新型コロナ集団感染 北総育成園「年末から対策徹底していた」
2020年04月06日 福祉新聞編集部新型コロナウイルス感染症の集団発生が千葉県東庄町の障害者入所支援施設「北総育成園」で起き、4月2日午前11時までに利用者・職員など95人の感染が確認された。育成園は昨年12月から感染症予防に力を入れ、2月以降はさらに注意してきた。感染源が分からず、兆候もない中で起きた集団感染に育成園は戸惑いつつも、懸命に利用者支援を続けている。
社会福祉法人さざんか会が船橋市から指定管理を任されている育成園(定員75人)は、1974年に知的障害者入所施設として開所。現在、70人(平均年齢55歳)が暮らしており、日中は個々の希望・個性を生かした農耕・林産・園芸などの生産活動に従事している。
感染確認は、3月26日午後5時過ぎに発熱で休んでいた調理職員からの「PCR検査の結果が陽性だった」という電話が第一報だった。調理職員は1月末以降、自宅のある市と東庄町以外には一切外出していないという。
一報を受け育成園は、法人本部や船橋市、県に連絡。入所利用者70人、通所・短期利用者12人、職員67人、職員家族99人など合計299人の濃厚接触者を検査した結果、28日に58人の感染が確認され、国のクラスター対策班と県が合同で調査する事態になった。検査まで利用者・職員の大半に発熱などの症状がなかったという。
2日現在の感染者は95人(入所利用者49人、通所短期利用者5人、職員34人、職員家族等7人)。利用者は全員が居室(個室)で過ごし、感染した職員は自宅待機している。
利用者のケアは、クラスター班の医師の指示に基づいて行われている。感染者が多く、感染の有無で居住スペースを区分できないため、食事の提供時間を感染の有無で分けるなどしているという。
また、職員不足は、クラスター班や県から派遣される看護師などの協力を得て対応。厨房に支援職員を回したり、法人運営の9事業所から応援に来てもらったりしている。
育成園は、昨年12月以降、感染症予防に力を入れてきた。毎日2回のドアノブ・手すりの消毒、検温や手洗いの徹底、取引業者など入園時の消毒など厚生労働省の感染対策マニュアルに基づく対応を徹底してきた。また、2月以降は発熱などの症状がある職員は休ませ、保護者の面会、利用者の帰省・旅行も中止にしてきた。
ただ、マスクの着用は、異食や嫌がる利用者がおり、在庫不足も懸念されたため、100%徹底はできなかったという。
白樫久子副園長は「ご心配とご迷惑をかけて申しわけない。昨年末からできる限りの感染予防対策を進めてきた。国の医師も厨房職員が感染源ではなく、不明だと話している。なぜ集団感染が起きたか分からないが、今は国などの指導の下、利用者や職員のためにできるだけのことをしたい」と話している。
入所施設で拡大 サービス再開の事業所も
本紙のまとめでは、4月2日午前11時までに利用者・職員が感染した福祉施設は、13都道府県25カ所に及ぶ。
新たに感染者が確認されたのは、北総育成園のほか、群馬県玉村町の訪問介護・通所介護事業所、茨城県取手市の介護老人保健施設「アレーテル・つくば」、同県神栖市の障害者福祉サービス事業所「ハミングハウス」、千葉市の「ほのぼのほいくえん」、東京都品川区の区立保育園、富山市の東山保育園の6施設。アレーテル・つくばと北総育成園は、入所施設では初めての感染確認となった。
新たな感染が起きる一方、感染発生でサービスを中止していた神戸市の認定こども園「聖ニコラス天使園」と、仁科整形外科デイケアが30日にサービスを再開。クラスター(小規模患者集団)が起きた名古屋市の二つの通所介護事業所も再開した。