エ・ランテルにおける魔導王の別宅、つまりモモンが間借りしている屋敷に、
冒険者組合の組合長アインザックが訪ねてきていた。
冒険者組合が魔導国管理下に置かれる事を伝えるためだ。
パンドラがナザリックに帰還中のため、対応はモモンの格好をしたアインズがしている。
「モモン君、君ももう聞いていると思うが、冒険者組合は魔導国に組み込まれたよ」
「ええ、内容は把握しています、私も悪くない案だと思いますよ。できる事なら私も未知を探しに旅に出たいほどです」
話を聞いてみるとアインザックは魔導国に組み込まれる事を肯定的にとらえ、アインズと共同歩調をとることに満足していた。それをモモンの耳で聞けただけでアインズは満足していた。
そんな和やかな空気の中、その場を凍りつかせる出来事が起きる。
「たっだいまっ、戻りましたー!」
もう1人、漆黒の全身甲冑を装着したモモンが現れたからだ…無駄にハイテンションで。
「はぁ!?モモン君が2人居るだと…」
「く、組合長、少しお待ちください」
アインザックが驚き思考停止している間に、アインズが2人目のモモンを連れて壁際に追いやり、壁ドンをする。そしてヒソヒソ話でこれからどうするかの対応を話し出した。
「壁ドーン!」
「おい、パンドラズ・アクター!もう少しタイミングを見計らって帰ろう、な!」
「申し訳ありません―――父上ッ!」 (敬礼をする)
「アイム・ノット・ユア・ファーザー」
「ノーーーーーーーーーーーーッ!」
「今の俺は何だ!この状況をどう切り抜ける」
今のアインズはモモンだったと言う事を思い出し、パンドラは手をポンと叩いて納得する。
たしかに漆黒の英雄モモンが2人居るってことは大問題だろう。
「モモン君、いやどっちが本物のモモン君なんだ…」
狼狽するアインザックに困惑するアインズ。そんな中、偽モモンこと、パンドラが兜を外す。
中からは美しい黒髪を、フワリとかきあげた美姫ナーベが姿を現した。
「あぁ、すいません組合長、偽の鎧を着て街の巡回をしていました。
モモン様が姿を見せるだけでエ・ランテルの民は安心しますからね」
上手い言い訳にアインズはひっそりサムズアップ、
アインザックが死角になった所でパンドラもサムズアップで返す、似た物親子だ。
口調が普通だがこれは練習の成果だといっても問題ないだろう。
「なるほど、最近ナーべ穣を見ないと思ったが、納得だ」
「一応魔導王からは許可を得ていますが、偽物が出るのはイメージが悪いですからその…」
「もちろんここだけの話にしておくよ、必要性は理解できる」
アインズは安堵した、万が一に備えてパンドラにナーベの外見を記録しておいて正解だったな。
ナーベの人間を人間と思っていない口調以外は完璧に再現されていた。
「ただいま戻りました、アインズ様、パンドラ様…
あぁ…居たのですか下等生物(トゲアリトゲナシトゲトゲ)」
そして空気を読まない2人目の侵入者、ナーベラル・ガンマが堂々と現れた…
アインズ「…カメラ!カメラ止めて!?」