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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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蛮族の鎧+2

 女王と話を終え、俺は武器屋に顔を出した。


「おう。アンちゃんじゃねえか。久しぶりだな」

「そうだな。繁盛しているとかであまり逢えなかった」


 久しぶりに武器屋の親父に会う事が出来た。

 イミアの叔父も店員をしていて、武器を並べている。

 以前よりも品揃えがいいな。

 忙しかったみたいだし、景気が良さそうだ。


「調子はどうだ?」

「中々良い所だ。後少しで完成するぜ。アンちゃん用の盾が」

「そうか。金はどれくらい払えば良い?」

「コイツが存分に働いてくれているから材料費で金貨10枚で良いぜ」


 イミアの叔父を指差して武器屋の親父は気前よく言ってくれる。

 霊亀の素材で作られた名品だからなぁ。ゼルトブルじゃオークションに掛けられていたような品である可能性が高い。

 しかも親父が作ってくれた品ならもっと高値になるかも。

 問題はコピーした後、盾の処遇か……。

 俺の所で扱えて信用が置ける奴に盾を持つ奴はいないからな。


「平均相場だと金貨50枚から、ですね」


 イミアの叔父が俺の考えを読んで答える。

 それにしても安くて金貨50枚か。それでも結構高いな。

 以前ゼルトブルで、オークションされる予定だった非売品に霊亀の剣があったが、アレの盾版と言った所だろう。

 親父の作った物だし、性能も期待できる。


 問題は値段か。

 まあ今の俺なら金貨10枚程度は払える。

 それ位は領地経営で稼いでいるからな。

 むしろ金の使い道は波に備えた戦力として、武器や防具を揃えるのがメインだ。

 安いらしいが、50枚だったらさすがに渋る所だったがな。


「そこまでの品なのか?」

「はい。使い道が無いのなら、売却も視野に入れるのが商売人です故」


 親父も頷く。

 だがな……せっかく親父達が俺の為に作ってくれた物を手放すのはどうも惜しい。

 埃を被る事になっても手元に置きたい。


「まあ、その辺りは後で考えようと思う。鎧の方はどうだ?」

「良い核石だったぜ。あれなら問題なく組み込める。そう思って先に作っておいた」


 親父の指示でイミアの叔父が店の奥から鎧を持ってくる。

 見た感じは前に装備していた蛮族の鎧によく似ている。

 だが、基本的な素材から見直されているのか、金属の部分にべっ甲色の素材が追加されていた。

 後、若干暗かった色合いが明るくなっている。


「これは?」

「霊亀から産出された金属を使っている。重量に若干問題はあるが、その難点も既に解決済みだ。不思議な事に核石を付けたら軽くなった」

「そうか」


 俺は蛮族の鎧を目利きする。


 蛮族の鎧+2?

 防御力アップ 衝撃耐性(大) 火炎耐性(特大) 雷耐性(大) 吸収耐性(中) HP回復(弱) 魔力回復(弱) SP回復(弱) 魔力上昇(中) 竜帝の加護 魔力防御加工 自動修復機能 地脈の加護 生命の加護 竜属性 ドラゴンテリトリー 成長する力


 これまた付与が多い事。

 闇耐性が無くなった代わりに色々と増えている。

 火の耐性は核石のお陰かな?


 竜属性もだな。ガエリオンの核石を使っている分、ドラゴンの側面があるのだろう。

 ドラゴンテリトリーってなんだろうか? 成長する力ってなんか期待したくなる効果だ。

 ガエリオンに聞いてみるか。


「料金はどれくらいだ?」

「アンちゃんには良くして貰っているから、それが素材斡旋の手数料で良いぜ」

「助かる」

「儲けさせて貰っているからな。ここで金まで請求したら俺のプライドが許さねえぜ」


 親父は本当に色々と俺にしてくれて、ラフタリアの次に信頼している人だと常々思う。

 俺の領地に来てくれないのが惜しい人だよなぁ。


「さっそく着て良いか?」

「おうよ! 見せてくれや」


 俺は鎧を受け取り、更衣室で着替える。

 なんとなく着なれた感じがしつつ、真新しい感覚。

 不思議な感覚だな。これ……。

 ただ、デザインに大きな変化はないんだよなぁ。色合いが違うだけで。


「ん?」


 綿っぽい所の肌触りが違う。良い物を使っているのがわかる。

 これは良い物を貰った。

 サイズも間違ってないし、しっくりくる。


「どうだ?」

「おお、アンちゃんと言ったらやっぱりその姿だよな」

「えっと……私にはわかりかねますが、若干育ちが……勇者様には……なんでもありません」


 イミアの叔父が言葉を濁す。

 そりゃあそうだ……親父は喜んでいるけど、俺も最初は世紀末の雑魚と思ったさ。


 だけど、これを身に付けただけでとても強くなったような錯覚を覚える。

 親父の信頼で作られたこの鎧が、俺にとって一番頼りになる鎧なのだから。


 ラフタリアは剣になりたいと言った。

 そして親父は俺に鎧を授けてくれた。

 鎧はやはり、この蛮族の鎧を加工した物が一番だ。


「ありがとう」

「久しぶりにアンちゃんの感謝が聞けたな」

「言ってろ」

「所で嬢ちゃんはどこだ? 全然来ないな」

「まだ修業中」

「へー……」

「そうだ。親父、魔力の流れは見えるか?」

「なんだそれ?」


 俺は親父に薬の調合や料理で魔力を込めると品質が良くなる事を説明してみた。


「見えはしないな。だが、力を込めろと言うのはわかるぜ」

「そうか」

「ま、アンちゃん程明確に力を使えはしないだろうけどさ。今度アンちゃんも手伝ってみるか?」

「考えておく」

「後な、素材の声に耳を傾けなきゃダメだ。押すのも良いが引くのも重要だぜ」


 ふむ……魔力を込めるのも大事だけど、導かないといけないと言う事か。

 粗悪品を良くするには込めたら良いが、土台の品質が良いのなら入れてはいけない?

 それとも龍脈法のような?

 ん? 何かひらめきそうな気がする。

 今度試してみるか。


「さて、あんまり長居をしていたら迷惑を掛けるな……ああ、そうだ。馬車をまた作って貰えないか?」

「ん? どうしたんだ?」

「フィーロが無茶な運転で馬車を滅茶苦茶にさせてしまってな」

「何したんだよ」

「峠でレース……山道で競争をする事になって崖を飛んだ」

「どんな状況だよそれ!」


 さすがの親父も驚いている。

 イミアの叔父も同様だ。


「次は無いから前と同じものを頼む」

「わかった。フレームは作っておくから一応、鳥の嬢ちゃんを連れてきてくれや、嬢ちゃんに合わせた改良をした方が良いだろ?」

「ああ、じゃあ今度来た時にでも」

「おうよ」

「私も近々、村に帰りますね」

「結局はお前が来るのか?」

「仮決定の段階です。なんだかんだで村の者達に装備を作った方が良いですよね?」

「む……そうだな」


 未だに中古の武器を使わせている。

 いい加減、買い替えないとボロくなってきている。

 一応、メンテナンスをしてはいるけど限界が来るだろう。

 イミアがあれだけの腕前を発揮しているんだ。その叔父も同等の才能がある事を期待しよう。


「盾の勇者様がどちらに来てほしいかわかってはいますけどね」

「いや……その」


 うわぁ。これは気まずい。

 確かに武器屋の親父に来てほしいとは思ってしまっている。

 普段なら一蹴してしまうのだが親父と比べるとなぁ。

 申し訳無いが、本音ではな……。


「気にしないでください。負けるつもりはありませんよ」

「そうだぜ、まったく、腕は鈍ってねえじゃねえか。お前がいなきゃあの盾は完成しなかったと思うぜ」

「盾の勇者様の期待が掛っているからなぁ。やるしかないだろ。むしろやらなきゃダメだ」


 親父が言うって事は腕は頼りにして良いと言う事か。

 じゃあ、期待しておこう。


「楽しみにしている。何処かで素材とかを集めておけば良いか?」

「はい。後は鍛冶場を作って頂けるとありがたいですね」

「わかった。近くの町にそう言うのに詳しそうな奴がいるから任せておけ」


 アクセサリー商にでも聞けば良いだろう。

 なんだかんだでアクセサリー作りには金属の精製が必要だったりするし。

 町でそう言った工房を建てたのを俺は知っている。

 だから村の方でも作らせられるはずだ。


 出来る限り値切ってやる。あいつも奴隷商に通じてマゾだからな、値切りをすると喜ぶ。

 もちろん、手抜き工事はさせない。


「では後日、完成した盾と一緒に」

「ああ、それじゃあな……」


 こうして俺は武器屋を後にした。

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