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特集

2020年4月23日(木)掲載

スウェーデン “緩い”独自のコロナ対策

新型コロナウイルスの感染拡大によって、各国が外出制限などの厳しい措置を続ける中で、独自の路線で注目されているのが北欧のスウェーデンだ。「50人以上の集会を禁止」しているほか、「公共の場では人と一定の距離を取ること」、「仕事はなるべく家で行うこと」などを呼びかけている。ただ「外出制限」は行っておらず、市民は比較的自由な生活を送っている。こうした“緩い”措置で感染拡大を抑え込めるのか。現状を取材した。

「個人」の意識で感染対策

スウェーデンの首都、ストックホルム。外出制限で静まりかえったほかの国々とは対照的に、ここでは大勢の市民が春の訪れを楽しんでいる。街の人に話を聞くと「友人と日光を浴びにきた。高齢者とは離れるようにしている」「消毒液を使うし、手を洗い、他の人と握手しないようにしているけど、それ以外は普通の生活だ」などと、それぞれが行っている対策について話してくれた。

レストランでは、政府の指示に従って人が密集するカウンター席の使用は禁止しているが、テーブル席はふだん通り営業を続けている。また、学校を休校にすれば社会的な影響が大きいとして、小中学校は通常どおり授業が続けられている。このようにスウェーデンでは、感染対策の多くは一人ひとりの意識に委ねられているのが実情だが、これまでのところ他の国のような爆発的な感染は起きていない。

左:アントン・ヘドマンさん 右:アマンダ・ベリバルさん

ストックホルムで一緒に暮らしているアントン・ヘドマンさんとアマンダ・ベリバルさん。同じ製薬会社で働いているが、政府の呼びかけを受けて、先月(3月)中旬から会社には行かず、自宅での仕事に切り替えた。ヘドマンさんは「外出しても人とは距離を空けるようにしている。大勢で集まることはしなくなった」とふだんの行動にも気を配るようにしているという。

国が主導して高福祉社会を実現してきたスウェーデンでは、政府に信頼を置く人が多いと言われている。ヘドマンさんたちも政府のやり方を支持していく考えを示している。「政府は、多くの情報に基づいて適切な決断をすると思う。国民はそれぞれが自分で責任を持たなければいけないと思う」(アントン・ヘドマンさん)



“緩い”対策に国内は

スウェーデン保健当局コロナ対策 責任者アンデッシュ・テグネル氏

スウェーデンの新型コロナウイルス対策の責任者は、個人の責任ある行動で感染の拡大を遅らせることが重要だと強調する。「感染が一気に広がらなければ、医療体制や社会のシステムを通常に近い形で運営できる。厳しいか緩いかが問題なのではなく、スウェーデンで効果があるのかどうかが問題なのだ」(スウェーデン保健当局コロナ対策 責任者アンデッシュ・テグネル氏)

ウプサラ大学ビョーン・オルセン教授

一方で、感染拡大は、予想以上のスピードで広がっており、政府の対策は不十分だという指摘も少なくない。「要請するだけではなく、厳しく命令すべきだ。パンデミック(世界的な大流行)という異常事態には、それなりの対応が必要だ」(ウプサラ大学ビョーン・オルセン教授)

スウェーデンでは、先月(3月)下旬から高齢者や移民のコミュニティなどで感染が広がり、感染者数は1万5000人(WHOまとめ4月22日現在)を超えた。同じ北欧で、厳しい対策を続けてきたノルウェーやデンマークが感染拡大を抑え込みつつあるなか、本当にこのままでよいのか、市民の中にも疑問を感じる人が出てきている。政府は、今の方針に固執はせず、必要な場合には規制を強めることもあり得ると強調している。前例のない事態への対応に、各国は今も、手探りで対応を続けていて、スウェーデンの独自の路線が正しかったのかどうかが明らかになるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

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