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私はこうしてコロナの抗体を獲得した《前編》保健所は私に言った。「いくら言っても無駄ですよ」

恐らくはジャーナリストとして初めてであろう「私のコロナ体験記」

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

PCR検査ではなく抗体検査へ

 この日、それまでのCOVID19取材を通じてウイルス自体や医学界全般の知識などについて教えをいただいていた上昌広・医療ガバナンス研究所理事長に紹介を受け、初めてナビタスクリニックの受付に足を運んだ。運んだ手段はもちろん自分が運転する車だ。

 目的は初めての抗体検査だった。「検査難民」という言葉が流通しているように、病院のPCR検査など簡単には受けられないことはわかっていた。

 PCR検査というのは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応法)という検査法の略称で、例えばコロナ患者の身体に含まれるコロナウイルスを少量取り出し、そのウイルスの遺伝子をPCR装置を使って増幅させ、発見しやすくする方法だ。

 しかし、今PCR検査はなかなか受けられない。なぜ受けられないのか。その大きい原因となっている構造については、『安倍首相が語った「コロナのピークを遅らせる」と「五輪開催」の政策矛盾』(3月17日公開)に記した通りだ。

 このPCR検査に対して、もっと簡便な検査方法が急速度で開発されつつある。それが抗体検査だ。

 身体の中にウイルスなどが侵入してくれば、まず免疫細胞が気がつき、そのウイルスに対して新たに形作られた抗体が立ち向かっていく。その抗体はウイルスが排除されても体内にそのまま残り、次に同じウイルスが入ってきた場合、同じように立ち向かって排除していくため、同じ感染症に犯されることがなくなる。

 これが、俗に言う免疫の獲得である。

 抗体検査は、ウイルスの遺伝子そのものを増幅させて調べるPCR検査とはちがい、この抗体の存在そのものを確認する検査方法だ。

 4月1日に受けた抗体検査は、コロナウイルス感染で調べる二つのタイプのうちIgM検査。「Ig」というのはイムノ(免疫)グロブリンの略称で、全部で五つのタイプがある抗体を意味する。IgMは感染した初期段階で生まれる抗体で早い段階で消えていく。

 腕から血液を採り、縦7センチ、横2センチの小さいキットについた下の方の「窓」に、採取した血液を1滴垂らす。すると15分ほど経過して上の方の「窓」に赤い線が1本か2本現れる。これが1本であれば陰性、2本であれば陽性という結果になる。

 そして、この日、私の検査結果は陰性だった。

拡大Blue Planet Studio/Shutterstock.com

 ナビタスクリニックはこの時、医療関係者ら同クリニックが必要と認めた人にのみ抗体検査を実施していた。私の場合は紹介があったことと、COVID19の取材を続けているジャーナリストであることから必要性があると判断された。4月23日から、一般の方からの抗体検査申し込みを受け付けている。ただし、保険適用がないため、一回5500円は自費となる。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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