武漢からのチャーター機運賃8万円 自己負担か公費支出か
新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中国・武漢からチャーター機で帰国した日本人に、約8万円の運賃を請求する政府方針が波紋を広げている。外務省はあくまでも希望者の便宜を図った帰国支援で利用者の費用負担は当然との立場だが、インターネット上には「災害に準じて政府が支援すべきだ」と批判も。与党幹部も相次いで公費負担を主張し、政府が検討を始める事態となっている。
「緊急事態でやむを得ず帰国を余儀なくされた方々だ。政府が負担すべきだ」。公明党の山口那津男代表は30日の党中央幹事会で、公費で賄う必要があるとの考えを強調した。自民党の二階俊博幹事長も30日のテレビ番組収録で「政府で対応するのが当然」と発言。前日に続いて政府に再考を求めた。
菅義偉官房長官は「内戦や武力攻撃など、本人の意思にかかわらず退避を要請せざるを得ない場合を除き、お願いしている」(30日の記者会見)と説明。外務省の海外安全情報には4段階あるが、現時点で武漢を含む湖北省はレベル3の「渡航中止勧告」で、レベル4の「退避勧告」には至っておらず、今回の帰国は費用負担を求める考えだ。
同省によると、約8万円は武漢からのエコノミークラスの片道運賃に相当。空港までのバス代、帰国後のホテル代は公費負担という。2011年にエジプトで起きた大規模デモなど、過去のチャーター機派遣を踏襲した対応で、政府高官は「早めに自分で帰国した人との公平性の問題もある」と話す。
ただ、ネットには「自国民を保護する金をケチるなんて」と政府の対応に失望や不満の声が少なくない。「桜を見る会では予算を勝手に増やしたのに、なぜ今回使わないの」などと政権批判と絡めた発信もあり、お茶の間に格好の話題を提供している形だ。
こうした風向きを意識してか、関係者によると、政府は「見舞金」などの名目で、一部だけでも公費負担ができないか検討に入った。「国民の声に寄り添う姿勢を見せれば、政府も与党も緊急事態への対応能力をアピールできる。誰も損はしない」。自民関係者は、いずれ政府が方針転換すると予想する。 (東京支社取材班)