科学のお話
2012年1月8日(日)
「食べられません」の化学
お菓子や海苔などのパックの中には,よく「食べられません」と書いてある小さな袋が入っていますね。
これは,たいてい「乾燥剤(かんそうざい)」か「脱酸素剤(だつさんそざい)」のいずれかです。
これらの「食べられません」について調べてみました。
乾燥剤は写真のような透明なビーズ状のものが入ったものがよく使われています。
これはシリカゲルといってケイ素を主成分とした乾燥剤です。多孔質構造(たこうしつこうぞう),つまりとても小さな穴がたくさん開いたつくりをしていて,ここに水分が吸われます。
よく見ると,青い粒が混じっていますが,これは塩化コバルトという物質をまぜたもので,青いときは水分を吸っていない状態を示しており,水分を多く吸って乾燥剤のはたらきがなくなると,うすい桃色に変化して知らせてくれます。
中学校の理科で,水分があるかどうか調べる「塩化コバルト紙」というのを使ったことがある人もいると思いますが,あれと同じです。
シリカゲルは乾燥剤としてのはたらきがなくなっても,加熱して水分を追い出してやると,再びはたらきをとりもどします。このとき,うす桃色のものは青色に戻ります。
脱酸素剤は,食品が入った容器や袋の中の酸素を吸って,食品が傷んだりカビや細菌が繁殖したりするのを防ぐ目的で使われます。
その多くに使われているのが鉄粉です。だから,未使用の脱酸素剤が入った袋は磁石にくっつくものが多いです。
では,なぜ鉄粉が酸素を吸収するのでしょうか。鉄は空気中の酸素と結びついて酸化鉄になります。簡単にいうとさびるということです。
この鉄がさびる性質を使って酸素を取り除いているのです。鉄粉だけではさびる速度が遅いので,食塩など、さびる速度を速める物質が混ぜられています。
はたらきが無くなった脱酸素剤の袋を開けてみると,鉄粉がさびた茶色い粉が出てきました。まだ,さびきっていない鉄が残っていたらしく,磁石にくっつくものもありました。
鉄粉がさびる性質を利用するといえば,使い捨てカイロを思い出す人もいるかと思いますが,脱酸素剤と,使い捨てカイロの原理は同じです。だから,脱酸素剤も酸素を吸いこんでいるときに熱が出ます。
反対に,密閉した容器に酸素と触れさせたくない物と一緒に,ビニール袋から出した使い捨てカイロを入れると,脱酸素剤と同じ効果があるようです。こうしておくと,白い綿のシャツなどが黄ばむのを防いだり,カメラのレンズにカビがつくのを抑えたりできるようです。でも,この時には発生する熱に十分注意しなければならず,あまりおすすめできませんが。
私たちの生活のまわりには,いろんな化学変化を利用したものがたくさんあって,安全や衛生に役立ち,より快適に暮らせるようになっていますね。