共生の社会づくりへ 障害者就労支援施設開設目指す-白老
白老町社台でコミュニティーカフェ「ミナパチセ」を経営する田村直美さん(48)と同町地域おこし協力隊員の手塚日南人さん(24)が、NPO法人を立ち上げて町内で障害者就労支援施設を運営することを計画している。軽度障害や発達障害のある人たちに、白老に根付くアイヌ民族の精神性を取り入れた商品作りなど働く場を提供し、経済的自立をサポートする。2人は来年4月の開設に向けて準備を進めており、「誰もが手を取り合って生きる共生の社会づくりに挑みたい」と意気込む。
アイヌ民族の血を引く田村さんと、林業支援担当協力隊員の手塚さんは、アイヌ語を生かした楽曲のCDを出すなど音楽活動に取り組んでいる。2人が活動のテーマにしているのは共生社会。「人種や性別、世代、障害の有無など関係なく、誰もが手を取り合い、自分らしく生きられる優しい社会の実現」を目指しているという。 就労支援施設の開設は、2人のそうした思いを具現化する一環。軽度障害や発達障害などで、一般事業所への就労に結び付かない人たちを受け入れ、働く機会を提供する「A型就労支援事業」を予定している。
計画では、施設の利用者がアイヌ文様刺しゅうの商品などを生産。インターネットや観光インフォメーションセンターなどで販売し、賃金を得て経済的自立を図る。施設には支援員3人を置き、利用者がさまざまな町民と交流できるよう町中心部に開設したい考えだ。田村さんは「健常と障害のグレーゾーンの中で生きづらさを抱き、苦しむ人もいる。そうした人たちに寄り添い、共に生きていく場にしたい」と言う。
施設の運営母体となるNPO法人ウテカンパ(アイヌ語で手をつなぐという意味)は、5月に道の法人認可が下りる見込みで、田村さんが理事長、手塚さんが理事に就く。伝統刺しゅう「刺し子」の高品質な商品作りで知られる就労支援施設トモスカンパニー(宇都宮市)代表の飯島亮さんも理事に加わる予定だ。
ウテカンパは施設運営のほか、刺しゅうや木彫りなどアイヌ民族の伝統技術を生かした商品開発にも取り組む。手始めに、先住民族の伝統織物を施したアウトドア用バッグの世界的メーカー・エスノテック社と提携し、アイヌ文様刺しゅうを取り入れたバックパックを開発する計画だ。今年夏には試作品が出来上がり、同社が世界に向けて販売する。手塚さんは「アイヌ文化を国際的に発信し、共生社会を目指して世界の先住民族との関わりもつくりたい」と話す。
一人ひとりの違いを認め合う社会を願うウテカンパの活動に理解を深めてもらうため、夏にはポロトの森で1泊キャンプのイベントを考えているという。
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