とかも言っていた。

 VRMMOだからなぁ。FPSの側面があって、攻撃力とか重要なステータス以外は適当なんだろう。

 一応、ゲームじゃないとは思い始めているけど、俺との違いにまだ気づいてない。


「元康、お前の方は?」

「私ですか? 私はある程度は埋まってますけど、完全じゃないです」


 まだ元康の方が……か?

 こっちはMMOだから考えが柔らかいんだろうか。

 俺は村の倉庫から霊亀の素材を持ってくる。


「ほら、それを吸わせてみろ。それとも持っているか?」

「いや持ってない素材だ……」


 錬が剣に素材を吸わせる。


「俺の盾だと防御力+15という中々のボーナスの品だ。錬の場合はどうだ?」

「攻撃力+10と防御力+5だ。だけど解放には時間が掛りそうだな」


 はい?

 えっと、確か、その素材で出た盾は解放に12時間程度だったがー……。


「どれくらい掛りそうだ?」

「ん? この調子だと三日以上は掛りそうだ」


 三日……随分と掛かるな。

 装備による違いか?

 盾の方が解放が早いとかそんなボーナスでもあると仮定してみるか。


「長いな。俺のとは根本的に違うのか?」


 同じように元康に素材を渡す。


「元康、お前は?」

「そうですね。明日辺りには解放できそうです」


 やはり違いがあるみたいだ。

 となると……。


「一番弱い解放していない武器を出してみろ」


 俺もまだ手つかずだった弱い盾を呼び出す。

 その中でそれぞれ名前を呼び合い。重なった武器にさせようと試みる。

 だが、見つからなかったので、この前サディナが持ってきた土産の魔物の魚を厨房から拝借して渡した。

 さすがに錬達も持っていないだろう。


 それで出たのがブルーボーナンシールド。

 マンボウみたいな魔物だった。

 食用としては漬けるとゼリーみたいで酒の肴に良いとサディナが言っていたな。


「全員、解放までの時間を言え」

「えっと……12時間くらい」

「6時間くらい」

「2時間だ」

「「「……」」」


 12時間……錬。

 6時間……元康。

 2時間……俺。


 錬、12時間ってどんだけ掛るんだ、お前の剣は。


「武器毎の差なのか?」

「可能性としてはあるが、錬、お前は解放出来る剣で時間が短い奴からやっていてくれ」

「わかった。何を試すんだ?」

「可能性としては武器毎の解放に得意不得意があるか、単純に武器によって解放速度が違うか……他にあるとしたら解放の熟練度だ」


 最初に実験に使った霊亀は防御系だから盾と相性が良いという可能性もある。

 だが、どちらかと言えば最後だと思っている。


 解放させるのに別口のLvみたいな要素があるとしたらマメに解放している俺の解放時間が短いのにも頷ける。

 同じ理由で俺、元康、錬の順番で解放度合いが一致するから、実験すれば消去法で熟練度の証明ができる。


「三十個くらい解放させてから霊亀の素材で出た剣の解放具合を確かめてみろ」


 錬は頷いて、手近な弱めな武器に変えて解放を待つようになった。

 まったく、こんな所でも差って出るんだな。

 どれだけ伝説の武器には秘密が眠っている事やら。


「この際だ。先送りにしていた、次の波に関しても聞いておこう」

「ああ、その事か……」


 視界の砂時計はまだずいぶん時間がある。早急に対処するほどではないが、そろそろ取り組んでも問題ないだろう。


「青い砂時計の意味はわかるか?」

「すまない」

「……元康は?」

「わかりません」


 ……知らないかよ。

 この調子じゃ樹も知らなそうだな。


「じゃあ……霊亀の次に出る波はなんだ?」

「鳳凰だ」

「鳳凰です」


 これまた重なる事で。

 情報通は凄いな。

 まあ錬達を生かしているんだから、コレ位の得はあってしかるべきだよな。


「ゲーム内の適性Lvは……130……」

「クエスト受注は70からです」

「60も差があるぞ」


 錬はソロだからー……130必要なのか?

 いや、霊亀の時にその知識が役に立たない事は実証されている。


「その次の麒麟は90だ」

「下がってんぞ!」

「しょうがないだろ。鳳凰はクエストの霊亀が雑魚すぎるってバランス調整されて超強化されてしまったボスだったんだ」


 ああ……ゲームってこういうのあるよな。

 最初は異様に弱いけど、後から強化される奴。

 ま、役に立つかどうか知らないけどさ。


「パーティーを組んで、連携込みで100あれば余裕のはず……だけどこれはゲームの話であって、現実は違うと思う」

「今までの傾向からそうなるだろうな」


 霊亀でアレだったんだ。信用はできない。

 ただし、これは推測の域を出ないのだが、あの霊亀……もしも正しい強化方法を実践して挑んだ場合どうなっていたか、だ。


 確か錬や元康の証言だと推奨Lvは60前後だったか。

 この時に正しい強化方法をして挑めば余裕……の可能性が否定できない。

 もちろん、俺が大ダメージを受けていたのはアレが必殺技だったというのを視野に入れての話だ。

 どんなにLvが高くても痛い攻撃というのはある。


「じゃあ次の質問だ。鳳凰、麒麟、その次は?」

「応竜」

「ああ、やっぱそこなのね」


 というか、それ以前の問題として、なんで四霊なんだ?

 俺の世界の言葉に置き換わっているだけなんだろうが、霊亀だの鳳凰だのが波として出現する理由がわからん。

 世界に災いを招く化け物と言えば、四霊ではなく四凶だろ?

 四霊と分類される、俗に言う瑞獣は幸運の象徴みたいな連中だぞ。


 こういう知識は創作物で使われるから詳しいんだ。

 元々根っからのオタクだしな。


 逆に考えれば世界の為に存在する様な化け物が意味も無く虐殺するというのもおかしい。

 霊亀の特徴は生物を狙うだったか。

 これは人間に限らず魔物も駆逐していた訳だから、生物ならなんでもよかったんだろう。

 残りの連中も同じ習性を持っているかもな。


 ……答えの出ない思考だ。ここでやめておこう。


「受注は120、ソロ推奨150、パーティー推奨130」

「ああ、はいはい」


 どんだけ強いんだよ。

 インフレが凄くてついていけない。

 ネットゲームの末期って感じだ。


「確かストーリーは……世界の竜の中に眠る欠片が集まって降臨する封印所在地が特定出来ない、という設定だ」


 思わず転びかけた。


 ……何処かで聞いた事のある設定だな、おい!

 竜帝ガエリオン! 覚えていろよ! お前が波の正体か!

一応補足ですが、正体ではありません。

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