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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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幸運

 ラースシールドを確認する。


 ……変化条件が不足しています。


 って出てステータスを確認できない!

 ガエリオンのステータスは既に砂嵐が酷くて見えないし。


「とりあえず、奴を倒すしかない!」

「倒せたら……良いわね」


 撤退した所でガエリオンが洞窟から這い出してきた。

 その全長は二〇メートルにまで巨大化し、本格的なドラゴンとしてその場に君臨していた。

 目は、闇色に染まっていて、表情はわからない。

 ガエリオンである所の共通項を見出す事も出来なかった。


「GURUUUUUUUUUUUU……」

「あー……うん。俺は大丈夫だと思うけど、お前等は?」


 全員、首を横に振る。谷子は……絶句してる。クラスアップしていない物なぁ。

 ガエリオンが大きく息を吸う。

 このモーション。絶対にブレスだよな。


「流星盾!」


 俺は流星盾を展開させて、ブレスに備える。他の奴らは俺を盾に備えた。


「ちょっと聖水借りるわよ」


 サディナが谷子から水筒を取り返して魔法を唱え始めた。


『我、サディナが聖水の力を引き出し、顕在を望む。龍脈よ。我等を守れ』

「セイントアクアシール!」


 サディナの唱えた魔法が俺を取り囲む。

 なんだろうか?


「ナオフミちゃん。万が一に備えて炎の耐性と呪い対策をしておいたから」

「助かる」


 一射目に耐えれば勝機はある。何、霊亀程の強さは無いだろう。

 ガエリオンの口から黒色の炎が吐き出され、俺たちに向かって飛んでくる。

 流星盾が一瞬で溶解した。

 な、なに! 霊亀の踏みつけさえ多少は耐えきれたはずなのに一瞬で解けただと!?

 その炎が俺に向かって飛んでいく。Eフロートシールドも展開し、耐える。

 全身を焼きつくす痛みに意識が飛びそうになる。

 出力だけなら霊亀の電撃に匹敵するぞ!


「セイントアクアシールが剥げてる……なんて威力のブレスと呪いなのよ」


 耐えきれた俺は回復魔法を唱えてガエリオンを睨みつける。

 これは……間違いない。ダークカースバーニングSの炎だ。

 おそらく、俺が目の前にしているのはガエリオンの形をした……ラースシールドと同等の能力を持つ化け物だ。

 しかもフィーロのステータスとLvまで吸っているとなると、霊亀よりも厳しい相手かもしれない。

 撤退を視野に入れないと行けなくもある。

 だが、ここで逃げたら勇者ではない。

 ん? 何かおかしい事を俺は思ったか? 違和感がある。


「ラト、あれを弱らせて腹の中から核を取り出せるか?」

「……食われるわよ?」

「だろうなぁ。誰かがガエリオンの腹を切った方が早そうだ」

「取ったら治すのよね?」

「一応はな」


 それで治れば良いのだけど。谷子も必死にガエリオンに呼びかけるけど効果は無いようだ。アニメだったら……少しは効果があるはずなんだけど。


「じゃあお姉さんが頑張るかしらねー」


 サディナが銛をくるくると回しながら前に出る。


「出来るか?」

「ちょっとやってみる」


 そしてサディナは銛を空に掲げて魔法を唱え始めた。


『力の根源たる。私が命ずる。真理を今一度読み解き。雷を降り注がせよ!』

「ドライファ・サンダーボルト!」


 サディナが魔法を唱えると上空にある暗雲から稲光が走り、サディナが掲げた銛に降り注いだ。

 ドライファ……ツヴァイトの上の魔法だ。Lv35のサディナが唱えているって、シャレにならないくらい強いんじゃないか?

 40で限界を迎えていたはずなのに、実際の能力は何Lv相当なんだよ。


「ちょっと危ないから下がってるのよ」


 腰を低くさせたサディナがガエリオンに向かって走り出す。

 早い。もちろん、ラフタリアやフィーロに比べたら遅いが、それでも俺の知る奴の中ではLvに見合わない速度で移動している。


「雷撃銛!」


 高らかに跳躍したサディナがガエリオンの腹部目掛けて銛を投げる。その瞬間、稲光がガエリオンに命中し、目が眩む。

 その速度は早く、雷の速度で銛はガエリオンの腹部に命中した……。

 はずだった。

 ガキン!

 俺が盾で防御した時の様な音を立てて、サディナの放った銛はガエリオンの腹に刺さらず、跳ね返って飛んで行った。


「あらー……お姉さんのキメ技が刺さりもしないですかー」


 着地したサディナが銛を掴んでバックステップをしながら戻ってくる。


「……本格的にラフタリアが来ないとやばいか」


 目が眩んだガエリオンが両手で目を抑えて呻く。

 魔法でどうにかなるかを試すのも手だけど……結果は芳しくなさそうだ。

 だが、ここで手を拱いていても好転はしないだろうし。時間もあまりない。


「伯爵、どうにか出来ないの?」

「とは言ってもな」


 俺からも能力を吸っているとなると……。

 ん? 能力を吸っている?

 見た感じだとラースシールドの能力が備わっていると見て良いだろう。

 ならどうせしばらく使う予定が無かったラースシールドを強化させて見るのはどうだ?


「ちょっとアイツの力の源になっているであろう盾を強化してみる」

「「馬鹿じゃないの!?」」


 ラトとメルティに怒鳴られた。


「待て待て、話を聞け。強化には失敗が付き物だ。ワザと失敗させれば弱体化する」

「そうなの?」

「ああ、もしも奴が俺の盾から防御力を得ているのならそれで攻撃が通るように……なるかもしれない」

「わかったわ」


 ガエリオンが目を抑えるのをやめて隠れた俺たちを探し始める。

 見つかるのは時間の問題だな。


「一旦撤退をしてから再突撃をしよう」

「ええ、ここには戻って来れるのでしょう」

「たぶんな」


 俺はポータルシールドを作動させ……。

 ……跳躍も場所記録も出来ない。

 え? まさか、こう言った魔力の汚染が酷い場所だと出来ないのか!?


「転移出来ない。走って逃げるしかなさそうだ」

「させてくれそうにないわよー」


 サディナが上を指差す。

 ガエリオンが空を飛んで、隠れていた俺たちを発見した。

 うん。こんな状況で走って逃げられるのなんてフィーロ位なものだ。そのフィーロもいないんじゃ無理!


「GYAOOOOOOOOOOOOOO!」


 急降下して俺たちを強靭な爪でなぎ払おうとする。

 俺は前に出てそれを受け止めた。

 ズシンと全身に重みが走る。

 ブレスほどきつくはないが、厳しい所だな。

 流星盾を張り直したが、壊されるのも時間の問題だろう。

 爪の次は尻尾のなぎ払い。そして噛みつき!

 どれもかなり重たいし、痛みが走る。


「伯爵! ツヴァイト・ヒール! ファスト・ガード!」


 ラトが援護魔法を唱えてくれる。助かった。唱える余裕が無かったからな。


「じゃあメルティちゃん。合唱魔法を唱えて」

「え……でも……」

「ほら、あなたも、メルティちゃんに合わせて唱えるの。あなたの魔法はメジャーな魔法よりも合唱魔法の威力を向上させるから」


 サディナは谷子にも協力を指示する。


「う、うん」

「私が率先して唱えるからメルティちゃんは調律と総合、あなたは補助ね。行くわよ」


 俺はサディナ達が魔法を唱え始めるのに合わせて、ラースシールドの強化画面を呼び出した。

 強化素材は十分ある。


 ラースシールド+7→+8の強化をしますか?


 メッセージに従い。はいを指示。


 警告、失敗時、強化値が0に――

 確認を無視して更に「はい」を指示した。カンカンと頭に強化マークが出る。


 +8の強化が成功しました!


 クッソ! こんな時に成功してどうするんだよ!

 ビキ……。

 恐る恐るガエリオンに目を向ける。

 うん。鱗が光沢を放っている。若干光ってるな。MMOとかだと高位精錬に成功すると武器が光ったりするエフィクトが入るようになったりする。

 俺の運の悪さに呆れる。


「ちょ、ちょっと伯爵? なんか……強くなってるんじゃない?」

「ああ、強化成功しちゃった」

「馬鹿じゃないの!?」

「うん。悪い」

「軽い……伯爵、やっぱおかしい」

「自覚はある。やっぱり早く倒さないと危ない」


 迷わず、再強化を指示。

 同じように「はい」を連打。


 +9の強化に成功しました!


 ……。


 グフ!

 ガエリオンの攻撃が普通に俺の防御を突破するようになった。

 痛みに転げ回りたくなる。

 全身から血が滴る。


「伯爵!?」


 この盾ぇ……俺を殺す気か!?

 次成功したらやばいぞ!

 噛み切られる!!


 「はい」を連打!


 +10の強化に――。


 見る前にガエリオンの尻尾攻撃で空中に投げだされた。

 うん。ガエリオンが、凄くキラキラしてる。これは、俺が吹き飛ばされて星が見えているのかな?

 思いっきり口を開けてカモンしてる。このままじゃ食われるな。

 そのまま強化!


 +11の強化に失敗しました!


 ボキンと音を立てて、ラースシールドの強化に失敗する!

 途端にガエリオンの鱗や力が弱体化した。

 俺に食らいついたガエリオンだったが、硬くてガリガリと牙を立てるだけで済んでいる。


「放せコラ!」


 思いっきり牙を掴んで無理やりこじ開けて着地。

 よし、やっとまともに戦える段階になったな。

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