2016年ごろ「人工透析患者は自己責任だ」などと述べたフリーアナウンサー・長谷川豊氏は、世間から激しい非難にさらされることになった。この発言によってほとんど社会的生命を絶たれたに等しい彼のことを、2020年に覚えている人はめっきり少なくなってしまった。
しかし、この「透析患者自己責任論」からわずか数年で訪れる「アフター・コロナの世界」では、かつて彼が社会的評価をすべて失った言明とおおよそ同じような価値観を、世間の人びとは内面化するようになるかもしれない。「どうしてあんなことで腹を立てていたのだろう。いまとなっては、ごく当り前の考えにすぎないのに」――と。
「健康は人びとが遵守するべき義務であり道徳である。不健康・不健全をもたらしうるどのような自由にも優る。義務を果たさなかった不届き者が、健康な人には与えられる便益を享受できず、むしろペナルティが与えられるのは、至極当然のことだ」――このウイルス・パニックを潜り抜けた先で待っているのは、健康・健全であることや社会における医療リソースの保全への意識が高まった人びとが相互に監視と批判の目を光らせる、「ヘルシー・ディストピア」である。
今年は春の健康診断が予定通り行われない自治体や学校、企業なども少なくないようだが、だからこそ危機感を持って自分の健康状態を点検しておくべきだ。もしあなたがいま、生活習慣によってなんらかの不安を抱えているのだとしたら、いまのうちに「健康」になっておいたほうがよい。「健康でない」ことは、そのうち大罪になるのだから。