はなから頼りにされている検査だが、そもそもこの検査とは何か。

 感染している人を正しく陽性と判定する確率を「感度」、そして感染していない人を正しく陰性と判定する確率を「特異度」と呼ぶ。感度・特異度が100%の検査は存在しない。これが大前提だ。

 上図を見てほしい。左の20人中10人が感染している(有病率50%)状態で、感度70%、特異度90%の検査をしたとする。感染している10人のうち3人が陰性(偽陰性)、感染していない10人のうち1人が陽性(偽陽性)になる。この検査で陽性となった人の中で実際に感染している人の比率(陽性的中率)は88%だ。

 一方、検査を受ける人の数が多く有病率が9%と低い右の集団では、陽性的中率は41%に下がってしまった。陽性判定の半分以上が「ぬれぎぬ」を着せられたわけだ。病気の人を探したいのに当たりが半分以下では困る。ならば、検査前に有病率が高い集団になるよう絞り込まなければいけない。

 現在新型コロナの検査は医師の診察または保健所や帰国者・接触者外来などの相談窓口を経由して行うようになっている。「なかなか検査してくれない」とブーイングも上がるが、まさにこれは検査対象をフィルタリングしているのである。先の図のように、まず医師が診察し、全体の中から発熱などの症状がある人を抽出、さらにその中から胸部X線画像などで新型コロナを疑わせる所見が確認できた人を抽出する。ここに濃厚接触者や渡航歴から感染の疑いがある人も含めて検査。これでようやく陽性的中率が高まる。