新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都がスーパーなどでの買い物回数を減らす要請を行った。「三密」状態の回避が狙いだ。やむを得ぬ措置だが消費者側により節度ある利用を求めたい。
小池百合子都知事が発表した要請は買い物を三日に一回程度に抑制することが軸だ。事業者へは買い物かごを減らすほか、高齢者や妊婦、障害者の専用時間を設けることも求めた。政府の専門家会議が店内感染に警鐘を鳴らしており要請は認めざるを得ない。
長引く外出自粛の影響で家族連れで店に入るといったケースが激増している。
それに伴い、店内で「子どもが走り回る」「品薄に過剰なクレームをつける」「マスクを着用しない」「手に取った品物を繰り返し棚に戻す」「指につばをつけお札を数える」などが、従業員にとって懸念のある事例として浮かび上がっている。
感染の危険を増大させるだけでなく、従業員に大きな心理的負担をかける行為だ。消費者は、こうした問題行為を慎むよう強い自覚を持つべきだ。
都の要請が実現されても課題は残る。小さな子どもを持つ一人親の場合、一緒に入店するしかない。一時預かり所を設けるなど行政主導の支援がほしい。
回数抑制で買い占めが加速したり客の流れ次第では行列ができる可能性がある。専用時間の設定も難題だ。要請後、トラブルの恐れは強まるだろう。一方、店側は離職者が増えて人手不足にも苦しんでおり、対応に人員を割けないのが実情だ。
警備会社と連携したり、アルバイト減で困る学生を雇い、仕事を手伝ってもらうなどの工夫が求められる。その際、自治体は一部費用の補助を検討すべきだろう。
小売りの現場で働く人々も高いリスクの中で懸命に仕事を続け、社会に多大な貢献をしている。医療従事者同様に感染から守る必要がある。ただ行政の強い指導の下で規制を実施することには共感できない。
今後、スーパーで大規模な感染が起きた場合、その店舗は長期間、閉鎖を余儀なくされる。それは地域の生活拠点を一時的にせよ失うことでもある。
スーパーなど生活必需品を手に入れる店舗での身勝手な振る舞いはより許されないはずだ。そうした行動の結果が、消費者に跳ね返ってくる恐れがあることを自戒も込めて強調したい。
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