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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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ポータルシールド

「ヴィッチが甘やかされて育ったのはわかったが、メルティはどうなんだ?」

「あの子は専属の教師を付けさせて育てました。なるべくあの人とは関わりすぎない範囲で」


 だから、姉に比べてまともなのか。

 あくまで、姉に比べてだけど。

 メルティはどちらかと言うと感情的な部分が目立つからな。

 初対面の時も怒っていたし、この前もヒステリーを起こしていた。


「あ、そうそう、イワタニ様がどうやらあの子の呼び方を変えているようなので、正式に改名をしておきました」

「殆ど同じなのに良く分かったな」

「影の報告も耳に入っていますので」

「名前の由来を聞きたいか?」

「イワタニ様の世界の要素があるのでしょう。おそらく……魔性とか悪魔……魔女とかその辺りの言葉を捩ったのでは?」

「む、正解だ」


 しかし、自分の娘を連想した時にその単語が出てくるのはどうなんだ?

 まあヴィッチといえばそんな感じだけどさ。


「後はメルティの方に任せていますが領地の税率をどうしましょうか?」


 税率か。

 考えてみれば貴族って本来は土地経営だけで何もしない事が美徳なんだったか?

 まあ、異世界でもその限りであるかは知らんが。


「復興中の所で高い税率というのもなー……」


 こんな時こそ民衆の力が左右される。

 生活もままならない内に税金を要求されては全てが破綻してしまうような気もする。

 俺の住んでいた日本もその辺りは痛いほど分かる。


 不景気なのに税率上げたら加速するだろ。不況が。

 歴史とかその辺りを参考にすると不景気の時ほど税は下げなくてはいけない。

 かといって活気があるのならなんだかんだで収入も期待できる。

 ……まあ聞きかじった知識だが。


「とりあえずは復興や生活に関わる物は低めに、嗜好品とかは高めにするかな……」

「イワタニ様の手腕を見せて貰いましょうか」

「あんま期待しないでほしいがな」


 なんて言うか、俺はそこまで優秀じゃない。

 盾の力でどうにかしている訳だし。

 よく考えてみればそろそろバイオプラント産の薬草で薬の製造が出来るようになるんだよなぁ。

 買い取りとかも強化しているし、自身の資産運用はどうにかなりそうだ。

 なんだかんだで薬は売れる。


「報告では面白い建物を作ったそうじゃないですか。簡単に建物になる植物という話ですが?」


 ……遠まわしにラトの事を聞いているな。

 俺が警戒している様に国としても気を付けたいって感じか。


「そうそう、フォーブレイで問題を起こした錬金術師と合同で作ったものだ」


 俺はキャンピングプラントの種を女王に渡す。


「一応試作品だ」

「これを商売にも使うので?」

「変異性に問題があるからあまり流通させると危ないと思っている」


 一応、まだ問題はないが、何時何が起こるか分からない。

 特に変な交配でもさせられたらその危険性が再燃しかねないのが問題だ。


「管理業務なんてやっていたら波所じゃ無くなるからな、精々デモンストレーションに使うかどうかだ」


 俺の所ではこんな技術を使っていると見せつける為用で、本来は薬の販売とかを重視させるつもりだ。


「では貴族に売ると言うのはどうでしょうか? もしもの話ですが、交配できないように魔法を掛けれるのなら、使い捨てで売れば良い値になるかもしれませんよ」

「それも手だが……」


 植物改造で弄れば出来なくはない。繁殖力の値を最低値にすればどうにか出来る。

 貴族連中になら良いかもな。


「苦情は受け付けないが、良いのか?」

「盾の勇者様の作品に苦情を言うのは現在の勢いでは無いかと」

「それが不安なんだがなぁ……」


 どっちにしろ、領地経営は難しいな。メルティに教えるとか名目は立っているけど、教えられそうだ。

 あの短気なメルティに頭を下げると言うのは苦痛だ。


「考えてみれば国内の貴族はどうなんだ? 盾の勇者である俺を優遇するのは実質女王の独断なんだろ?」

「一応は、問題ありませんね。むしろ静かすぎて不気味な程です」

「何かありそうか?」

「……はい。私の力及ばずな所が残念です」


 決定的な証拠は無いけど、何かありそうな予感か。こういうのって当たると相場が決まっているんだよな。

 元々人間至上主義の国で亜人の村を経営している俺もそうだが、亜人の神と崇め奉られている盾の勇者を抱え込んだ女王も女王か。


「その問題を起こした錬金術師に関してですが、報告を見る限りだとイワタニ様の所に馴染んでいるようですね」

「ああ、驚くくらいにアッサリとな。フォーブレイで本当は何を起こしたんだ?」

「本人の証言通りですね。どうやらフォーブレイの七星勇者が研究していた物と技術的な衝突が起こったから追放されたようです。宗教的な問題よりもそっちだと私は睨んでいます」


 あいつ、なんだかんだで技術はあるんだよな。それで追放か。

 フォーブレイが何を研究しているのかは知らないけど……。

 なんとなく雰囲気だと、車の輸入で日本と某国が争った商売戦争の匂いがする。権力で追い出されたとか、似てるよな。

 まあ、いずれフォーブレイの新兵器が出てくるかもしれない。

 これで波や生活が楽になるのなら良い事だけど。頼りにもしてられない。ラトにも援助しないとなぁ。


「報告はこんな所か」

「そのようで、またの来訪をお待ちしていますよ」


 女王が頭を下げて立ち去ろうとする。


「そうそう、城の倉庫に霊亀から発掘された鉱石を入れておきましたので、何時でもお取りよせください」

「ああ、その素材は俺が行きつけにしている武器屋に回しておいてくれ」

「はい」


 なんだかんだで親父の力にはなりたいからな。優先的に回しておきたい。

 そんな感じに話を終え、俺たちは龍刻の砂時計でサディナとフォウルのLvリセットをした。

 その時に、龍刻の砂時計の砂を譲って貰い、盾に吸わせる。


 龍刻の砂盾の条件が解放されました。


 龍刻の砂盾 0/60 C

 能力未解放……装備ボーナス、スキル『ポータルシールド』

 熟練度 0


 いきなり覚醒させて見る……特に追加のスキルは無い。性能もあまり高くないな。


「ポータルシールド!」


 ポーンと俺の視界に、アイコンが浮かび上がった。


 転送 ←

 転移点記憶


 初期の転送位置は何処なんだ?

 転送を意識する。


 メルロマルク召喚の間。


 ああ、俺が最初に居たあの部屋ね。それ以外はなさそうだ。

 試しに飛んでみるか。

 すると範囲が意識された。

 転送できる仲間も指定できるのかよ。意図的に飛ばないようにも出来るようだ。

 しかも結構広いな。触っている必要とかも無いのかよ。

 緊急時の脱出スキルって奴でもあるんだな。


「じゃ、実験に転送スキルを使うぞ」

「うん!」

「あら、なんか楽しそうね」

「やるのか?」


 フォウルが怯えてサディナに掴まる。サディナの方もフォウルを抱えていた。

 フィーロは……。


「そうだフィーロ。もう少し離れてみてくれ」

「んー? わかったー」


 人型のフィーロがトコトコと歩いて俺から離れる。

 こんな物だろ。

 俺は転送を意識する。

 するとフッと見ている景色が変わり、土臭い、じめじめしたような祭壇に飛んだ。

 そういえば、ここはこんな所だった。

 誰もいないようだし、儀式もしていないのだから当たり前か。


「本当に飛んだわね。おもしろーい」


 ケタケタと笑うサディナ。お前は何時も笑っているな。

 フォウルは目をパチクリさせている。

 フィーロは……離れていたのに俺の近くに立っていた。

 便利なスキルだなー……。

 クールタイムはどんなものだ?


「ポータルシールド!」


 再使用時間、1時間のタイムカウンターが出た。

 思いのほか長いな。

 ま、短かったら戦闘中でも使用できるか。


「さて、帰るか」


 こうして俺たちは実験を終えて村へ帰るのだった。

 ちなみにポータルシールドの転移可能の転移点記憶はどうやら、洞窟や建物の中は基本的に不可能らしい。召喚の間は初期ポイントだからという扱いのようだ。


 で、記憶不可の場所では転移出来ないかと言うと、それは別で飛ぶ事は可能。

 しかも、実は叫ばなくても、口を動かすだけで飛べると来たものだ。

 自分の手で口を抑えて、ポータルシールドと言っただけでアイコンが出た。

 しかもパーティーメンバーをはじめ、周囲にいる任意の味方を選択して転移できる。


 つまり、味方が敵に捕まっていても使用可能という事だ。

 尚、敵対関係にいる相手は飛ばす事ができない。

 要するに魔物や勇者、ヴィッチなどは味方ではないので無理矢理連れて行く事はできない。


 こりゃあ、厄介だぞー……。

 ああ、そうそう。制限と言えば、どうやら馬車とか大きすぎる物を運ぶのは不可能らしい。

 だから他の勇者共は馬車を使っていなかったのか。

説明不足があったので加筆しておきました。

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