「検査を意味なく渋っている」のではない。病状のない人にまで検査を乱発すると見逃しやぬれぎぬを続出させるだけだ。正しい絞り込みなしに検査したところでまともに感染者は見つからない。

 検査の数を増やせば増やすほど偽陰性・偽陽性が増える。仮に1000万人に広げるとしよう。すると先の図で示した通り、有病率が全体の90%と高くとも、最大で360万人の偽陰性者、つまり「本当は感染しているのに誤った陰性結果に安心して野に放たれる人」をつくり出すことになる。

 ダイヤモンド・プリンセス号の乗客の検査でも、陰性証明書を手に安心して街に出た偽陰性の人から感染が広がったということがあった。これと同様のことが起きる。また「検査数をむやみに増やすと、検査が患者にもたらす利点よりエラーの問題の方が大きくなるのではないか」と東京大学公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授はみる。

 というのも、現状で治療法がない新型コロナ肺炎では、検査で陽性となると本人は隔離されるが、治療法は陰性の人と同じ対症療法だからだ。そのため偽陽性者を収容することによって、より重症の真陽性患者のために空けるべきベッドがふさがれるのも見逃せない。

機械だけじゃ無理
すご腕技術者が支えるPCR検査

 ただし、きちんとしたフィルタリングの上で「検査数」を増やすべきなのは確かだ。それには何が必要か。まずは現行のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査について知る必要がある。

 新型コロナの確定検査として今のところ唯一のPCR検査。その工程は大きく四つに分かれる。