この政権は沖縄を、そしてそこで暮らす人々を、いったい何だと思っているのか。
政府はおととい、辺野古の埋め立て工事の設計変更を沖縄県に申請した。新型コロナの感染者が急増し、県が独自に緊急事態を宣言した翌日である。
安倍首相は先週17日の記者会見で、こう語っていた。
「ウイルスとの闘いを乗り切るためには、何よりも、国民の皆様との一体感が大切です」
だが自らが沖縄でやっているのは、対立と分断を深め、県民の生命と健康を守ることに全力を傾注しなければならない地元自治体に、無用の負荷と圧力をかけるという信じ難い行いだ。玉城デニー知事が「現下の状況を全く理解していない」と非難したのは当然である。
設計変更は、埋め立て海域に広がる軟弱地盤に対応するためだ。政府は16年までの調査で存在を察知しながら、公にしないまま18年末に土砂投入を開始。今回の申請にあたっても、地盤の様子を詳しく調べ直すべきだという多くの声に耳を貸さず、防衛省内のお手盛りの有識者会議などで議論したと言って、強行突破をもくろんでいる。
さらに驚くのは、新たに7万本を超す杭を水深70メートルの海底に打ち込む大工事をしようというのに、環境影響評価(アセスメント)の必要はないとの立場をとり続けていることだ。ここでも第三者の意見を踏まえたとして、「環境への影響は現在されている評価と同程度か、それ以下」だと主張する。
辺野古の住民たちが埋め立てに関して別途起こしていた裁判で、那覇地裁は「(改めて)環境アセスが実施されるべきだ」と述べている。主要な争点に対する判断ではないが、これこそ理にかなう見解だ。
かねて指摘してきたように辺野古移設の破綻(はたん)は明らかだ。
反対の民意が何度となく示されているうえ、米軍普天間飛行場の早期返還のための事業のはずが、完了までになお12年の歳月がかかるという。総工費は政府試算でも当初想定の2・7倍の9300億円にのぼり、将来の地盤沈下対策などを考えるとさらなる膨張は必至だ。
日本の財政事情はと言えば、ただでさえ厳しいところにコロナ禍が重なる。だが政治家も官僚も「辺野古が唯一の解決策」と繰り返すだけで、完全な思考停止状態に陥っている。
6月には県議選が予定される。4月中の変更申請は「冷却期間」を少しでも長くとり、選挙への影響を抑えるための策ともいわれる。ここにも自己中心・県民不在の姿勢があらわだ。
安倍政権にとって沖縄とは何なのか。いま一度問う。
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