千五百七十六年 十月中旬
「今回の武田攻めについては上様からのお許しが出ているから、手加減無しで暴れて良いけど……程々にね?」
「恨みを残すようなヘマしないから安心しろって」
不穏過ぎる物言いに安心できる要素がむしろ減ったのだが、信長から直々に好きにさせよとの指示があったこともあって黙認することにした。
長可については言うべきことは伝えたため、次に高虎の方へと顔を向ける。
「藤堂君は東国攻めではなく、西側の守りに回って貰うことになったけれど、何か要望とかあるかな?」
「特にはございません。何しろ面白い
「ああ、
「事前に理屈だけは足満殿より座学にてみっちりと仕込んで頂きましたので、使うだけなら問題はありませぬ。一から作れと言われればまた違うのでしょうが」
「うーん、ニッケルを処理できる炉は尾張にしかないからね。しかも鉱石自体が日ノ本では採れないから輸入している分高くつくんだよねえ……」
「足満殿が語られた電気を使う時代の到来が待ち遠しく思います」
東国攻めという華々しい戦果をあげる機会に臨めないというのに、高虎には気落ちした素振りすら見えなかった。
西国側に配置されるということは貧乏くじにも等しいのだが、とある発明品の存在が彼を手柄などという些事から解放してしまっていた。
今回高虎に預けられた装備は、尾張に残る静子の許にも同型のものが一つ配備され、前線に赴く信忠の許にも一つ配備されることになっている。
可動部は少ないのだが部品の損耗率が高いため、静子の力を以てしても現在の処三機を稼働させるのが精いっぱいというのが現状だ。
話の流れに足満が出た事で、静子はそちらに目を向ける。
「そうそう足満おじさんは少し別行動になるんだけれど、
「佐渡か……なるほど、承知した」
「嫌な役回りを押し付けてごめんね」
佐渡島は現代の新潟県西部に位置する離島である。日本有数の埋蔵量を誇る金鉱山の存在で有名だが、史上に於いて金鉱脈が発見されたのは四半世紀ほど先の1601年の事である。
『佐渡金山』の名で知られるが、実は金鉱山・銀鉱山の総称であり、中でも相川金銀山の規模が大きく、単純に佐渡金山と言った場合は相川金銀山を指すことが多い。
歴史上でも江戸幕府の重要な財源として重宝され、最盛期には一年で金を四百キロ、銀を37トンも産出したという世界でも有数の鉱山である。
相川金銀山には劣るが、外にも鶴子銀山や新穂銀山、西三川砂金山など多くの有望な鉱山が眠っている。
史実に於いて上杉景勝が1589年に滅ぼすまで、本間氏の支配下に置かれていたことから足満は本間氏を歴史に先んじて滅ぼすことになる。
「静子が気にする必要はない。織田の覇道には必要なのだろう」
因みに佐渡島に関しては今昔物語集にも金に関する話が登場することから、当時でも金が産出することは知られている。それほど表層に於いてすら金を含んだ鉱石が露頭しているのだが、文字通り氷山の一角でしかないと言う事は知られていない。
信長は随分と前に静子から献上されて以来、いくさの戦略を練る際に日本地図を読み込んでいたのだが、佐渡に多数の金山が記されていることを発見する。
これについて静子に訊ね、佐渡島に巨大な金山が眠っている事を知った信長は早速朝廷に図って佐渡島に関する支配権を手に入れた。
しかし鎌倉時代から佐渡島を支配し続けている本間氏が素直に応じるはずもなく、信長は別の有力な領地への
更にはこの打診が本間氏を刺激したのか、表立っては口にしないものの織田への敵対を決意した様子すらあった。
この足満の任務については信長から直接の命令があり、信長からの書状には建前上の任務として本間氏との交渉に足満を抜擢するとあった。
妙なところで察しの良い静子は、そこに謀略の臭いを感じ取った。そして彼女が勘付いた通り、足満は最初から交渉などするつもりがない。
信長にとって良い条件での提案を蹴った時点で本間氏は滅ぼすべき敵となったのだ。
「あと真田さんは武田攻めに加わって貰います。それが終われば北条に回って下さい、才蔵さんは最初から北条へお願いしますね。あ、真田さんには武田領で噂を流して貰います」
「承知しました。して如何なる噂を流しましょう?」
「甲斐の産品を現地の値段の三倍で買うと言う内容を密かに行き渡らせて欲しいの」
「なるほど。武田が気付いた頃には半数近くが流出しているという状況を作りだすのですな? 慌てて物資を買い集めようにも領内には物がない。買い戻そうにも三倍以上の値を出す必要がある。武田はじり貧ですな」
「目端の利く商人なら潮目を感じ取って商品を売ったら、その足で武田領から逃げ出すよな。肥えた商人から私財を巻き上げることも出来ず、外部から買うには相場の三倍以上の値が掛かるか。相変わらずえげつない事を考えるな、静子は」
「武器をぶつけ合うだけがいくさじゃないのよ。戦端が開かれる前に有利な状況を作るための作戦だと言って欲しいね」
長可の言葉に静子は反論した。彼女は命を惜しんで戦場に立たなくなったわけではない。極論をするなら静子の戦場に於ける価値は、程度の差はあれ他の誰かで代替可能なのだ。
しかし、遥か未来を見据えて国作りを支援し続けられる
それゆえか静子は直接戦闘以外の支援全般に注力するようになっている。武具の製造・整備は勿論、食料や燃料、衣類に医療品、更には兵士たちの定期健診やカウンセリングによるメンタルケアなども取り入れる程だ。
また商業及び流通の総元締め的な立場を活かし、あらゆる方面から常に情報収集を行っている。静子のコネクションは朝廷をはじめ、関西一円の商業圏にも絶大な影響力を持っている。
有力な武将である明智光秀や羽柴秀吉にも大きな貸しがあるため、様々な派閥の武家社会にもかなり融通が利く。
更には配下に真田昌幸の率いる間者組織があるため、個人レベルの噂に至るまで網羅される戦国時代最高の情報通と言えるだろう。
「ふと思ったんだけれど、私が全く戦場に姿を見せない事を敵方はどう思っているんだろうね?」
「御用商人の『
死亡説という台詞が出た時点で才蔵が眉を
それでいながらその影響力は絶大だ。戦国最強と
織田家が東国に対して攻勢に出ることはいずれ人々の知るところになるだろうが、その時になっても静子の動向だけは掴めない。
実際にいくさの気配を感じ取っているであろう武田や北条の首脳陣は気が気ではないだろう。
「うーん。私の露出については少し考える必要があるかな。まあ、それは今後の課題だね」
今後も折を見て軍議を開き、詳細を詰めていく必要があるのだが、喫緊の話題は尽きた。普段ならその場で解散を宣言するのだが、静子はふと周囲を見回して声を掛けた。
「そう言えば、各所に利益を還元するためにお金を使って欲しいんだけど、誰かやりたい人いるかな?」
静子が問いを投げた瞬間、足満と才蔵以外が手をあげた。
静子の許に集まる金は膨大だ。既に経済規模で堺を上回る勢いになっており、富の偏在が顕著になっていた。
信長が戦略的に金を使ってはいるのだが、それでも使い切れない、もしくは現金ではないため使いにくい金が滞留してしまう。
国家事業である愛知用水絡みの大規模土木工事に際して振り出した債権の返済に充てるという手もあるのだが、経済の健全性を保つ意味では毎年一定額を積み立てて定期的に返す方が経済効果も高い。
信長からは静子がこれだと思う事に適度に出資せよという大雑把極まりない指示が来ているが、そうそう都合の良い投資先など見つかるはずもない。
そうこうしている内にも、織田領内で流通する貨幣以外に流入している外貨が既に無視できない規模になってしまっていた。
これに関しては然るべき場所で消費しない事には、他国の経済で貨幣不足が起こり、貨幣の希少性が高くなるに従って物価が相対的に下落するデフレーションを引き起こしつつある。
この外貨の存在を静子も事態が深刻になるまで見落としていた。何しろ織田家影響下の商業圏に於いては、織田家の管理する通貨で取引が出来るためだ。
織田領内では外貨が過多になり、両替商の手元にダブついた外貨は織田領内では使い勝手が悪いが、ため込んでおけば次第に価値が上がっていくため死蔵される。こうして問題が表面化した時には織田家の影響下にある京ですらデフレの傾向が出ていた。
つまり静子はどうにかして溜まりに溜まった外貨を買い取って、外部に再び還流する流れを作り出さなければならくなった。
それも可能な限り早急に対処しなければならず、もはや無駄遣い云々を気にしていられる時期を逸してしまっていた。
「私はお金の浪費が嫌いだから貯め込みがちなんだけど、君たちは自信があるみたいだね?」
彼女自身が口にしたように静子が金を使う場合、使った以上に何らかのリターンを見込んだ使い方をするため、この問題の解決には全く適していない。
当初静子が投資しようとしたのは土地開発に港湾事業、対外貿易の拡充などであったため、信長から待ったが掛かってしまった。
信長としては静子が自分の身の回りに金を使い、その地位に相応しい家屋敷や宝飾品に衣服などを
しかし、実際に静子から信長へと届けられたのは新規事業に対する企画書であった。どの計画も中長期的に収入が見込めるしっかりと練られたものだ。
それだけに信長が喰らった肩透かし感は甚大であり、ついに彼は静子自身に金を使わせることを諦め、配下に使わせるようにというお達しを出すに至った。
「任せてくれ! 金を稼いでこいと言われるなら困るが、使うことに関しては
胸を張って長可がろくでもない事を口にする。
「ダメ出しされた以外にも文化振興にお金を使ってみたんだけど、それもイマイチだったみたい」
「ああ刀集めしたり、ボロ寺を修繕したり、秘蔵の何やらを見て回ってただけだろ? 長谷川っていう優男を連れて行ってたんだっけ?」
「長谷川さんは楽しんでいたけどね」
静子は五摂家筆頭近衛家の娘であり、朝廷より芸事保護の守護者を命じられ、実際に様々な資料を編纂して発表するという実績を残している。
このため、本来は門外不出のものや秘匿されている宝物すらも閲覧できる機会を得られるようになっていた。
長谷川としては利休のツテを以てしてすら閲覧が叶わなかった秘宝を見ることができ、それらに刺激を受けるとともに用いられている技術を取り込んでいった。
「あの長谷川って奴は、結局お抱えにするのか?」
「課題を出すんじゃなくて、平時に彼が作っている作品をこっそり見せて貰ったんだけど、それが決め手だったね。彼は意気込むよりも肩の力を抜いている方が実力を発揮し易いのかも知れないね」
長谷川はかつて静子の出した試験に失敗していた。それゆえ静子は試験として通知せず、彼が普段作っているものを定期的に回収して逐一目を通すようにしてみた。
静子は絵画に対する審美眼を持っている訳ではないが、刺激を受ける度に長足の成長を見せる長谷川の才能には目を
「彼自身が良い腕をしていることは勿論。彼の息子も影響を受けて才能の片りんを見せ始めているから、親子ともども将来が楽しみだよね」
「その為だけに家屋敷まで用意してやるという厚遇っぷりが俺には判らん」
「美術の世界は感性によるところが大きいからね、糊口をしのぐ為に費やす時間を作品の製作に割いて欲しいんだ」
静子のやっていることは中世ヨーロッパで行われていたパトロンに似ている。それによって長谷川一家の生活の質は格段に向上した。
衣食住に不安の無い状態で多くの学びの機会を与えられるという環境に置かれ、長谷川は今まさにその才能を開花させつつあった。
「惜しげもなく使わせている画材だって結構な値段するんだろう?」
「必要経費だよ。勝蔵君だって練習も無しに明日から短弓を馬上から撃てるようになってねって言われたら困るでしょ?」
「まあ、それは無理だな」
「彼は今、
「俺には判らん世界だ」
眉を寄せて口を尖らせる長可の姿に静子は苦笑する。話が大きく脱線してしまった事に気付いた静子は、咳払いをして路線の修正を図る。
「話を戻して、それじゃあ目的の街に着いたらこの手形を最寄りの田上屋で現金化してね。全額使ってくれて構わないから」
「お、話は終わったか。まあ勝蔵じゃないが、俺も金を使うことには自信があるからな。大船に乗った気で任せてくれ」
慶次の言葉に静子は考える。出来るだけ早く出立して欲しいが、信長に安土を発つことを伝えていない。
「上様に尾張に戻る旨を伝えてくるから、それぞれに出発の準備だけはしておいてね」
静子が暇乞いをすると、信長はすぐにそれを許した。織田家の勢力外で金を落とすのが理想なのだが、いくさを前にした今の時期に主だった配下の武将が遠出をするのは難しい。
そこでまずは安土を出て京へ赴き、数日滞在の後坂本へ向かい、今浜に立ち寄って美濃経由で尾張へと戻る順路を取る。
この経路の各地でお金を落として回る必要があるのだが、静子は自分を基準に考え相当な時間を要すると考えていた。
「え? もうなくなった?」
京に到着して以降、義父である近衛
「ふふん。こればかりは静子よりも俺の方が向いているな。金は一人で使うよりも、多くが使えば一気に無くなるんだよ」
長可の金の使い道は単純にして明快だった。彼は自分の部下で見込みのある者を選んで飯や酒を
長可の部下は、更に己の部下に対して長可がやったように振る舞った。これによって垂直型の金の流れが出来上がった。
それぞれが思い思いの場所で金を使うため、高級店から大衆店まで様々な場所に金が落ちることになる。こうして水平にも金が広がり、幅広く金が行き渡った。
「なるほどね。私は自分が集約して大きなお金を使った方が効果も大きいと考えたけれど、少額ずつに分散して消費に回す方が早く使うという面では理に適っているんだね。ただ、予算以上に金を使い込めと言った覚えはないんだけれど?」
そう言いながら静子は長可に請求書の束を突き付けた。そこには長可の名でツケに回された膨大な金額が記されていた。勿論、その全てを静子が立て替えている。
金が足りなくなったからツケにしたのだろうが、自分の所属を告げているからには請求書は静子の許へと届くのは自明であろう。
「いや、これは俺が払うつもりだったんだ」
「構わないよ。君の今後のお給金から一定額天引きし続けるだけだから。坂本では流石に謹んでよね? 京では近衛家の名前で信用があるからツケがまかり通っているけれど、坂本でやったら営業妨害ととられるよ?」
「わ、分かった」
いくつか軽いトラブルが発生したものの、静子は立ち寄る先々でそれなりの資金を落とす事に成功した。今後は金を使う人の間口を広げる政策も、場合によっては有効だと言う事を静子は学んだ。
静子が尾張に戻った翌々日、彼女は慶次を伴って景勝の許を訪ねていた。彼の住居へ招かれると、越後から人質として連れられてきた者全てが勢揃いしていることに気が付いた。
この状況を一目みた慶次は、彼らが何を言わんとしているかを察したが、静子が口にした言葉は彼の想像の
「薄々察しておられるようなのではっきりと告げます。来年、越後に大きな転機が訪れるでしょう。それに対して各々がどうしたいのかを確認させて貰います」
慶次の予想では越後の置かれている状況を伝えるだけだと考えていたのだが、静子はそれを既に知っているものとして、自分はどうしたいのかと尋ねたのだ。
彼らは越後が裏切らない保証として差し出された人質である。どうしたいも何も彼らに選択肢など有りはしない。本国が裏切らないことを祈って尾張に滞在するのみだ。
「人質としての立場は一端棚上げにしてね。貴方達が選べる選択肢は大きく三つ。一つは尾張を脱して親北条派に合流する道。一つは上杉家に戻ってお家の為に親北条派を討伐する道。最後の一つはことが終わるまでここ尾張で根を生やす道。今ならばどの道を選ぶことも私が許します」
「希望を伝える前に貴女に問いたい。何故、我々に選択肢を与えるのか? 貴女の立場なれば、我々は人質として尾張に居続けた方が都合はよろしかろう?」
景勝の問いに対して静子はニコリと笑みを浮かべる。静子は信長から景勝たちの管理を任されているのだ、人質が勝手に居なくなればその責を問われて困ることになるのではないかと景勝は訊ねた。
「上様には好きにして良いと言われているし、今だからこそ言いますがそもそも人質って言うのが好きじゃないんですよ」
しかし静子と信長の出した答えは違った。少なくない費用をかけて人質を無為に飼殺すよりも、故郷以外の世界と新しい価値観を知った彼らが、どのように行動するのかが知りたかった。
果てしなく広い世界の一端を、尾張という窓を通して垣間見ても尚、
外部に出て広く世界を見てもなお、己のお家存続だけに
「ははは。なるほど、これは我らに与えられた卒業試験という訳ですな? 貴女が撒いた芽がどのような実を付けるか、とくとご覧にいれましょう!」
静子の言葉に対し、景勝は快活に笑って見せた。景勝の浮かべた笑みと、彼に続く家臣達の決意に満ちた目を見れば、改めて答えを聞くまでも無かった。
先ほどまでの何処か淀んだ目ではなく、未来を勝ち取らんとするいくさ人の表情になっていたからだ。
「答えを聞くまでもありませんね。存分に楽しんでおいでなさい。ここの地で身につけたことは、何かの役に立つことでしょう」
「所詮我らは居ないものとして扱われている人質ゆえ、いくさ場で散ったとて大勢に影響はござらん。しかし、本懐を遂げれば大金星となりましょう。この期に及んで北条に
「全てが終わった後にお互い生が続いていれば、酒を片手に武勇伝をお聞かせ下さい。私は酒を禁じられておりますので、ご相伴にあずかるのは慶次さんでしょうけど」
禁酒令に触れて静子が混ぜっ返すと、皆がドッと声を上げて笑った。
「今生の別れとなる人もいるでしょう、皆悔いを残さないようにね」
その言葉を告げて静子と慶次は景勝の住居を後にした。二人の姿を見送る越後の人々は、彼らの姿が見えなくなるまで頭を深々と下げ続けていた。
「さてと、彼らの引率は慶次さんにお任せするね。ちょうど向かう先は同じだし、『旅は道連れ世は情け』って言うでしょう?」
彼らの潔い生き様を見たためか、うきうきと弾む足取りで廊下を歩みながら静子は慶次に言葉を投げかけた。静子は越後で慶次たちがどのようないくさをするのか、楽しみで仕方がなかった。
「うーん、聞かない言い回しだが気に入った。せいぜい引っ掻き回してやるから報告を楽しみに待っててくれよ」
慶次は首を傾げつつも楽し気な笑みを浮かべていた。その表情はとっておきの
余談ではあるが慶次に聞き覚えが無いのは仕方がない。かの台詞は江戸時代に登場した『江戸いろはかるた』の一つだから、今の慶次が知っているはずがない。
「
越後にいる親北条派の動きは良く判っていない。情報統制がはじまっているのか、越後の情報はなかなか尾張に入ってこないが、親北条派が追い詰められていることは間違いない。
『
更に上杉謙信と連携することも難しい。景勝らが向かっている事を万が一にも敵方に知られれば、数で劣る彼らは包囲殲滅されてしまうからだ。
故に慶次たちは謙信から敵かと疑われないようにしつつ、親北条派と戦って身の証をたてる必要があるのだ。不安要素が山盛りで綱渡りのようないくさになるが、だからこそ面白いと思うのが慶次という男であった。
「勿論、面白いさ。今のご時世でこれだけのいくさ場を用意して貰えるってのは、いくさ人冥利に尽きるってもんだ」
「それは良かった。あ、一応これを渡しておくね」
そう言いながら静子は懐から紙束を取り出した。表書きがされていない和綴じの冊子を手にした慶次は首を傾げる。
「これは?」
「私なりにこれから起こりそうな状況を想定して立てた作戦。本当に困った時に思い出したら読んでみて? 要らないなら焚き付けにも使えるから邪魔にはならないよ」
静子としては慶次に思う存分戦って欲しいと思う反面、命を落として欲しくはない。故に彼が生存を望むのであれば、可能な限り生還の目を残せるよう知恵を絞ったのだ。
慶次は静子が己の生き方を尊重しつつも、自分を欲していてくれているのを嬉しく思った。それ故に突き返すのではなく、冊子を懐にしまい込むと一言告げる。
「ありがたく貰っておくよ。鎧の下に忍ばせれば弾避けになってくれるだろうさ」
慶次はそう言うと冊子をしまい込んだ胸を拳で叩いてニカリと笑った。
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