埼玉県で自宅療養中だった新型コロナウイルスの患者が亡くなった。今月16日に感染が確認されたが、軽症ということで入院待ちの状態だったという。
大野元裕知事は経緯を検証すると表明した。新しい感染症のため分からないことも多い。診断の当否、見守りのあり方などを丁寧に調査・公表し、今後の対策にいかさねばならない。
入院治療を要する患者のベッドを確保するため、症状が改善した人をホテルなどの施設に移したり、自宅で療養してもらったりすることを、多くの自治体は進めてきた。厚生労働省もそれを前提に、定期的な健康観察とともに、症状が悪化した際にはすみやかに病院に搬送できる態勢の整備を求めていた。
だが看護師らが常駐する施設での宿泊療養に比べ、自宅だとおのずと目が届きにくくなる。専門家会議は「自宅療養には様々な困難が予想される場合も多い」と分析・提言。家庭内での感染が報告されている状況を踏まえ、加藤勝信厚労相はきのう、今後は宿泊療養を基本とする方針を打ち出した。
適切な判断といえるが、施設の確保事情など自治体間でばらつきもあろう。業界の協力を仰ぎ、埼玉のような例が起きないよう準備を急いでほしい。
むろん、宿泊療養であれば万全という話ではない。重症化するリスクがないかを慎重に見極め、きめ細かく病状を把握し続けることが求められる。
健康観察には、経験豊富な地域の医療関係者の協力が欠かせない。地元の医師会が交代で滞在し、検査のための検体採取を始めたところもある。保健所の負担を少しでも減らすべく、連携を強化してもらいたい。
いまは感染者が少ない地域でも、ひとたび集団感染が起きれば医療は逼迫(ひっぱく)する。その認識をもって臨むことが大切だ。
病院外での療養を円滑に進める前提となるのが、感染者の理解と協力だ。軽症という言葉のイメージと違い、発熱や息苦しさに苦しみ、不安を抱く人も少なくない。SNSを利用する自治体もあるが、電話でいつでも相談し、助言を受けられる仕組みが必要だ。患者の要望や提案にも耳を傾け、運用面の改善・充実に役立ててはどうか。
家庭に幼児がいるなどの理由で、自宅療養を選ばざるを得ない患者もいるだろう。頼れる先もなく、体調と相談しながら家事や育児をせざるを得ないとの嘆きも聞こえてくる。
手をこまぬいているわけにはいかない。海外では買い物代行のボランティア活動などが広がる。そんな例も参考にしながら、感染者を孤立させない工夫を考え、共有していきたい。
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