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 コロナ危機に乗じた強権発動の動きを、国際社会は見過ごしてはならない。香港の情勢をさらに注視する必要がある。

 昨年来、香港では大規模デモが続いていたが、いまは感染拡大を防ぐための集会制限などが行われている。激しい街頭行動は、いったん収束した。

 しかし、この機を利用するかのように当局は、民主派の人々への締めつけを強め始めた。

 先週には、昨年のデモへの関与を理由に、民主派の重鎮ら15人が一斉に逮捕された。当時のデモは許可を得ておらず、呼びかけや参加は条例違反に当たると、香港警察はいう。

 15人は、地元新聞社の創業者や現役議員ら著名人ばかりである。昨年の一連のデモでの逮捕者は7千人を超えていたが、半年以上も過ぎてから唐突に15人を逮捕するのはあまりにも不自然だ。民主派つぶしの狙いは明らかだろう。

 今年9月には立法会選挙が予定される。昨年の区議会選では民主派が圧勝しており、いまのうちにその勢いをそごうという露骨な威圧行為である。

 香港ではコロナ対策のため、3月末から公共の場で5人以上集まることが原則禁じられている。民主派は4人ずつで街頭を行進したり、オンラインゲーム上で抗議の声をあげたりしているが、大きな示威活動は控えている。

 この情勢下で香港政府が取り締まりを強めている背景には、北京の意向がある。香港駐在の中国政府高官は最近、香港の人々が繰り返し反対してきた「国家安全条例」を早く設けたいとの意向を表明し、地元社会を動揺させた。

 中国政府の出先機関が香港の議会などに対し、「監督権」をもっているとの主張も新たに始めた。香港基本法は「中央政府の各部門は香港の事務には干渉できない」と定めているが、強引にその解釈を変更しようとするものだ。

 これでは香港の「高度の自治」を認めた「一国二制度」は骨抜きになってしまう。

 昨年、あれだけ多くの香港人が警察の暴力や当局の圧力にもかかわらずデモに参加し、中国政府に明確な「ノー」を突きつけた意味を何だと考えているのか。自由を求める香港人たちの決意を見損なってはならない。

 15人の逮捕に対し、米国、英国、豪州といった国の政府からは、コロナ対策のさなかでも懸念の表明が相次いでいる。

 日本からも声をあげねばならない。民主と自由の価値を共有する国際社会はこんなときだからこそ、香港の人々の訴えに耳を澄まし、連帯の意を示すべきである。

連載社説

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