休業要請に応じていないパチンコ店名を公表する大阪府の吉村洋文知事(24日、大阪府庁)=共同
大阪府は24日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、休業要請に応じないパチンコ店6店の店舗名を公表した。府による休業要請に応じないため、より強い要請が必要と判断した。同法に基づく施設名公表は全国で初めて。4月末からのゴールデンウイークでの感染拡大を警戒し、外出自粛への協力を改めて呼びかける狙いがある。東京都など他の自治体も店名の公表に踏み切る方針を表明しており、各地に広がりそうだ。
「感染のまん延防止のために(店舗名を)公表する。府民には店舗に行かないよう協力をお願いする」。24日午後、府の吉村洋文知事は、記者団に述べた。
吉村氏は同日、店舗名を公表したパチンコ店6店のうち、いずれも大阪市平野区の丸昌会館とだるま屋の2店舗が休業の要請に応じる意向を示したと明らかにした。吉村氏は「感染拡大防止に協力いただき、感謝したい」と述べた。
大阪府によると、府内には約700のパチンコ店があり、府のコールセンターには117店舗について「休業していない」との情報が寄せられた。実際に現地を確認。営業中の店舗もあり、11店舗に22日に文書で休業を要請。5店舗が応じていた。府は、ほかのパチンコ店28店が休業要請に応じない場合は来週中にも施設名の公表に踏み切る方針。罰則はなく、すべてが休業に応じるかは不透明だ。
府はこれまで同法24条9項に基づき、商業施設などに休業に協力するよう要請してきた。同法は応じない場合、45条2項で行政指導としての要請を行い、同条4項で施設名を公表すると規定。今回の措置はこの規定に基づいたものだ。
それでも休業しない場合、知事は同条3項によって行政処分としての指示を出せる。指示をした場合も施設名を公表。吉村氏は「要請に応じなければ指示に移行するが、慎重な判断が必要。手続きがより一層厳格になる」と指摘する。
同法は知事による休業の要請や指示を可能にしながら、事業者への補償は定めていない。吉村氏はこの点について「欠陥法だ。問題意識はある」としたが、「府民の命を守る知事としては、法律にのっとって適切な対応をする」と説明した。
大阪府が特措法45条に基づき24日に休業要請し、公表したパチンコ店は次の通り。
丸昌会館(大阪市平野区)、だるま屋(同)、P.E.KING OF KINGS大和川店(堺市堺区)、HALULU(同北区)、ザ・チャンスα(同美原区)、ベガス1700枚方店(枚方市)。
堺市堺区の「P.E.KING OF KINGS大和川店」を運営する日本オカダエンタープライズ(大阪市西区)は報道機関向けにコメントを出し「営利追求のため営業を継続するわけではない」と強調した。
同社の正社員と派遣社員は計195人、アルバイトは468人に上り、パチンコ業が政府の資金繰り支援の対象から外されてきたことを挙げ「この状態で休業すると倒産し、従業員や取引先への責任を放棄することになりかねない」と理解を求めた。
コメントの最後には従業員の検温や消毒液の設置などの対応策が列挙され「『パチンコ屋』というイメージのみで判断しないで」「公表を受けて当社店舗に来ることは控えて」と記されていた。
一方、大阪市平野区の「丸昌会館」「だるま屋」は、25日から休業する意向を府に伝えた。
堺市北区のパチンコ店「HALULU」の運営会社の男性社長は24日、自宅前で取材に応じ「営業を続けていたことも知らなかった」と驚いた。「実質な経営からは身を引いていた」とし「休業要請は指示に近い。感染状況を踏まえると当然の措置だ。他の大多数の店が要請に応じる中、営業していたことには責任を感じる」と話した。
大阪府枚方市の「ベガス1700枚方店」を運営するダイハチ(愛知県瀬戸市)は「担当者が休み」として対応しなかった。堺市美原区の「ザ・チャンスα」の男性従業員は「取材にはお答えできない」と話した。〔共同〕
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