国民の恐怖に全く無関心…コロナが暴いた安倍首相のヤバい資質

メルケルを見てみろ
野口 悠紀雄 プロフィール

経済対策――国は国民を見捨てた

この首相が率いる政府は、コロナ感染に対して何をしてくれたか?

4月7日に、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策が閣議決定された。まず、布マスクを全家計に配ることとされた。

何のために配るのか? 布マスクは感染拡大を防止があるとは言われていないので、これで何ができるのか? 心理的な安心感か?

これに必要な費用は466億円と言われる。やるべきことはいくらでもあるのに、それに充てる財源が、466億円消えてなくなる。

こうした政策でも、実行を強いられる現場には大きな負担になる。そのマイナス効果の方がずっと大きい。

役所の下っ端で働いた経験から言うと、やりがいのある仕事なら、どんなに辛くても耐えられる。しかし、馬鹿げた仕事で深夜2時まで振り回されるのは、耐えられない。
 
つぎに現金給付30万円。これは散々批判を浴びたあと、連立与党・公明党の強硬な抗議もあって4月17日に一律10万円給付に異例の変更が行われた。

そもそも、この制度は悪用される危険があった。悪徳経営者なら、まず、所得制限を満たす従業員の給与を減らす。現金給付を受け取らせて、その穴埋めをさせる。これだけで、巨額の収入!

減収証明書の偽造対策を講じるという。しかし、雇い主が給与を実際に切り下げ、被用者が30万円貰い、後で山分けするのは、偽造ではない。これにどう対処するのか?

現金給付の総額は、3兆円程度と言われる。その多くが、悪賢い人たちの懐に入る。困っている人と損害を受けた人を助けるのでなく、悪賢い人たちに不当な利益を与える制度になる。

こんな制度が現実に登場し、閣議決定されるなど、信じられない。これは、マスク2枚のようにジョークでは済まされない問題だ。

そして、休業要請は自治体にまかせるが、政府は範囲拡大には反対した。さらに、「強制でなく要請だから補償しない」としている。

営業自粛しても、家賃、光熱費、維持費は払う必要がある。もちろん、従業員の給与もある。関係者まで含めれば、収入減少者の範囲はきわめて大きくなる。

マスクは配ったし、これから30万円配る。営業自粛要請や協力手当は自治体がやってくれる。政府は補償金を出さない。首相は自宅で寛ぐ。

これが、日本政府が発している明確なメッセージだ。要するに、国民は捨てられたのだ。こうしたメッセージを明確に出している国は、他にない。

 

繰り返すが、メルケルは、「企業と従業員がこの困難な試練を乗越えるために必要なものを支援していきます」と約束しているのだ。