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【社説】

香港民主派逮捕 コロナ禍隠れみのか

 香港警察は十八日、民主派リーダーら十五人を一斉逮捕した。中国政府の香港締め付け策を受けた措置であろうが、世界がコロナ禍に苦しむ状況を隠れみのにしたような強硬策は強く非難されよう。

 逮捕されたのは、かつて民主化運動を率いた重鎮で元民主党主席の李柱銘氏や、鋭い中国批判の論陣を張る香港紙・リンゴ日報の創業者である黎(れい)智英氏ら。天安門事件の追悼活動を続ける香港立法会(議会)の議員らも逮捕された。

 香港では昨年六月に逃亡犯条例改正反対をきっかけに民主化要求デモが発生。逮捕容疑は昨年の一連のデモのうち、当局が許可しなかった十月のデモに李氏らが参加したことだという。

 中国側には、デモ発生から一周年となるのを前に、民主派に打撃を与えておこうとの政治的意図があるのは疑いない。

 ポンペオ米国務長官は逮捕について、ツイッターで「法執行の政治化は、表現や結社、平和的な集会の自由という普遍的な価値に反している」と批判した。

 中国共産党は昨年十月の重要会議で、香港に「全面的統治権を行使する」と、締め付け強化方針を決めた。一斉逮捕は、中国指導部が順守を口にはしてきた香港の「一国二制度」を有名無実化する露骨な一歩になりかねない。

 すでに、中国政府は一月、香港駐在の香港連絡弁公室トップを「デモ対応を誤った」(中国筋)として更迭し、全国人民代表大会(国会に相当)から副主任級の大物を後任に送り込んでいる。

 新型コロナ対策に世界の目が向いているのを奇貨として、中国が民主化デモの完全鎮圧にカジを切ったと批判されても仕方がない。

 九月には立法会議員選挙が予定される。デモが燃え盛っていた昨年秋の区議選では、民主派が八割超の議席数を獲得し、親中派に歴史的な圧勝をおさめた。

 もしも、こうした結果が立法会選で再現されるなら、国際社会は香港の民意は民主化にあるとして、その動きを強烈に後押しするだろう。そうした“悪夢”に中国が先手を打った逮捕に映る。

 一方、香港小売管理協会が公表した三月末から四月中旬までの業界調査によると、新型コロナの影響で小売業者の96%が赤字を計上したという。国際貿易都市香港は中国にとって長らく金の卵だった。経済が疲弊した香港への政治的抑圧は、自ら金の卵を潰(つぶ)す結末にもなると知るべきであろう。

 

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