福島県郡山市の水田に不時着した県警ヘリ(1日午前10時15分)=共同
1日午前8時10分ごろ、福島県郡山市三穂田町下守屋の田んぼで、脳死男性から摘出した臓器移植用の心臓を搬送していた県警航空隊のヘリコプター「あづま」が不時着、横転した。搭乗していた警察官や医師ら7人のうち4人が骨折の重傷、3人は軽傷だった。
ヘリは、同県会津若松市の竹田綜合病院で50代男性から摘出した心臓を運ぶため、ヘリポートのある会津中央病院から福島空港に向かっていた。日本臓器移植ネットワークによると、心臓はパトカーで福島空港に運ばれた後、東大病院(東京)に着いたが、同病院は「移植後に正常に機能するのか保証できない」として断念した。事故による脳死移植断念は初めて。
操縦士の男性警部(38)は「機体が風にあおられ、不安定になった」と説明。住宅を避けて不時着させたという。
機体はアグスタ式AW139型。後部が破断し、メインローターが折れるなどしたため、国土交通省は航空事故に認定した。運輸安全委員会が航空事故調査官2人を派遣する。県警は1日に現場を実況見分、業務上過失傷害容疑を視野に調べる。移植断念について、県警の佐藤実地域部長は「誠に申し訳ない」と陳謝した。
ヘリに乗っていたのは県警の村上祐司地域企画課長(59)ら警察官3人と整備士2人、東大病院の医師の井戸田佳史さん(39)、臨床工学技士の男性(43)。井戸田さんが胸の骨を折る重傷。
現場近くに住む菅野雄基さん(29)は「騒音がして外を見たら、田んぼの10~15メートル上空でホバリングをしていた。機体が回転し、ゆっくりと落ちた。地面と接触した回転翼が粉々に飛び散って恐ろしかった」と語った。
不時着したのはJR安積永盛駅から西に約12キロの農村地帯で、離陸地点から南東約33キロ。最も近い住宅までの距離は約200メートルだった。
福島地方気象台によると、郡山市内では当時、強風注意報が出ていた。
心臓の移植は保存期間に限度があるため、原則として摘出から移植までを4時間以内に終える必要がある。
〔共同〕
電子版の記事が今なら2カ月無料