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 新型コロナウイルスの患者の急増とともに、院内感染の発生が毎日のように起きている。感染症対策の設備や要員がそろう指定医療機関も例外でない。

 保健所を含む医療の最前線は感染者への当面の対応で多忙を極めるが、原因の解明を先送りしていい問題ではない。結果を共有することが、全国の医療関係者の安全、そして国民の健康を守ることにつながる。

 感染防護に関する国の通知や学会の指針は守られていたか。そもそも、それらは現状に即した内容になっているか。病院任せにせず、第三者の視点からの調査と検討が不可欠だ。

 国、自治体、学会が協力してチームをつくり、あわせて外国の事例なども収集・公開して、各医療機関の今後の対策にいかしてもらってはどうか。

 実際に意外な落とし穴が見つかっている。例えば3月下旬に院内感染が起きた大分県の病院では、厚生労働省クラスター対策班の調べで、スタッフが共用するタブレットの端末やパソコン、マウスを介した接触感染の可能性が浮上。機器を使う前後の消毒や手洗いの徹底の重要性が、改めて確認された。

 現場では防護服やマスクなどの装備不足が一層深刻になっている。代わりに雨がっぱをかぶったり、クリアファイルを加工して顔を覆ったりするなど、涙ぐましい試みがされている。効果を確認しつつ、ノウハウを共有することも一考に値する。

 何より、代替品に頼らなくて済む環境を早くつくらなければならない。安倍首相は17日の会見で、供給不足の状態が改善されないことを謝罪し、増産に努めると約束した。最重要課題と位置づけ、政府の総力を挙げて取り組んでほしい。

 院内感染が起きれば影響は多方面に及ぶ。多くのスタッフが自宅待機となり、診療の休止や縮小を強いられる。隣接する医療機関の負担が増え、そこで働く人の疲弊を招き、院内感染リスクが高まる悪循環に陥りかねない。別の病気やけがで患者を受け入れる際にも、感染が疑われる場合はすぐに検査ができるようにして、危険の芽を早期に摘み取る必要がある。

 結果として院内感染が起きてしまった病院を孤立させないことも大切だ。患者の転院などに広域で協力してもらいたい。

 この先、検査や診察でより多くの病院、診療所の協力が必要になる。なかには不安のある医療従事者もいるだろう。また、感染者の搬送などで民間事業者の手助けを仰ぐ自治体もある。防護服の正しい着脱の仕方をはじめとして、研修の機会を確保し、専門家がバックアップすることが欠かせない。

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