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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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浄化

「とりあえず帰るぞ!」

「ナオフミちゃんの所はやっぱ面白いわー」

「サディナも笑ってないで聖水で治す魔法を使え!」


 回復が遅れて痛いんだからさ!

 それくらい気を使えよな。


「しょうが無いわね」


 と、サディナが聖水を使って俺に魔法を掛ける。というか、特殊な魔法らしいけど呪いに効果があるとか凄いな。


「あ、ナオフミちゃん。魔力水くれない……お姉さん魔力が尽きちゃう」

「知るか。もう戦う予定は無いんだ」

「あー……ホント困るのよ。ね。お願い」


 などと無視して歩く。


「フィーロ、帰るぞ」

「うん」

「キュア!」


 ガエリオンが俺の又下に潜り込む。


「歩きづらい。どけ!」

「キュアアアアアアア!」


 パアアっとガエリオンが輝いて、腐竜の核を食う前の姿に……もう少し大きいな。四メートルくらいになった。

 そして俺を背に谷子、サディナ、ラトを尻尾や両手で抱きよせて飛び始める。


「あ、あああああー!」


 フィーロが悔しげな声を出す。


「ナオフミ様ー!」


 ラフタリアも呆気に取られる。俺だって言葉が出ないぞ!

 変身技能持ちかよ。


「キュアー」


 掴んだ奴らを背に乗せたガエリオンがフィーロを挑発する。


「むー!」

「キュアー」


 バサッとガエリオンが羽ばたいて下山を始めた。


「ラフタリアお姉ちゃん! 急いで追うよ! ごしゅじんさまを乗せるのはフィーロなんだもん!」


 フィーロも負けずに残った面子をせかす様に走り出す。

 ま、馬車が無いから、追いつけないだろうけど。

 というかガエリオンの奴、降ろせと注意しても聞かない。

 魔物紋を作動させたら俺たちが落下しかねない。


「ああもう……この子は強引ねー」

「ラト、お前はドラゴンがこんな能力を持っているのをしっていたか?」

「研究のごく一部にあるとは聞いたけど、フィロリアルの変異種と同じ程度しか知らないわね。伯爵の所の子は面白い成長するわよね」

「そう言う問題か?」


 空から下を見る。汚染された大地の色が、消えているのに気づいた。


「伯爵も気づいた? 暴走したガエリオンが辺りから不浄な流れを吸っていたみたいだったけど、これが結果のようね」


 なるほど、これでこの地も本格的に平和になるのか。

 ポータルシールド使えるだろうなぁ。

 試しに使ってみるか。


「ポータルシールド!」


 よし。見る限りだと使えそうだ。注意事項として記録時、地表に飛びますと出てる。

 転移を指示して周りを意識する。

 ラフタリア達は範囲外か……ここで飛ぶってやったらどうかと思う。


「あー……ナオフミちゃん。お願いだから魔力水くれない」

「だから――」


 振り返って、俺や谷子、ラトが絶句する。


「ね?」


 サディナが……巨漢の姿では無く、人型の姿で困り顔で両手を合わせて頼んでいた。

 え?


「誰?」

「だから魔力水くれない。維持できないのよ。お酒でも良いわ」


 黒髪の長い髪、そしてラフタリアに負けず劣らずの肌の張りと顔の良さ。

 年齢は20歳前後、和風の整った顔立ちの美女がいる。

 それが……ふんどし姿で俺に頼んでいるのだから驚きだ。


「しょうがねえな」


 ぽいっと魔力水を投げ渡す。


「良く考えたらガエリオンがお前を引き寄せる時点で気づくべきだった」


 あの巨漢を4メートルしかないガエリオンが背負える訳ない。


「ここで飲むなよ。墜落する」

「ナオフミちゃん驚かないの?」

「驚いてはいるが?」

「当たり前のように流し過ぎなのよー」

「知るか」

「ルカ種ってそんな能力あったかしら?」

「私、ルカ種じゃないわよ?」


 サディナがラトの問いに答える。


「違うのかしら?」


 そういやこの二人、年齢近いからかキャラが被って見えるな。

 まあ、サディナの方が若干年上っぽいけど。

 どうでも良いか。


「私はサカマタ種。ルカ種とか近いけど別種よ」

「どうちがうの?」

「見てわからない?」


 まあ、人型にも変身できるのなら別種なのだろうなぁ。


「全然。変身技能なら魔法でどうにか出来たりするし、後天的に手に入る事例が存在するわ」

「あらま、見分けが付けられていないなんて残念。あそこまでお姉さん、回遊する食生活持ってないわ」

「しらねー」


 ちなみに俺の世界でもシャチって三種類に分けられるとか読んだ事がある。見た感じそっくりだけど遺伝子的には犬と狼並みに違うとかそうじゃないとか聞いたような気もする。


「キュア!」

「ガエリオン。立派になって……私のお父さんみたいに立派なドラゴンになるのよ」

「キュア!」

「そのお父さんが猫かぶりしているんだぞー」

「何言ってるのよ。お父さんは……死んだの」


 そう、谷子は遮って、俺の話を信じなかった。

 ちなみに東の村の近くで降ろさせてから俺はみんなを村に飛ばした。

 山が綺麗になった事で東の村の連中も喜んでいたのは蛇足か。

 さすがは盾の勇者様! とか言ってくれたけど、誤魔化せたな。


 ぶっちゃけ、谷子やガエリオンの言葉から察するに自業自得だ。

 俺の中で東の村の連中の評価はガクっと下がった。

 勝手にくたばれ。



「ごしゅじんさまを背に乗せるのはフィーロなの!」

「キュアアアア」


 バチバチと村に帰るなり、ガエリオンとフィーロのバトルが再燃していた。

 ちなみにガエリオンはモードチェンジして小さくなっている。


「はいはい。そこはどうでも良い」

「よくないの!」


 フィーロもそこはこだわるな。


「はぁ……とりあえず。今日からしばらくはフィーロと遊んでやるから気にするな」

「わーい! でもごしゅじんさまを――」

「それ以上こだわるなら遊んでやらんぞ」

「やー!」

「キュア……」

「お前は問題を起こしたからしばらく謹慎。余裕があったらフィーロと一緒に遊んでやるから大人しくしてろ」


 ガエリオンがとぼとぼと歩いて谷子に泣きついた。


「キュアアアア」

「そこの鳥は構うのに、なんでガエリオンをいじめるのよ」

「わからないのか? おしおきだ」

「う……」


 チラッと泣きついているガエリオンはこっちを盗み見る。

 いじめっ子が親に泣き真似しているみたいで癇に障るな。


「ダメだ」

「キュアアアア……」


 本格的に泣きだした。


「やーい! ざまあみーろ」

「フィーロ」


 注意するとフィーロが視線をそらして歌い始めた。

 まったく、こっちもこっちでガキそのものだな。迷惑を掛けた自覚はあるのか。


「では私は戻りますね」

「ああ、助かった」

「どういたしまして、むしろ事件に遅れて申し訳なく思います」

「しょうがないさ。こんな事態を想像なんて出来る筈もない」


 と、俺はラフタリアに礼を述べ、出発を見送る。


「後どれくらい掛りそうなんだ?」

「基礎の修業さえ終われば……もう少し掛りそうです。そしてリーシアさんが中々の成長を為さってます」

「へー……」


 あのババアのお気に入りになってしまったリーシアがねー。

 俺の脳内でリーシアが筋肉マッチョになる。


「多分、ナオフミ様が考えている物とは違うと思いますよ」

「良く分かるな」

「なんだかんだで付き合い長いですからね」


 阿吽の呼吸で理解されているという事か。


「なるほどな。じゃあ今回みたいな事が無いとも限らない。次からは修行場所を報告してくれ」

「わかりました」

「後Lvはー……あんまり上がってないのな」


 凶悪な魔物を倒して回っているとかではないようだ。

 山で修業、ってサバイバル程度なのかな?

 そういや俺もババアに教わらないといけないんだよな。


「ああ、ナオフミ様の修業は私たちが終わってから、余裕があればするそうです」

「なんか俺がおざなりだな」

「ナオフミ様は実戦経験タイプで、素質は既に開花しているとか言っていましたよ?」

「はぁ?」

「攻撃では無く防御と言うのは生半可な事では出来ない。返し技をする訳でもなく、相手のインパクトをずらすという基本さえ覚えておけば、後は応用を学ぶだけだとか……良く分かりませんが」

「俺も良く分からん」


 まあ、流れる内部破壊の力を外に吐き出す術を覚えろとは聞いたけどさ……。

 そういや、アトラは目が見えない代わりに気とかの流れを見ているんだったか。

 聞けば訓練の相手くらいにはなりそうだな。

 後で頼んでみよう。

 話を終えてラフタリアは名残惜しそうに村を出て行った。

 修業を終えて一皮剥けたラフタリアの雄姿を楽しみにしていよう。

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