「イッセー尾形さんに特別インタビュー」 原点は“ふつうの人を輝かせたい!”
イッセー尾形さん。
テレビでも特異なキャラクターが光り、一人芝居の第一人者としても有名だ。
現在「イッセー尾形のこれからの生活2011」という一人芝居の全国公演を行っていることを知り、先日原宿で観劇してきた。公演後、イッセーさんに今回の公演についてお話を聞いた。
今回の公演を見て、まずハッとしたのが人物のリアルさだ。
しぐさなど細部まで見事に表現され、「いるいるそういう人」と思わず納得してしまう絶妙なキャラクター。
自転車の練習中でなかなか上手く乗れない近所のオバサンや、ちょっと感覚がズレていて煙たがられてしまうホテルマン、自分の船を手放そうとしているワンマン社長など、どれも濃くて魅力的。
完璧ともいえるリアリティーに、同一人物が演じていることが奇跡のように思えた。
彼が演じる老若男女は自分の周りに確実にいる人物のよう。どのように観察しているのかとても気になる。
楽屋で、さわやかな笑顔で迎えてくれたイッセーさんに確かめた。
「葛西橋のそばにステンレス工場があって、自転車で通り過ぎる時に見かけたんです」
今回演じていた、近所にいそうな気さくな溶接工おじさんの話。
リアリティーがありすぎて、毎日寝食を共にして観察していたのかと思うほどだったが。
「あのおじさんはあそこで喜怒哀楽を体験し、一生を終えていくんだろうなと」実際に観察はしないが、のぞいている。後はそこに想像力と願望を加えて一つにする。
それをイッセーさんは“スーパー観察”と呼んでいる。
その人をみずみずしく表現したい。
「一人一人の人生をくっきり、はっきり表現していくことが自分の仕事だと思っています」
その一人芝居の原点とは。
「以前、私は芝居一本でやっていけるまで建設現場で仕事をしていたんです。毎日ほこりと汗まみれの中、働いていました。その時、そこから歩行者天国を歩く人々がすごく幸せそうに見えたんです。色とりどりの服、笑い声。普通の人々が輝いて見え、うらやましく思えた。当時のあの光景が強く強く、今も脳裏に焼き付いているんです」
バリバリの成功者というわけでもない、普通の人たち。しかしその人たちを輝かせたい。
「あの頃に感じた気持ちが相当強かったんでしょうね。だから今も作っていて、いまだにその気持ちを出し続けているんです」
一人芝居を続けているのは「終われないから」と言う。
生きている人の数だけ「演じたい人」が湧き出て来るのだろう。
今回も仮面で役を使い分ける語り部や、ギター・ウクレレ・尺八を演奏するなど、
おもちゃ箱のようにいろんなことを試して一人芝居を極めたいと話す。
枯れることなく、水のように湧き出てくる「人」。
「ネタはなぜか、水回りで思いつくんですよ」。
また、3.11の震災以後、通常公演ができなかったのがとても悔しかった。
当たり前の生活が奪われた悔しさ、失われた現実たち・・。
「何かを巻き返したくて。失われた当たり前をもっと色濃く、自分の思う現実をもっと色濃く出すこと、これが僕の使命」
今回の公演は、前へ進むちょっと手前の人々を表現したい。そういう気持ちが強いという。
イッセーさんにとっても特別な思いのある今回の公演「イッセー尾形のこれからの生活2011」。
イッセーさんの魅力と世界観がしっかりと濃縮されていると思った。
いっぱい笑って心をスッキリさせたい方に、おすすめだ。
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※一人芝居「イッセー尾形のこれからの生活2011」は北海道から九州まで全国各地で公演中
イッセー尾形オフィシャルサイト
http://www.issey-ogata.net/index.php
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(齊藤かおり)