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【社説】

コロナ治療薬 慎重に、しかし着実に

 新型コロナウイルスに対する治療薬として、日本の「アビガン」に期待が集まっている。国際貢献になる可能性もある。ただ薬には副作用がつきものだ。慎重に、しかし着実に開発を進めたい。

 コロナウイルスに対する特効薬は存在しない。初めから新しく開発するのには、少なくとも十年の時間がかかるため、既存の薬の転用を試みている。

 今の一番手は、インフルエンザの薬として開発されたアビガンと、エボラ出血熱の薬として米国で開発されたレムデシビルだ。政府はアビガンの増産支援や備蓄の増強、各国への無償供与の方針を示している。

 アビガンはウイルス遺伝子の複製を妨げることで、増殖を抑制する。ただ動物実験で、胎児に奇形を起こす性質があったことから、通常のインフルエンザ薬としては使われず、新型流行時に備えた備蓄薬とされている。コロナウイルスについて、愛知県の藤田医科大などで臨床研究が始まった。開発元の富士フイルム富山化学も臨床試験を始めており、六月末には結果が出る。その後、承認申請と審査を経て、一般の医療機関でも使えるようになる。

 レムデシビルは、米国で行われた小規模な試験で、すでに有効性が認められている。

 他にも候補薬はたくさん出現している。ぜんそく治療に用いるステロイドの一種とか、膵炎(すいえん)の薬などだ。ノーベル賞を受賞した大村智(さとし)さんが発見した抗寄生虫薬のイベルメクチンも、実験室レベルで効果を示したという。

 抗ウイルス薬は、多くの場合、細菌を殺す抗生物質のように劇的な作用が期待できるわけではなく、ウイルスを撃退する主力は、それぞれの人に備わった免疫である。薬はそれを助ける役割だ。これらの薬の有効性と安全性、最適な投与量などがきちんと確認され、安心して使えるまでには、いくら急いでも半年から一年程度はかかるだろう。

 薬があると聞けば飛び付きたくなるのは人情だが、臨床試験の結果をよく見極めなくてはならない。誤った情報に流されないようにしたい。薬の飲み合わせや、個人の体質などから、ときに思いがけない副作用が起きることがあり、細心の注意が必要だ。

 とはいえ、何らかの治療薬があれば、人々は希望を持つことができる。コロナウイルスに苦しむ人々のために、確かな薬がなるべく早く届くことを願いたい。

 

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