政府自民党は、財政出動で支持団体への補助金はズラリと並べ、「貧乏人は死ね」と宣言したのだ
そこで、財政出動の支えが必要となる。
たとえば、想像してみよう。40代、フリーター、貯金ゼロ、時給制、一人暮らし、ワンルームマンションに借家暮らし。いきなり仕事が無くなれば、来月の家賃が払えるか? 中には自殺を考える人もいるだろう。実際に’98年大不況の際には、1年で自殺者が8000人増えた。
では、そうした人が、安心できる金額はいくらか? 20万円が相当だろう。明日20万円が入れば、家賃を払って最低限の生活ができる。この値段は、命の値段なのだ。
もし私が総理大臣なら、金融緩和を日銀に求める。可能な限り、景気を支える。その上で、即時消費税の5%減税を宣言。緊急事態宣言による外出自粛営業自粛が長期化するようならば、もう5%下げる。そして、有権者全員に一律20万円を給付する。総額約33兆1700億円。財源は複数の手段があるが、私なら政府硬貨を発行する。何なら、その33兆1700億円硬貨を発行する。そして、日本銀行に買わせる。そして20万円分の小切手を選挙人名簿に照らして即座に送る。2週間以内に間違いなく届く。
ここで大事なのは、事務的作業を最大限簡略化し、公平性を言わないことだ。超大金持ちに渡っても不正受給されても構わない。政治が「政府が自粛を求める以上、一人の日本人も経済苦で殺さない」と安心感を与えるような発信をすることだ。
それではハイパーインフレが起こるのでは? ところが平時ならばハイパーインフレが起こりかねないような財政出動を、世界中の国が行っている。それでもインフレマインドが発生しようがないほどの恐慌状態なのが現状だ。
世界の投資家は、「この危機を乗り越えるべく正しい経済政策を行っている国はどこか」と探し回っている。世界経済が止まっているような状況で耐え忍べば、いつかコロナ禍が終わった時に、その国はV字回復しているだろう。逆に、経済政策に失敗した国には地獄が待っている。
では、我が国はどうか。
先日、108兆円の財政出動が発表された。額は大きい。しかし、国民に直接回ってくる額は、5兆円にも満たない。まず消費減税は絶対にやらない。給付は「1世帯30万円」と、これまた数字が大きいだけ。「公平性」「所得制限」「厳密な審査」にこだわり、所得が減少した事実を自ら証明しなければならない。実際には誰が対象かわからないような複雑な制度で、しかも入金は早くて5月末。貧乏人は死ねと言っているのが、政府自民党の宣言だ。一方で、自民党の支持団体への補助金がズラリと並ぶ。(編集注:内容は記事執筆時点。4月17日、政府は1世帯30万円の給付を取り下げ、一律10万円給付する方針に転換した。)
「自民党の優秀な議員」とは、限られた予算を支持者の為にとってこられるかがバロメーターだ。だから、全国民を相手とした経済政策など、頭の中に無い。そのなれの果てが、これだ。個々の自民党議員は現状の最適解を求めているのだが、総合調整機能が崩壊している。理由は簡単で、官僚機構をシンクタンクとして使っていたからだ。
官僚とは既存の法律に基づいてメニューを出す。しかし、そのメニューに適切な政策が無ければ、ひねり出すのが政治家だ。官僚に頭を預けた自民党には、もう無理だ。
自民党と官僚の政策担当能力は崩壊した。ならば民間が示すしかない。
このたび、私は「救国シンクタンク」を作った。提言は各所に送った。活動は随時、報告する。
そして、実現していく。
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「
倉山塾」塾長、ネット放送局「
チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『
嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『
13歳からの「くにまもり」』