先月、請け負っていた12日分の仕事がすべてキャンセルになった諸江翔大朗さんです。
大学を卒業後、舞台俳優を目指してきた諸江さん。舞台の大道具を作る仕事をフリーランスとして請け負い、生計を立ててきました。
諸江翔大朗さん
「中止になっちゃっているので、全然(仕事に)入れず。どうやって過ごそうかなみたいな。」
外出自粛要請をきっかけに次々と仕事の中止が決まり、収入は激減。契約書を取り交わさず、口約束で請け負っていた諸江さん。キャンセル料などは一切 受け取れませんでした。
諸江翔大朗さん
「それまでに立てていた予定、家賃だとか支払うお金っていうのは、収入が全くないっていう状態になるので、なかなか厳しいですよね。」
少しでも稼ぎを得たいと頼っているのが、スマホアプリでやり取りする料理の配達代行の仕事です。飲食店がアプリを介して配達を依頼。対応できる配達員が、その仕事を請け負います。配達員は、1回ごとに仕事を請け負う個人事業主と見なされています。運営会社は飲食店と配達員から手数料を受け取るという仕組みです。
アプリの運営会社のCEOダラ・コスロシャヒ氏。
これまでにない働き方を提供したいと話していました。
ウーバー ダラ・コスロシャヒCEO
「アプリを使って、いつでも好きなときに働くことができます。配達員はアプリのユーザーで、私たちと雇用関係はありません。」
諸江翔大朗さん
「あっ、鳴りましたね。取ります。」
外出自粛などの影響で、需要が増えている料理の配達代行。1回の配達報酬は300円から500円ほど。配達の距離や天候などによって変動します。1日9時間働いて、収入が6000円に満たない日もあります。
(配達先にて)
諸江翔大朗さん
「玄関先に置きましたら、ノックして去りますので。」
諸江さんの周りには、配達代行の収入に頼る人が増えています。
「聞いてくださいよ。僕、ホテルのレストランの仕事なくなっちゃったんですよ。コロナの影響ですね。」
「つらー。」
諸江翔大朗さん
「やっても確実に、この稼ぎがあるっていう保証はない。これを2か月、3か月ずっとやれるかって言われると、僕どうしたらいいんだって頭をよぎります。」
仕事を失ったフリーランス。直面しているのが休業補償の問題です。
都内在住の加奈子さんです。
いまはアプリを通じて、単発でベビーシッターの仕事を請け負っています。
加奈子さん
「お部屋で絵本の読み聞かせをしてくださいっていう、ご夫婦が在宅ワークの方のシッターです。」
加奈子さんの本業はスポーツインストラクターです。5つのジムと契約しています。しかし、緊急事態宣言が出された後、すべての仕事がキャンセルとなりました。
ジムとの間で曜日と時間を取り決め、働いていた加奈子さん。ジムが営業休止を決めた場合には、何らかの補償があると考えていました。しかし、契約書を読み返すと、フリーランスには休業補償がまったくないことを知りました。
加奈子さん
「フリーランスが弱いところだったなって、今すごい痛感しているんですけど。」
企業などで雇用された人が受けられる雇用保険や労災保険といった社会保障は、フリーランスには適用されないことがほとんどです。その場合、仕事を打ち切られたり、けがや病気をしても支援を受けられないのです。
加奈子さん
「一応、雇ってもらっているっていう認識があります、私の中で。『あ、補償ないんだ』っていう驚きと、残念な気持ちになりました。」
今回 思い知らされた、みずからの立場の弱さ。戸惑う声が広がっています。
ヨガインストラクター
「今回のようなことがあったときに、完全に切り捨てられちゃうのねって。」
「私たちインストラクターがいないと成り立たない会社なのに、運命共同体とみていないような扱い。(仕事に)すごく誇りを持っているんですけど、認められないんだなって実感させられました。」