No.165
2017.09.01
情報番組
“消え残り”映像から『繭子ひとり』&『あほんだれ一代』!
“消え残り”映像って何??
私たちが勝手に作った言葉で、ビデオテープを使いまわして何度か「重ね録り」するなかで、前に録画した番組の一部が消えずに残っているもののことです。番組発掘プロジェクトに寄せられるビデオテープの中には、こうした“消え残り”映像がよく見られます。
前回ご紹介した『男は度胸』最終回が発掘されたビデオテープからも2つの超レアな番組が、わずかな録画時間ですが残されていました!
まずは…
銀河ドラマ『あほんだれ一代』。1971(昭和46)年9月に全15回放送しましたが、NHKには全く保存がありませんでした。九州を舞台にした旅芸人一座のドラマで、女座長を清川虹子さんが演じました。
映像の最初には、藤田まことさん、清川虹子さん、ハナ肇さんの3人が神妙な顔をして座るシーンが…。3人ともお若いですね!
清川さんの手元には一通の手紙。どうやら弟からの置手紙で、弟はどこかに行ってしまったようです。
自分は独立して、姉ちゃんを驚かせるような人間になると書かれています。
画面は切り替わって…
驚く劇団員、その目線の先には…
足音高らかに行進してくる兵隊の姿…ここで“つづく”のテロップが。どうやら戦争中の緊迫した雰囲気も織り込まれたストーリーのようですが、残っていた録画はわずか1分59秒。台本なども無く、この“消え残り”映像が初めての資料になりました!
“つづく”の後には配役紹介の画面も…
主要なキャストを書き出してみると…
マサ子:清川虹子
常男:藤田まこと
沢田正二郎:佐藤慶
芳五郎:ハナ肇
健:林邦史朗
…
といった感じです。旅一座の舞台では殺陣のシーンがあったのでしょうね、殺陣師で俳優だった林邦史朗さんの名前があります。
収録されていたビデオテープはベータ。写真の真ん中、60分収録できる形式で録画されていたようで、59分間の『男は度胸』最終回が終わり、残りわずかな“のりしろ”部分に録画されていました。
さらに『あほんだれ一代』のあとには幻の高視聴率朝ドラ『繭子ひとり』の一部分も!
『繭子ひとり』は同じく1971年に放送した連続テレビ小説で、『おしん』に次ぐ平均視聴率を記録した人気ドラマですが保存が全くありませんでした。発掘ニュースNo.83でもご紹介したように全310話中(一年間の放送でした)、杉良太郎さんから提供された第125回の8分弱が唯一存在する映像となっていました。
テープを再生してみると…
主人公・繭子の山口果林さんが玄関から入ってくるシーンで始まる“消え残り”映像。
青森・八戸の料亭の女将を演じる冨士眞奈美さんたちと話をする繭子。
両親の行方が分からない繭子に、父親の居場所を知っていると話す女将。会おうと思えばすぐ会えるとも…。母のことばかり考えていて父のことなど考えていなかった繭子にとって、とっさには返事が出来ない衝撃だったと、石坂浩二さんのナレーションで終わります。
終わりの表示画面には「第24回」の文字。こちらも2分だけ。60分用の録画テープ、5分ほどの“のりしろ”部分のおかげで2つのレアな番組の一部分が貴重な資料として見つかりました。
この「かけら」のような映像だけではストーリーも分からず、皆さんにご覧頂くことも難しいですが、ほんの少しでも「かけら」があるだけで想像が膨らみ新たな発掘への意欲もわいてきます!どちらのドラマもたくさん発掘できますように!