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【社説】

コロナと避難所 雑魚寝の解消、今こそ

 コロナ禍の中、地震や水害など避難が必要な災害が起きたら。その想定のもと国や地方自治体は備えを分厚くすることが急務だ。雑魚寝が解消できていない避難所の現状を変える契機にもしたい。

 千葉県鴨川市は十三日、大雨で土砂災害の危険が高まっているとして、三十四世帯八十人に避難勧告を出し、三カ所で避難所を設置した。入り口でマスクの配布や検温、手の消毒ができる準備をし、保健師が待機した。避難所は換気をし、二メートル以上の距離を保ってもらう準備もした。実際に避難した人はいなかった。

 十八日には関東地方で大雨や洪水警報が出た。新型コロナウイルスの感染拡大を防止しながら、災害から命を守る手だてを早急に考え、準備を進める必要がある。

 国は今月、避難所が過密になることを防ぐため、可能な限り多くの避難所を設置していくことや、親戚や友人宅への避難も選択肢としてもらうよう住民に周知することなどを、地方自治体に要請している。

 避難所での雑魚寝解消のための段ボールベッドの考案者で避難所・避難生活学会理事の水谷嘉浩さん(49)によると「避難所でノロウイルスやインフルの感染が広がる時がある。対策は十分ではない」という。

 感染症対策の基盤は人としての健全な生活だ。バランスの取れた食事、十分な睡眠、衛生的なトイレ、適切な室温管理…。多くの避難所ではそれができていない。

 内閣府の避難所運営ガイドラインには、体調維持のため「継続的な避難者には簡易ベッドの導入を目指す」とある。

 プライバシー確保を目的に一部で導入されている間仕切りも、人との距離を保つという感染防止の観点からも意味があるだろう。

 人が接触しないことを求められている環境下で、ボランティアなど支える人たちの体制を築けるのかなど、課題は多い。現状ではマスクや消毒液の備蓄を手厚くすることにも困難が付きまとう。しかし新型コロナ対策を進めることは、人の尊厳を守るという観点からの改善にもつながる。

 国は災害時に自治体の要望がなくても必要と見込まれるものを送る「プッシュ型支援」で、新型コロナ対策も含めて自治体を支える必要がある。地方自治体同士の連携も強めたい。

 住民の側も災害情報にはいつも以上に敏感となり、早めの判断をする心構えが求められるだろう。

 

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