4/24 日経メディカルに下記の記事がありましたので垂れ流しします。
結果と考察の章だけでも価値があります。
途中、略していますが全部読みたい方は
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202004/565271.html
緊急寄稿◎再利用は正しい方法で
N95マスクのアルコールによる消毒は禁忌
2020/04/24
西村 秀一(国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター)、阪田総一郎((株)メディエアジャパン)
感染症
昨今のマスク不足を受けて、厚生労働省は医療現場におけるマスクの再利用(つまり消毒して使う)を許す事務連絡を出しました(事務連絡4月10日「N95マスクの例外的取り扱いについて」)。そこには過酸化水素水プラズマ滅菌器による滅菌、過酸化水素水滅菌器による滅菌、5枚のN95マスクを毎日取り換える──の3つの方法が示されています。
前者2つは、米国でメーカーと当局が検討した成績を踏まえているとされ、また5枚のマスクの方法は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がプラスチックやステンレス、紙の上での生存が72時間との報告に基づいていますが、一般的な医療機関がそのような特別な滅菌器を持つというのは非現実的と言わざるを得ません。
SARS-CoV-2の不活性化にアルコールが用いられていることから、普通の医療現場では、アルコールを使って消毒し再利用しているところもあると聞きます。そこで4月22日、我々は、医療従事者を守る観点から、空中浮遊粒子で運ばれるウイルスを想定し、マスクの消毒がその素材性能に及ぼす影響を調べてみました。
その結果は、衝撃的なもので、一日も早く医療現場の皆様にお伝えすべきものと判断しました。論文を書いている時間的猶予はありません。それでは多くの医療従事者が不要な感染リスクにさらされることになります。そこでこのたび日経メディカルのご厚意の下、私の責任でここに緊急報告させていただくことになりました。本稿をお読みになった方におかれましては、この情報について可及的速やかに医療現場の同僚の方々に周知浸透させていただければと思います。
~中省略~
2. 空中浮遊粒子の粒子としての通過阻止能の結果
全試験対象を通しての実験回数は1回(n=2の平均値)
ただし、N95-アルコールについては、3回の独立実験(n=2の平均値)
結論
1.試験の対象となったマスクは、アルコール消毒によって性能が劣化することが示された。とくにN95マスクにおける劣化は著しく、サージカルマスク以下の性能となった。
2.マスクは、20分間の強力なUV照射によっても性能のある程度の劣化が認められたが、アルコールによる劣化ほどではなかった。
3.以上は、空中浮遊活性インフルエンザウイルスならびに空中浮遊粒子自体の成績の間で矛盾ないものであった。
考察
臨床現場ではN95マスクはアルコール消毒を避けるべきである。もしどうしてもやらざるを得ないようであっても、軽めのUV消毒にとどめるべきかもしれない。
N95マスクでの劣化は、その粒子捕集メカニズムにあると考えられる。すなわち、粒子捕集の多くの部分が素材の目の細かさによっているのではなく、静電気等の分子間力によっているため、アルコールが静電気成分を弱めるなどの働きをしたものと考えられる。
一方で不織布は、その点で性能が分子間力に頼る割合が少なかったのかもしれない。
なお、ここにはデータを示していませんが、以前行った実験でN95マスクは、連続8時間の装着後でも、あるいは保存10年経過した古いものでも性能はほとんど新品と変わらなかったことを、我々は確認していることを参考までに付記します。
また、本実験は、空気チャンバー内空気を、マスク素材を介して人の安静時の呼吸スピードで採取したときの成績です。空中浮遊粒子のマスク素材の通過率は、吸引速度で変わり、スピードが高いほど通過しやすくなります。医療従事者が働いているときの呼吸スピードは、安静時の何倍にもなり、理論的にも実際の実験成績でも、粒子のマスク通過率は、ここで示した実験成績よりもさらに高くなります。マスクを着用したときは走らないでください。
以上です。
他人との接触を避けましょう。
どうか人混みにお出かけになりませんように。
手洗い絶対。
自分を、家族を守りましょう。