国民の恐怖に全く無関心…コロナが暴いた安倍首相のヤバい資質

メルケルを見てみろ
野口 悠紀雄 プロフィール

「私は犬を抱いて自宅で寛いでいるよ」

それに比べて、我が国の首相は何をしたか? 

4月12日、「私は犬を抱いて自宅で寛いでいるよ」という動画が、「うちで踊ろう」という音楽とともに、SNSに流された。

これを見た多くの国民は、「これが本当に首相の投稿であるはずはない。悪質なフェイクだ」と思った。「何か月も前に撮影されたものを、首相を中傷するため、誰かが、今そうしているかのように投稿したのだ」と思った。

by Twitter @Abe Shinzo(動画あり)

しかし、これは本当に首相が流したものだった。ありえないことではないか?

我々は、いま極限の恐怖の中にいる。医療が崩壊しつつあるので、コロナに感染したらどう扱われるか分からない。これは、底知れぬ恐怖だ。

持病が悪化しても、恐くて病院に行けない。

医療関係者たちは、医療崩壊寸前の現場で必死の努力を続けている。

在宅勤務せよと政府は言っているが、満員電車で通勤しなくてはならない人が沢山いる。

収入が激減したので、これから生活を維持できるかどうか分からない。

メルケルが正しく指摘しているように、これは、第2次大戦以降、経験したことがなかった事態だ。

そうした中で、最高権力者とその周りの人々だけが、この恐怖から逃れている。

コロナは誰にも平等というが、感染した場合の扱われ方は違う。彼らは、熱が出ても、保健所に連絡して指示を受ける必要はないだろう。そうしなくとも手厚く看護される。そして、所得減少は、歳費削減2割だけだ。

国民が極限の恐怖に直面する中で、恐怖を全く感じていない人たちがいるということがよく分かった。

私の友人が2月下旬に言った。「コロナに感染するなら早いほうがよい。入院できるから。医療が崩壊 してからでは放置される」。そして、「権力者はこの恐怖は理解できないだろう」と言った。

あまりに恐ろしい予言なので何とか忘れようとしていたが、思い出してしまった。

「うちで踊ろう」というのだが、いまの日本で踊りたくなる人が、一体何人いるのだろう???。国家が破綻するかもしれないという事態において、犬を抱いて寛いでいられる人がいる。それは、冷厳たる事実だ。しかし、塗炭の苦しみに喘ぐ国民にその姿をわざわざ見せる必要はない。

暴動が起きないのは、暴動を起こす余裕さえ国民が持っていないからだ。

あのトランプでさえ、戦時大統領だと言っている。エリザベスやメルケルには比ぶべくもないが、それでも、寝食を忘れて危機に当たるというメッセージを国民に送っているのだ。

 

世界の指導者の中で、「私は、いま、自宅で優雅に寛いでいます」と公言した人がいるだろうか?