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【社説】

原油価マイナス 生活への還元を全力で

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、原油価格が史上初のマイナスとなった。世界経済が急激に悪化し、需要が極端に落ち込んだためだ。価格低下を暮らしに還元できるよう工夫を求めたい。

 マイナスとなったのは、代表的指標である米国産WTI原油の五月分先物価格だ。WTIの価格暴落に伴い、東京やロンドン、ドバイなど主要市場でも下落が止まらない状態で当面、回復は見込めないだろう。

 現在、原油にはほとんど買い手がつかず、在庫が積み上がって貯蔵タンクは満杯になっている。貯蔵にも高コストがかかり、生産側は、一定の金額を払ってでも売らざるを得ない状況に追い込まれている。

 国の経済を原油収入に頼っている産油国からの投資資金はすでに細り始めている。原油を中心としたエネルギー関連産業には世界中から常態的に融資が集まっている。このため金融機関の経営への影響を不安視する声もある。こうした負の連鎖が株式など世界的な金融市場の混乱に拍車をかけているとみていい。

 サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)とロシアは先週、価格安定化に向け過去最大の減産を合意した。だが市場は合意をほぼ無視した格好だ。シェールオイルを生産する米国を含む産油国には、減産量を一層増やした上で、合意を確実に実施するよう強く要請したい。

 国内では原油価格下落にもかかわらず、大幅なガソリン値下げにはつながらないとの指摘が多い。石油会社がガソリンを売る場合、消費者が負担する消費税分を除いても価格の六割弱が税金となる。会社側は残りの部分で価格調整し利潤を追求しなければならず、大幅な価格引き下げは難しい。

 ここはガソリンにかかる揮発油税などについて期間限定の減税を検討してはどうか。減税により価格が大きく下がれば、消費者向け流通や企業の部品取引などのコスト減につながる。その結果、小売店や中小製造業者にも恩恵が見込めるはずだ。

 政府のデータによると二〇一六年のエネルギー需要のうち44%が石油だ。原油下落は電力会社にコスト減をもたらすだろう。暮らしが逼迫(ひっぱく)する中、電力料金の値下げも検討すべきだ。

 コロナ禍はマネーの流れを大きく変え、そのひずみが波状的に生活へ打撃を与えている。波のパワーを巧みにとらえ、暮らし防衛に生かす知恵を期待したい。

 

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