サカナクション素人が6.1chで度肝を抜かれてきた話。

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2019-05-02 05:45:04

2019.4.21ゼビオアリーナ仙台 サカナクション SAKANAQUARIUM 2019 ”834.194” 6.1ch Sound Around Arena Session に行ってびっくりして帰ってきた話です。

2019年4月21日ゼビオアリーナ仙台で行われたサカナクションのツアー
「SAKANAQUARIUM 2019 ”834.194” 6.1ch Sound Around Arena Session」に行ってきました。

私、サカナクションに関しては全くのド素人でして、そんなやつがなにを語るのだという感じではありますが、あまりにも感動してこれは書き記さねばというほんと自己満足自分的記録なのでファンの皆様ご無礼をお許しください。(ちなみにレベル的には曲はなんとなく一通りは聞いている、有名な曲は曲と曲名が一致している、曲の背景やバンドやメンバーの細かい事情はあまり存じ上げないという感じです。ご容赦ください。)


個人的なサカナクションのイメージは
「とても人気がある」
「音に異常なまでのこだわりがある」
「おしゃれ」
「何年もアルバムが出ていない」
「その待望のアルバムが4月発売の予定から延期になった」という感じ。

今までも興味はありましたが、人気もあるしチケット取れなそうだしにわか風情で参加するの申し訳ないし、でもできるなら見たいなという感じだったのですが、仙台で初の6.1chサラウンドということでこれは!!とチャレンジしてみたらご縁を頂きましてこの度の参加と相成ったわけです。


6.1chサラウンドをライブで体験するということで、全くの未知の領域。
チケットがソールドアウトしても赤字なんていう噂も耳にしていたので(こういういい方はあれだけど)めちゃくちゃ期待が高まります。
会場内、アリーナは9つのブロックに分かれていて今回はレギュラーALブロック(ステージに一番近い左側)あれ…ステージには近いけどこれだと普段の聞こえ方とあまり変わりないのでは…?と思いつつ開演を待ちます。

ステージには中央付近に斜めにスリットが入り二重構造になった紗幕がかかり、円環の中に「SAKANAQUARIUM 2019 ”834.194” 6.1ch Sound Around Arena Session」の文字。左右のスクリーンにも同じ映像。その円の中をまるで魚が泳ぐように緑や黄色の波形が模様を作っている。会場内に流れるBGMの音を拾って形にしているのかな?と思って眺めていると開演前のアナウンスが流れ、その声に呼応して円の中に新たな波形の模様が生まれる。
この円はサラウンドを表しているんだな、ということはあの点はスピーカーの位置なのね…ということにやっと気が付く。そうか…6.1chってホントに360度全部から音がやってくるってことなんだね。こうやって視覚的に見るとすごいことだなあ…。会場内を照らす青や緑の照明によってまるで巨大な水槽の中にいるよう。お客さんも比較的落ち着いた感じの人が多くて、みんなゆったりと開演を待っている。


照明が落ち、紗幕にモノクロ映像で歌う一郎さんが映し出される。
新曲なのかな?美しいメロディ、アコースティックなアレンジ。
「セプテンバー!」と力強く放った一郎さんの声に鳥肌が立った。
紗幕が開く。ステージいっぱいに溢れる光。
白いシャツを着てこちらに背を向けた山口一郎がオーケストラの指揮者のように両手を高く上げているのが見えた。スクリーンには一郎さんを正面から映した映像。
その背後に今日のこの場を共有するためにやってきた沢山の人の顔が見える。


いよいよ始まる濃密な時間の予感にこの時点でノックアウト寸前。そこから「アルクアラウンド」へ。すごいびっくりしたのは照明が鮮やか、というか全体的にすごい鮮明なんですよね。音も光も五感で感じ取るものすべてが今までにないくらい鮮やかで、でもそれが何でなのか何の効果でそうなっているのかわからない。
もちろん音響が6.1chなくらいだからその他の舞台装置にも相当なこだわりをもって作り上げられているステージなのだろうけど、今まで見てきたものとの圧倒的な差に五感がバグりそうになった。なんだこれは。衝撃が強すぎて「アルクアラウンド」の演出あんまり覚えてないです…。


一郎さんが「みんな踊れる?」とこちらに投げかけ、「夜の踊り子」へ。
ステージ背面には縦に細長い4枚のスクリーン。それをつなぎ合わせるように舞妓さんの映像が映し出される。たぶんアルクアラウンドは青っぽい感じの照明だったような気がするのだけど、ここで一気に色の洪水が押し寄せてきてクラクラするほど刺激的。
普段ライブハウスにばかり行っているので大画面のスクリーンを演出に大々的に使うということ自体が新鮮で、さらに映像の使い方が大胆かつミスマッチな面白さもあって子供みたいに「すごい!!すごい!!」ってなってしまった。あとなんかスクリーンがすごい鮮明だったんですけど、それはサカナクションだからなのかゼビオアリーナだからなのかその辺がよくわからなくて、さらに音響すごいいい気がするけど、6.1ch感がこの時点ではあまりわからず、素晴らしいものを与えられても受け取る土壌がないと豚に真珠的なもったいなさがあるな…と思ってひたすらに申し訳なかった。


モンキーマジックを彷彿とさせるイントロがしびれる「陽炎」。この曲めちゃめちゃ好き。一郎さんがステージをあちらこちらへ動き回る。スクリーンには女性の口元が印象的な映像。スクリーンに対して映像の映し方がデカいというか近いというかメンバーも大画面で映って大迫力。
サカナのライブですごくいいな、と思ったのは一郎さんが「みんな自由に踊れる?」「自由に踊って!」って何度も「自由に」って言ってくれたところ。昨今の風潮としてライブマナーとか他人に迷惑をかけない(もちろんそれは大前提ではありますが)ことが重視されすぎて、自由に音楽を楽しむ、自由に踊るって想像以上に難しい。ここではこういう風に手拍子して、ここではこういう振りで…みんなと同じにすることがマナーだよみたいなところもあって、音楽の本当の楽しさみたいなものを忘れてしまうことがよくあるんだけど、一郎さんの「自由に踊れる?」って言葉はそういうものから少しだけ自由にしてくれる優しさがあって、お客さんもそれに応えて和やかな自由さを楽しんでいるのがすごく素敵だなと思ったのです。サビの「かーげろうかああげろう」の歌い方も素敵でテンションが上がった。


続いて披露されたのは「マイノリティ」という言葉が出てくることから察するにおそらく新しいアルバムに収録されるであろう新曲。これとてもかっこよかったです。
いや、ほんとわたしが言うまでもないことなのですが、本当にこのバンドは1曲1曲の持つ力がすごく強いですよね。そしてそれぞれの曲が力を持ちながらも他の曲を邪魔しない絶妙なまとまりがあって全体的な説得力がものすごい。
なにがどうすごいか説明できないから馬鹿みたいに「ものすごい」ってしか言えないけど。


なんかここまで6.1chのすごさがすごいような気がするけど気がするばかりでよくわからない…だって目の前のスピーカーから音が聞こえるのは普段のライブと同じだから…みたいなところがあったのですが、続いて披露された「Aoi」でおおお6.1ch!!!ってなりました。音が四方から攻めてくる!!!
コーラスの部分の音がドーム状に広がって降り注いでくる感じ…といいますか…すごいぜ6.1ch。あと低音がズンズンドコドコお腹に響く感じが一番強く2.1chとの違いを感じたような気がする。


ここからしっとり聞かせるターンに。「さよならはエモーション」。
一転して色の抑えられたステージ。一郎さんの姿だけが浮かび上がって見える。

「ずっと深い霧の 霧の向こうへ」

声を放った瞬間に、会場の真ん中から後方へ向かって「わあ!!」っと驚きに似た声が上がった。声がすぐ近くで聴こえたような感じがしたのだろうか、と思って6.1chが形になって見えた瞬間だなあと思った。贅沢なんだけどもっと別の場所で私も聴いてみたいなあと思いました。


「ユリイカ」
ステージには再び紗幕がかかりモノクロの東京の街並みが映し出される。
その後ろで歌う一郎さんの白いシャツがライトの光でぼんやりと光る。
背後のスクリーンには電車の車窓(?)から流れる景色を見て涙をする女性の姿。
これから故郷を離れるのか、離れてしまった故郷を思っているのか。
(スクリーンの映像は横から見る感じだったので全貌が見えない部分がありそれがすごく残念でした…ちゃんと見たかった…)

「ユリイカ」の

「いつも夕方の色 髪に馴染ませてた君を思い出した ここは東京 空を食うようにびっしりビルが湧く街」

「なぜかドクダミとそれを刈る母の背中を思い出したここは東京 蔦が這うようにびっしり人が住む街」

って歌詞がなんか好きなんですよね。たぶん一郎さんの書く言葉の持つ色が好きなんだと思う。一郎さんの言葉はグラデーションがとても綺麗で、太陽が沈んで夜を連れてくる時間とか、夜の空気に溶け込んだ夏とか、花が開く瞬間の音とかそういうものの持つ色が言葉に溶け出して自然にそこにある感じが好きなんだと思う。


紗幕の中央に白く光る線が1本映し出され、歌声や音に呼応して波形を変えるという「音を形にして見せる」という美しい演出が施された「years」。実験的でありながら、神秘的でもありとても面白いなと思いました。


「ナイロンの糸」
ここら辺の演出をあまり詳しく覚えていないのですが、たしかオイルアートだったと思う…ブルーか黒のベースに刻々と形を変える円が受精卵のように見えて、生命が生まれ育っていく瞬間のようだな…と思ってなんかそれが曲の雰囲気に合っているなあ…と思った記憶が…しかしこれすごいいい曲じゃないですかー???天才では???


スクリーンいっぱいに蓮の花の映像が映り幻惑的な雰囲気で奏でられる「蓮の花」。
スローで聴かせる系の曲が続いているにもかかわらず、ここまで全く飽きさせない構成と演出に感心させられる。曲のひとつひとつの演出が非常に凝っているのに全体としての流れのバランスがよく、押しつけがましくない。
アーティストによってはたまに見る側置いてきぼり系の演出ってあったりするけど、すべての曲において見る側の人のことを考えて作られているのが分かった。
どんなに好きなアーティストでも中盤だれるタイムって必ずあるじゃないですか。
そういうの全然なかったもんね。すごいな。サカナクション。
なんかここら辺のどこかでレーザーの光が放射状にぶわわっと広がって生き物みたいに見えて綺麗だったんだよなあ…どの曲だったかなあ…


ソフトバンクのCM速度制限マンでお馴染みの新曲「忘れられないの」。
冒頭スクリーンには速度制限マンを彷彿とさせる水色のジャケットを着た人物の手が映るという面白い演出。CMで聴いてすぐに耳に馴染んだ印象の通り、キャッチーで思わず体を動かしたくなるような曲調。一郎さんも楽しそうに動き回る。
音楽理論あんまりわからないのであれなんですけど、サカナクションの曲ってメジャー感とマイナー感(って表現でいいのかしら)のバランスがすごくいいですよね。万人に受けるメロディとちょっとした違和感のバランスというか…それがすごくかっこいいんだよなあ…(大した事言えなくて本当申し訳ありません…)

ここから新曲ラッシュ。なんか「ピーナッツ」って連呼してる曲。
「しなびたピーナツ」だか「ひからびたピーナツ」だかが繰り返される。
映像もピーナッツと踊る女性(こう書くとわけがわからないですけどかっこよかったです)

その次の曲でたしか演奏中にステージの背後に設置されている筒が火を噴いた。
火炎放射器かな?って勢いで演奏してるすぐそばでドゥーン!!って感じでめっちゃ炎出てたからすげえなサカナクション!!って笑ってしまった。あと炎出てる横を幕がスルスル動いていくのが見えて大丈夫?燃えない?って心配になるなどしました。曲はねえ、これもかっこよかったです。


紗幕が完全に閉じて再び開くとコンピューターおばあちゃんみたいな装いの5人が上空から客席を見下ろしている(かわいい)
ここから「INORI」、さらに「moon」と続き客席はダンスホールへ。
音と映像が目まぐるしく交錯するなか、みんな自由に体を揺らしている。
紗幕全体とスクリーンを使い様々な色や形の映像と光、音の洪水。
天井にまで花の形をした光が映っていて360度どこを見ても楽しいし、どこも見ていなくても楽しかった。これがねえ、本当にすごいと思った。ステージ見てなくても楽しいの。スクリーン見てても天井見ててもお客さん見ててもなにも見てなくても楽しい。音や熱気を感じるだけでも楽しい。
ライブってまあ、音が聴こえるのは大前提ですけどステージが見えないと楽しさ半減みたいなところがあるじゃないですか。
でもサカナクションのステージは聴覚や視覚だけでなく五感のすべてに訴えるような、
もっと言えばそれを超えて感情の深いところにある純粋な楽しさにタッチするような力があった。

左右のスクリーンから砂嵐のような映像が徐々に辺りを侵食していく。
それはゆっくり紗幕へと広がっていき5人の姿を覆い隠す。
完全に幕が閉じ姿が見えなくなった後、聞き覚えのあるイントロとともに再び5人がステージに現れ「ミュージック」へ。
会場の高揚した空気に鮮やかな照明やメロディの美しさがよく映える。

「君が(ナイテイタ ナイテイタカラ)」

のあと、一瞬照明が全て落ち無音になる。

「過ぎ去った季節を待って」

再び歌いだし照明が会場を照らした瞬間にうわぁっと息をのんでしまった。
溢れる光。沢山のシャボン玉が光をまとってキラキラと虹色に光っている。
客席は驚きと喜びの表情で埋め尽くされている。「魔法だ」と思った。「奇跡」でも「マジック」でもなくて「魔法」だと。

色々なアーティストのステージを見て「奇跡」だと思うような瞬間は今までもあったし、心を揺さぶられるような瞬間も沢山あった。
演者がその時にできる最高のパフォーマンスをして、その時に起こる出来事や空気が作用して自然発生的に起こるものが「奇跡」なのだとして、
様々なギミックを用いて見る人を驚かせ喜ばせる「マジック」でもなく、
サカナクションのステージを「魔法」だと感じたのは、そこに演者の見る人を純粋に喜ばせたいという強い意志と自分たちもその場を目一杯楽しむという「音楽とは本来自由で純粋で楽しいものなのだ」という強いメッセージがあったからだと思う。
ライブ全体を通して彼らは「音楽は楽しい」ということを自分たちの持てる技術と自らの肉体を使って全身全霊で表現していた。「いまこの瞬間」を感じて楽しむことの幸福感を思い出させてくれるようなすごく力のある瞬間だった。


「まだまだ踊れるー?」と客席に問いかけ「新宝島」へ。「新宝島」ってすごくない?わたしこの曲流れてきたらどんな瞬間でも聞いちゃうもん。
音楽的な部分でなんでって言われると分からないけどなんかわからないけど必ず耳が反応する曲っていうのがすごい曲なんじゃないのかって思うのでたぶんそういうことです(雑)ステージにはチアガールみたいなダンサー。盛り上がりも最高潮。

「みんなアイデンティティ知ってる?歌える?」と一郎さんが促すと
「アイデンティティがない 生まれない らららら」と客席から大合唱。
それに「おおおすごいな!」とめちゃくちゃ嬉しそうな一郎さん。
「じゃあこのまま行っちゃおう」とそのまま客席だけが歌うターンが2周くらいあって「アイデンティティ」へ。ここは問答無用の楽しさ。会場を風が吹き抜けるように音が駆け抜け、そのままCOMME des GARCONSのお馴染みのコートを風にはためかせながら「多分、風」まで一気に走り抜ける。


ここでこの日初めてのMC。
「6.1chサラウンドをやっと仙台でやることができて嬉しい。」と微笑みながら語る一郎さん。話題は6年ぶりのアルバム「834.194」へ。(記憶なのであくまでニュアンスで…)

「アルバムタイトルの「834.194」というのは今東京で僕らがよく使っているスタジオと北海道で活動していたころのスタジオを直線距離で結ぶと出てくる数字なんですけど…
ライフワークとライスワークという言葉があるけど、ライスワークという言い方はちょっとあれだけど…周りから求められるものと自分たちのやりたいことのバランスをずっと模索してきた6年間だったと思います。そういうなかでこのアルバムでは音楽を始めたときの初期衝動というか、自分たちのやりたいことをまた純粋にやれているんではないかと思います。」

新しいアルバムに込められた思いをゆっくりと語る一郎さん。
「本当は4月に出すはずだったんだけど僕の歌詞が出来上がらなくて完全に僕一人のせいで延期になってしまって申し訳ない…」
と言いながらもそう語る姿には自信が溢れていて、今日のライブの内容も含めてきっとものすごくいい作品が出来上がってくるだろうなという確信を得る。

そんなニューアルバムに収録される曲として本編最後に再び演奏されたのは「セプテンバー」。オープニングでのアコースティックバージョンとはがらっと印象が変わる。
スクリーンには0が6つ並び、目まぐるしくカウントを刻んでいく。
後ろには834.194のコンセプトムービーに使われている道路を延々と走る映像。
まだ路肩に雪の残る北国を通り抜け、夜の高速道路を進む。
やがて景色は変わりどんどんと都会の色が濃くなる。
カウンターは回り続け、8、3、4、1、9、4を示したところでカウントが止まる。

今ツアー、そしてニューアルバムを象徴する曲としてこの日会場に鳴り響いた「セプテンバー」は音楽活動を始めた北海道時代から東京で活動する現在までの集大成というよりは、さらに新たな道へ踏み出す決意の響きを持っているように聞こえました。

本編終了。うわあ、なんか軽率に行動しすぎたかもしれないなあという軽い後悔が。
ちょっとすごいものを見てしまったんじゃないのかしら。こんなものを見てしまったらこれから先私のライブ人生は大変になってしまうぞ…。



アンコール、ツアーTシャツに着替えてリラックスした雰囲気の男性陣。
1曲目は「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」スクリーンにはバッハの絵(文字に書くとめちゃくちゃシュールですね。)
「月になれた僕が何故 月に見惚れたのは何故」歌詞が美しいなあって聴いていてスクリーンに例の操り人形が映ったときに(ああ…ビジーフォー…)って思ったのは世代だから…ビジーフォー知ってますか?知らない人はググってね…。


アンコール2曲目「白波トップウォーター」
それまでの映像や光を目一杯使った演出から一転、シンプルな照明。
それがかえって新鮮で、バンド感を際立たせる。これがすごくいいなあと思いました。
音響や演出に凝りに凝っているのでそういう部分に目が行きがちだけれど、
なんの飾り気もなくてもバンドとしての強い引力を持っているということを証明するような瞬間で、サカナクションは「今この瞬間に息をしているバンド」であるということを思い知らされる。


歌い終わり最後のMC。
「今の曲は「白波トップウォーター」という曲なんですけど、サカナクションの前に(ギターの)モッチとバンドをやっていてそのバンドをモッチが辞めたいって言いだして。(モッチか一郎さんの部屋で)一時3対1になったよね?でモッチは僕以外のメンバーとバンドを組んで、僕が1人になって。でそうこうしてるうちにモッチのバンドが活動しなくなっちゃって、この「白波トップウォーター」が出来たときにギターを弾くやつがいない、誰に弾いてもらおうかってなったときにじゃあ声かけてみようかなって…
まあだいぶ険悪よ?でもやってくれるかなあって、当時モッチの家は銭湯やってたんだけどそこに訪ねて行ったら番台座ってたからね(笑)
それでこいつこのままにしておけねーなって思ってやらない?って誘って。でバイト先でザッキーを誘って、愛美ちゃんは当時札幌でかなりブイブイいわせてたベーシストで有名だったんだけど、愛美ちゃんのバンドが活動休止しちゃって、それを聴いて誘うしかないと。で声を掛けたら参加してくれることになって。でエジーは知り合いの関係で入って。サカナクションが出来上がるという、ある種サカナクション結成のきっかけになった曲です。」

と当時の話をユーモアを交えて語り、話題は6.1chサラウンドシステムへ。

実際に体感したほうがわかりやすいから、と標準的なLRの2ch、上手前方、上手中央、上手後方、下手…とスピーカーを切り替え聞こえ方の違いを体感させてくれる。
スクリーンには開演前に映し出されていた円環が再び映り、スピーカーから音が出るとその位置の色が変わり視覚的にも6.1chがわかる仕掛け。
これが一気に鳴るとこんな感じ…とすべてのスピーカーをオンにすると音が降り注いでくるのがよりはっきりわかる。
というか、こうやって違いを示されないといまいちわからないのポンコツすぎるだろ自分…という気持ちに。もったいない…非常にもったいない。

「多分今回ゼビオアリーナ史上最も多くのスピーカーが入っている。」と嬉しそうに語る一郎さん。盛り上がる客席。

「僕らがやりたいことは2chではもう足りなくなってしまってこうやって6.1chでやっているわけですけど、これがね、もしかしたらそのうち12chとか24chとかになる日が来るかもしれない。僕が今一番やってみたいのは、足元に敷くスピーカーってのがあって下から音が来るの。それを敷き詰めてやったら面白いと思わない?でもね、めちゃくちゃ高くて…お金の話をするのはいやらしいけどこのくらいで(数十センチ四方くらい)で1日レンタル数万円(数十万円?)しちゃうんだよね…」

とキラキラした瞳で語る一郎さんを見ながらああ…これがうわさに聞く「音の変態(誉め言葉)」ってやつね…ていうか6.1chでも赤字なのにこれ以上やったら本当に破産してしまうのでは?危険!ととにかく心配になる。グッズ買って帰ろう…こんなに素晴らしいライブ7,000円で見れるとか実質無料だし…と心に決める。


「次で最後の曲です。これは初めて紅白に出た後くらいに、周りから求められるイメージと自分のやりたいことのギャップに葛藤していた時期があって、こんなことをやりたいわけじゃないと思いながら作ったんですけど、今聴くとその時とはまた全然違った響きがあって…」と語って演奏された最後の曲「グッドバイ」。

紗幕がするすると閉じ、三角形の隙間から演奏するメンバーの姿だけが見える。
幕をスクリーンにしてまるで映画のエンドロールのように「team sakanaction」の文字が映し出され、今日のステージを作り上げたスタッフの名前が流れていく。

「グッドバイ 世界から知ることもできない 不確かな未来へ舵を切る」

この歌詞を書いた当時、未来は雲に覆われてそれは希望とはかけ離れた状態だったかもしれない。でも時を経て「違う響きを持って聴こえる」と語られたように、今は不確かではあるけれど、それでもまだ見ぬ景色を見てみたいという希望とそこへ自ら舵を切り進んでいくという力強さを感じる演奏だった。

すべてのスタッフ名が流れた後、スクリーンにはメンバー5人の名前が。
映画なら俳優の名前が一番先に流れるところだけれど、最後にメンバーの名前が出るところに、今日のこの場を作り上げているのがメンバーもスタッフも関係なく「team sakanaction」である、ということを感じてとても良いなあと思いました。


これをもって仙台公演すべて終了。
まるで1本の超大作映画を見終わったかのような気分。あまりに濃密で衝撃的な体験に、しばし茫然。この場を離れるのが惜しくて出口へ向かう人の流れをぼんやりと眺める。みんな高揚してキラキラと輝いた顔をしている。会場に流れるSEが最後の最後ですごくきれいに聴こえて6.1ch…桁違いだったな…と思う。

なんだこれ。なんだこの人たち。こんな素晴らしいものを7000円やそこらで見せちゃうとかおかしくない?チケット代安すぎでは?サカナクションって何者?
次に6.1chで来てくれる機会があったら絶対レギュラーじゃなくてスペシャルにしよう。グッズも山ほど買って帰ろう。こんなにいい体験をさせてもらって何もしないなんて許されることじゃないわ…。

普段そんなに大きな会場や凝った演出のライブを見る機会があるわけではないけれど、
それでも今日のこのステージが一般的なものと比べて段違いにこだわって作られていることは容易に想像できた。
そして最初から最後まで会場中に溢れていた「見に来ている人を楽しませたい」「音楽を楽しんでほしい」という強い気持ちと、それをもとに作り上げられた演出(きっと会場のどの位置から見ても楽しめるように構成されているのだろう)にファンや見に来てくれる人への深い愛情を感じたのでした。
サカナクションのファンは大切にされているなあ、幸せだなあ、と素直に思った。
目まぐるしく変わる音楽業界で6年間もアルバムを出さないというのはけっこうすごいことだと思うのですが、それでも変わらずに第一線で活躍し続けていること、やっと出る新譜が発売延期になってもファンに受け入れられることの理由がわかった気がしました。

一度見たくらいでこんなこと偉そうに語るの本当におこがましいと思うし、純粋に感動してどうしても書き記したくて長々と書いてしまいましたがお前全然わかってない!やり直し!みたいなご批判は受けても当然だと思っております。これから少しずつでも勉強していってまたこの素晴らしい場を共有する仲間に入れてもらいたいなあと思うので、どうか生暖かく見守っていただければ…

6月に発売されるニューアルバムでは一体どんな世界が広がっているのか、期待に胸を膨らませ山ほど買ったグッズを抱えて帰路についたのでした。

SAKANAQUARIUM 2019 ”834.194” 6.1ch Sound Around Arena Session
2019.4.21 ゼビオアリーナ仙台 セットリスト
1. セプテンバー
2. アルクアラウンド
3. 夜の踊り子
4. 陽炎
5. マイノリティ
6. Aoi
7. さよならはエモーション
8. ユリイカ
9. Years
10. ナイロンの糸
11. 蓮の花
12. 忘れられないの
13. 新曲
14. 新曲
15. INORI
16. moon
17. ミュージック
18. 新宝島
19. アイデンティティ
20. 多分、風
21. セプテンバー
アンコール
1. バッハの旋律を夜に聴いたせいです。
2. 白波トップウォーター
3. グッドバイ


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tokiedaは脊オパレポ(やっと)書いたよ
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