2019年9月12日、ヤフーとZOZOの両社は、ヤフーがZOZOの株式公開買い付け(TOB)を実施し、連結子会社化することを発表、併せてZOZO創業者で社長の前澤友作氏が退任したことも伝えた。
同日午後には両社による合同記者会見が開催された。ヤフーからは社長の川邊 健太郎氏、ZOZOからは新社長に就任した澤田 宏太郎氏、そして前澤氏が登壇し、買収に至った背景や今後について語った。
ヤフーの方針はTOBに4000億円を投じ、ZOZOの発行済み株式を最大50.1%取得して連結子会社化を目指すというものだ。前沢氏は現時点でZOZOの株式の37%を保有するが、TOBに応じてほぼ全てをヤフーに売却すると明言している。
2019年度第1四半期の決算説明会においてヤフーは、収益を多層化して飛躍的な成長を実現するためにコマース事業を積極的に育てる方針を明らかにしている。
川邊氏は「今までヤフーは広告事業がメインだったがもう1つ、コマース事業を大きな柱にしていく。むしろコマースこそが戦略上のキードライバーになっていく。今回の資本業務契約もその戦略にのっとったもの」と語り、以下の4つのポイントを挙げた。
ヤフーが同社のQRコード決済サービス「PayPay」ユーザー向けに今秋立ち上げる「PayPayモール」のファッションカテゴリーに、ZOZOが運営する「ZOZOTOWN」が出店する。
ファッションEC専業のZOZOTOWNは自身も7300超のブランドと1200超のショップが出店するモールだが、PayPayモールにその支店を構えるような形で展開する。各ブランド・ショップにはあらためて参加を要請し、その交渉に当たってはZOZO任せにせずヤフーも一緒になって、PayPayモールの魅力を伝えていく。
Yahoo! JAPANのMAU(月間アクティブユーザー)は1億3000万、PayPayの累計登録者数は1000万、ここにソフトバンクのスマートフォン累計契約数2245万を加えた国内有数のリーチ力をもってZOZOTOWNに送客する。一方で、ZOZOTOWNのコアユーザーをYahoo! JAPANの各種サービスに誘導する狙いもある。Yahoo! JAPANの月間ログインユーザーID数は4901万。ZOZOTOWNの年間購入者数は812万。Yahoo! JAPANが30~40代中心で男女比6対4であるのに対し、ZOZOTOWNは20~30代中心で男女比率は3対7だ。利用頻度においても属性においても両社の顧客層は全く異なる。そのため「極めて補完的な関係で、両社共に顧客基盤の拡大が見込める」と川邊氏は強調する。
川邊氏の説明によると現時点においても両社は順調に成長している。ヤフーのコマース事業の売上高は2018年で1兆8700億円。2013年にYahoo!ショッピングのストア出店料とロイヤルティー料の完全無料化を含む改革を行って以来5年で2倍近く成長している。一方のZOZOTOWNはファッション特化型のEコマースで平均20%以上の成長率で推移しており、2018年の売上高は3231億円に上る。この両方のビジネスをさらに大きく成長させるための秘策として川邊氏はトラベル事業における「一休」とのシナジー事例を紹介した。2019年に一休を買収してから現在まで、両社の売上高の合算は1.9倍になった。その背景にはYahoo! JAPANから一休への送客強化、そして両サービスの連携や一本化といった取り組みがあった。ここで培ったノウハウをZOZOTOWNに注入することでそれぞれの取扱高を増やし、悲願であるEコマース取扱高(物販)国内ナンバーワンを2020年代前半に実現したい考えだ。
もちろん、爆増させたいのは売り上げだけでなく利益も同様だ。ヤフーのコマース事業の営業利益は2018年実績で558億円。2019年にはこれを約700億円にする計画だ。ここにZOZOの2019年の営業利益計画値である320億円を単純に足すと1020億円。それだけで1.8倍の規模感になる。「今まで収益的に見るとヤフーは広告だけの『一本足打法』だったが、2本の柱が立つことになる」と川邊氏は語る。
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