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コーヒー抽出かすを主原料とする培地による食用きのこの栽培方法

Abstract

【課題】 コーヒー抽出かすを大量に処理することができるコーヒー抽出かすを主原料とする培地による食用きのこの栽培方法を提供する。
【解決手段】 水分含量60〜80%のコーヒー抽出かす60〜97%およびきのこの栄養源となる物質3〜20%を含み競争菌の育成を抑制するための前処理が施された培地に食用きのこの種菌を接種し培養する。
【選択図】なし

Description

本発明は、食用きのこの栽培方法に関し、特にコーヒー抽出かすを主原料とする培地による食用きのこの栽培方法に関する。

近年容器詰め飲料の普及によってコーヒー飲料の生産量が増大し、これに伴って大量のコーヒー抽出かすが発生している。コーヒー抽出かすは焙煎したコーヒー豆を粉砕し水を加えてコーヒーを抽出した後に残る残渣である。コーヒー抽出かすを有用な資源として再利用する技術については、経済的にも生態学的にも大きな関心が寄せられており、すでに家畜の飼料に混入したり、堆肥化し土壌改良剤に用いたり、活性炭の製造に利用する等種々の提案がなされている。しかしコーヒー抽出かすは水分含量が60%以上であり、運送保管、乾燥等の点で経済効率が悪いため、これらの提案は商業的な規模で実施されるには至っておらず、コーヒー抽出かすの大部分は産業廃棄物として埋立地の埋立てに使用されたり焼却されているのが現状である。

食用きのこ栽培用の培地として一般に木粉(オガクズ)培地が用いられており、この木粉培地の物理的、化学的性質を調整するためにコーヒー抽出かすを調整材料として使用する提案がなされている。たとえば、特開平2−156828号公報には木粉培地におけるシイタケの発芽本数を抑制し1本当りの重量を増大させるための発芽抑制剤としてコーヒー抽出かすを添加する提案がなされている。しかし、これらの提案においては、コーヒー抽出かすは食用きのこ栽培用培地の主原料として使用されるものではなく、培地の主原料としてはいぜんとして木粉が使用されており、コーヒー抽出かすは木粉培地の物理的、化学的性質の調整剤として培地の小部分を形成するにすぎない(たとえば上記特開平2−156828号公報の実施例においては木粉60重量部に対しコーヒー抽出かすの添加量は10重量部にすぎない)。したがって、この程度のコーヒー抽出かすの使用量ではコーヒー抽出かすを大量に処理することはできず、大量に発生するコーヒー抽出かすの有効利用技術としての貢献度は小さい。

また、従来のコーヒー抽出かすをきのこ培地の調整材料として使用する提案においては、培地原料を小型の容器や袋に充填し、121℃程度の高温高圧下に完全滅菌後、冷却し、種菌を接種し、無菌状態で培養している。この方法は目的とする食用きのこのみを純粋培養するものであって菌糸の生育には効率的であるが、高温高圧下での滅菌処理のため小型の容器を使用しなければならないため大量生産ができず、コーヒー抽出かすの大量処理法としては不適当である。また高温で滅菌を行うためエネルギー消費量が大きく、さらに冷却まで時間がかかり処理時間が長くなる上に目的とするきのこの純粋培養のため無菌室が必要となり、管理に手間とコストがかかる等の問題点がある。

本発明は、コーヒー抽出かすの有効利用法としてコーヒー抽出かすを食用きのこ培地として利用する場合に生じる前記従来の技術の問題点を解決し、簡単に、しかも比較的短時間で食用きのこを栽培することができ、しかもコーヒー抽出かすを大量に処理することができるコーヒー抽出かすを主原料とする培地による食用きのこの栽培方法を提供しようとするものである。

上記目的を達成する食用きのこの栽培方法は、 水分含量60〜80%のコーヒー抽出かす60〜97%およびきのこの栄養源となる物質3〜20%を含み競争菌の生育を抑制するための前処理が施された培地に食用きのこの種菌を接種し培養するコーヒー抽出かすを主原料とする培地による食用きのこの栽培方法において、前記前処理として、培地中心部の温度60〜65℃で4〜6時間保持した後培地中心部の温度55〜60℃で24時間以上保持することにより培地を醗酵させる工程を含むことを特徴とする。

本発明によれば、水分含量60〜80%のコーヒー抽出かす60〜97%およびきのこの栄養源となる物質3〜20%を含み競争菌の生育を抑制するための前処理が施された培地に食用きのこの種菌を接種し培養することにより、従来産業廃棄物として捨てられて環境汚染の原因にもなっていたコーヒー抽出かすを有効にしかも大量に処理することができる
また培地を滅菌する前処理として、従来の高温高圧下での完全滅菌によらず、醗酵培地の使用により競争菌の生育を抑制するようにしているので、エネルギー消費を削減することができ、簡単にしかも比較的に短時間でコーヒー抽出かす培地を形成することができる。

本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本明細書において使用する百分率はすべて重量%である。

本発明の方法においては、コーヒー抽出かすの大量処理のため、従来のきのこ栽培方法におけるような部分的、補助的使用とことなり、コーヒー抽出かすを主原料として使用する。このため本発明においてコーヒー抽出かすは培地の60〜97%を占める。コーヒー抽出かすの水分含量はきのこの生育にとってきわめて重要な条件である。実験の結果水分含量が60%未満ではきのこが充分生育せず、また80%を超えると培地の通気性が悪くなり、細菌による汚染が発生し易く、きのこの生育を阻害することが判った。したがって培地中のコーヒー抽出かすの水分含量は60〜80%とすることが必要であり、好ましい範囲は65〜75%である。

本発明の方法においては、上記のとおり、コーヒー抽出かすを培地の主原料として使用するが、栄養強化のためきのこの栄養源となる物質を培地の3〜20%を占めるように添加すると、きのこの収量が顕著に増加することが判った。きのこの栄養源となる物質としては、米ぬか、ふすま、油粕、豆粕、棉実粕、コーンブラン、オカラ、穀粉が好適であり、これらの物質の中1種または2種以上を選択して培地に添加する。きのこの栄養源となる物質の添加量は3〜20%が適当であり、添加量が3%未満ではきのこの収量増加の効果が顕著に現れず、また20%を超えると培地の通気性が悪化し、細菌による汚染が発生し易く、きのこの収量は減少する。

実験の結果上記組成の培地にクエン酸0.05〜1%を添加すると、その理由は不明であるが、ヒラタケについて行った実験結果を示す表1から明らかなようにきのこの収量が有意に増加することが判った。クエン酸の添加量が0.05%未満では収量の有意な増加は観測されず、また添加量が1%を超えると収量はかえって低下する。

またきのこの培養にとって培地組成は重要であるが、代謝作用の順調な進行のためにはさらに培地のpHが重要であって、ヒラタケについて実験した結果、至適pHは表2に示すように6.5〜7.0であり、このpH範囲において最大の収量が得られることが判った。なお培地のpHはシュウ酸等の生成により、6.5〜7.0の初期pHが最終的には5.1〜5.3に低下し、このため細菌による汚染を防止することができるものと思われる。

本発明者らによる研究と実験の結果本発明にかかる食用きのこの栽培方法が適用される食用きのことしてもっとも好適なきのこはヒラタケ属(Pleurotus )のきのこであることが判った。

コーヒー抽出かすは主としてリグニン、セルロース、ヘミセルロースからなるが、ヒラタケ属はこれらを同時に分解する特異な能力を有する白色腐朽菌に属する。ヒラタケ属のきのことしては、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus )、タモギタケ(Pleurotus cornucopiae van citrinopileatus )、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius )等がある。ヒラタケ属は香味が優れ世界的にも消費が拡大している食用きのこであり、世界におけるヒラタケの生産量は近年急激に成長し、現在ではシイタケを抜いてマッシュルームに次ぎ世界第2位の地位にある。このように世界の人々に好まれ生産量が激増しているヒラタケがコーヒー抽出かすのリグニン、セルロースおよびヘミセルロースを同時に分解し資化する能力を有する上にコーヒー豆を焙煎した時生ずる褐色物質は糖や蛋白が変成しフェノール物質と結合したフミン酸でヒラタケ属の優れた栄養源である。このことは、コーヒー抽出かすをヒラタケの培養のための培地として利用することにより、大量のコーヒー抽出かすを処理する道を開くものであり、ヒラタケ属が本発明にかかる食用きのこの栽培方法が適用されるもっとも有望なきのことして挙げられる理由である。

また、ヒラタケ属のきのこはこのようにコーヒー抽出かすのリグニン、セルロース、ヘミセルロースの高分子を生化学的に分解し変換するため、ヒラタケ属のきのこを培養し収穫した後の廃培地は他の生物によって分解され易すくなり、飼料、肥料、製紙原料、マッシュルーム栽培用培地、土壌改良剤、単細胞タン白、脱臭剤、酵素剤等として再利用することが可能となる。

上記のとおり、ヒラタケ属は本発明にかかる食用きのこの栽培方法が適用されるもっとも好適なきのこであるが、本発明にかかる方法は、収量としてはヒラタケに及ばないものの、エノキタケ、シイタケ、イヨタケ等ヒラタケ属以外の食用きのこの栽培にも適用することが可能である。ただしこれらヒラタケ属以外の食用きのこはセルロースおよびヘミセルロースはよく分解するが、リグニンやフミン酸を分解する能力においてヒラタケ属のきのこよりも著るしく劣るので、きのこを収穫した後の廃培地を他の用途に再利用しうる可能性はヒラタケ属に比べてはるかに低い。

コーヒー抽出かすを主原料とする培地において充分な食用きのこの収量を得るには、培地原料に含まれる病原菌や害虫を除去し、培養中に競争菌の侵入から基質を防御し、食用きのこ菌糸の急速で旺盛な生育を支持する培地を調製するための前処理が必要である。

本発明の一側面において、この前処理は、上記コーヒー抽出かす60〜97%およびきのこの栄養源となる物質3〜20%を含む培地原料を3〜7mm径の粒径に加工した後、培地に抗菌剤を添加する工程を含む。

培地原料となるコーヒー抽出かすを造粒する場合はコーヒー抽出かすを脱水して水分含量10%程度とした後米ぬか等栄養源となる物質を添加混合し、造粒機によりペレット状、小球状等に造粒する。造粒された培地の粒径は3〜7mmの範囲内で、食用きのこの性質等を考慮して適当な通気性を維持できるような粒径を選択する。

栄養源となる物質として米ぬかを添加した場合を例にとると、ヒラタケについての実験結果を表3に示すように、培地を造粒しない場合は米ぬか濃度の上昇に比例して食用きのこの菌糸の生育速度(米ぬか添加率0%で育成期間22日の場合の生育速度を100とする)は低下した。これは米ぬかの添加量が増加するにつれてコーヒー抽出かすの粒子間が密着して空隙がなくなり培地の通気性が損われたためと考えられる。

これに対して培地を造粒すると、表4に示すように、造粒しない場合に比べて菌糸の生育速度(米ぬか添加率0%、育成期間25日の場合の生育速度を100とする)は顕著に増加し、また米ぬかの濃度を増加しても菌糸の生育速度の実質的な低下は観測されず、ほぼ一定の生育速度を維持することが判った。

この前処理で使用される抗菌剤としてはbenomyl (商品名ベンレート)、carbendazol (商品名サンメート)、prochloraz manganese(商品名マンネブダイセン)、thiabendazole (商品名ビオガード)、zineb (商品名ダイセン)等が好適である。抗菌剤の必要使用量は50〜500ppm以上で、好ましくは200〜300ppmである。

本発明の他の側面においては、前処理として、培地中心部の温度60〜65℃で4〜6時間保持した後培地中心部の温度55〜60℃で24時間以上保持することにより培地を発酵させる。

発酵はたとえば放線菌Streptomyces thermovulgaris による好熱発酵により行うことができる。発酵を促進させるため小量のコンポストを培地に混合することが好ましい。また通気性を向上させるために稲わらまたは麦わらを5mm程度に細断して培地に混合してもよい。

本発明の他の側面においては、前処理として、培地を密閉容器中で60〜100℃で3〜5時間加熱する。この処理により競争菌の生育が抑制されるとともに培地に含まれる糖質やフェノール物質が変性してきのこの培養が可能となる。

本発明のさらに他の側面においては、前処理としてコーヒー抽出かすを60〜70℃の熱水に浸漬し15分〜1時間保持した後脱水して水分を調節する。米ぬか等の栄養源となる物質は脱水後に添加する。

なお、使用する熱水として50〜500ppm以上の抗菌剤溶液を使用すれば競争菌の生育を抑制する効果を高め収量を増加させることができる。

上記各前処理によれば、高温高圧下での培地の完全滅菌を行う従来法によらず、抗菌剤の使用、培地の発酵、低温加熱、熱水の使用のいずれかによりクモノスカビ、ミコゴン、褐班病菌、緑色カビ等の競争菌の生育を抑制しつつ食用きのこを生育させることができる。これによって、従来法のように培地を小型の容器に充填する必要がなくなりコーヒー抽出かすの大量使用による食用きのこの大量生産が可能となり、またエネルギーの消費が大幅に削減されるので、大量生産に伴うエネルギー消費の増大という問題を解決することができる。この目的でまた、上記各前処理によれば、競争菌の生育が抑制されるばかりでなく、培養初期に汚染した競争菌のコロニーが後期に消失する場合があり、前処理によって弱体化した害菌が食用きのこ菌によって分解され窒素源として吸収されることを示している。したがって、高温高圧下における完全滅菌と異り、ある程度競争菌の生育を許容する上記各前処理を採用することにより、競争菌の耐性低下によって分解、吸収されて窒素源としての利用が可能となり、栄養源として添加する米ぬか等の添加量をその分だけ減らすことができる。

上記のいずれかの前処理を施した培地に目的とする食用きのこの種菌を接種した後食用きのこの種類に応じて必要な培養条件下できのこを培養し、原基の誘導と子実体の形成を行わせ、きのこを収穫する。

以下本発明の実施例および参考例について説明する。

〔参考例1〕
抗菌剤を使用する前処理によるヒラタケ菌糸の育成
コーヒー飲料製造工場からコーヒー抽出かすの分譲を受け、腐敗を防止するため直ちに乾燥し、水分含量を約10%として密閉保存した。

乾燥コーヒー抽出かすを培地全体の90%とし、米ぬかを培地全体の10%添加し、その混合物をペレット造粒機により直径5mmのペレットに造粒した。

抗菌剤としてベンレート(商品名)を使用し、このペレット化した培地に50,100,150,200,300ppmの各濃度のベンレート溶液を添加し、培地の水分含量を70%とした。各培地試料を径60mmのシャーレに10gまたは、500mlのポリ培養びんに400gずつ充填し、同時に培地の5%の量のヒラタケ菌を接種した後25℃で培養した。各コロニーの菌糸の直径(シャーレの場合)または伸長距離(培養びんの場合)を測定した。各測定値は5試料の平均から生長指数(菌糸生長/完全菌糸生長×100)で表した。
各ベンレート濃度における菌糸の成育速度を表5に示す。

なお、比較のためコーヒー抽出かすのみを培地として使用した結果を併せて示す。表5において「汚染」の表示は競争菌が同時に生長したことを示す。表5から判るように、コーヒー抽出かすのみからなる培地はベンレート濃度200ppm以上では汚染されなかったがヒラタケ菌糸の生育は阻害された。また米ぬかを添加した本実施例の培地では、培養初期に汚染が激しいが、ベンレート濃度200ppm以上の処理では、いったん生育した競争菌が培養の後期にはヒラタケ菌に吸収され、ヒラタケ菌糸は再び生長を回復する現象が観測された。また、ベンレート処理しない培地では緑色かびによる汚染がはなはだしく、実験を中止せざるを得なかった。

〔参考例2〕
抗菌剤を使用する前処理によるヒラタケ子実体の収穫
ヒラタケ子実体の収量測定のため、コーヒー抽出かす培地中の米ぬか添加量を種々変化させたペレット培地を実施例1と同様の方法で作り、濃度100,200,300ppmのベンレート溶液を各培地に添加し、その水分含量を65%に調整した。この培地を500mlポリ培養びんに充填し、同時に培地の5%の量のヒラタケ菌を接種し、25℃で暗所において1ヶ月間菌糸を育成した後栓を開き、菌掻き、注水を行い、17℃、80%Rhの条件で明所において子実体の誘導を行った。約10日で珊瑚状の原基が誘導され、数日後に子実体に成長した。傘の直径が約3cmに成長した時点で子実体を採取し、土付き部を除き秤量した。各測定値は5試料の平均値で表した。その結果を表6に示す。

この実験では、米ぬか添加量20%、ベンレート濃度300ppmのとき最大の子実体収穫量を得た。

〔実施例1〕
醗酵培地によるヒラタケ子実体の収穫
コーヒー飲料製造工場からコーヒー抽出かすの分譲を受け、水分含量を70%に調節した後米ぬかを培地全体の5%,10%,20%ずつ添加した培地試料を形成した。また米ぬか10%を添加した上に発酵促進のためにコンポストを培地全体の5%添加した培地試料を形成した。これらの培地試料について放線菌Streptomyces thermovulgaris による発酵を行った。醗酵は各培地試料を容器に充填し、まず室温60℃の殺菌温度で5時間維持してから発酵温度50℃の恒温器の中で24時間維持することにより行った。

各培地試料を500mlのポリ培養びんに400gずつ充填し、同時に培地の5%の量のヒラタケ菌を接種した後実施例2と同様の方法で菌糸の育成、子実体の誘導および収穫を行った。各測定値は5試料の平均値で表した。米ぬか添加量と達成した醗酵温度(培地中心部の温度)およびヒラタケ収量の関係を表7に示す。

好熱発酵は温度に比例し、培地中心部の温度が55℃に達すれば発酵は終了したものと見なすことができる。表7から発酵温度、収量とも米ぬか添加率10%の培地が最適であることが判る。
またコンポスト添加が発酵温度、収量に及ぼす影響を表8に示す。

表8から、コンポストの添加は発酵温度を上昇させヒラタケの収量を増加させる効果があるが、米ぬかを添加しない場合はその効果も少いことが判る。

〔参考例3〕
低温加熱前処理によるヒラタケ子実体の収穫
水分含量70%のコーヒー抽出かす90%と米ぬか10%からなる培地400gを500mlポリ培養びんに充填し密閉して80℃で3時間加熱維持した。冷却後培地の5%の量のヒラタケ菌を接種し、実施例2と同様の方法で菌糸の育成、子実体の誘導および収穫を行った。その結果30.7gのヒラタケ子実体を収穫することができた。

〔参考例4〕
熱水浸漬前処理によるヒラタケ子実体の収穫
コーヒー抽出かすを70℃に加熱した100ppmベンレート溶液に浸漬し1時間維持した後脱水してコーヒー抽出かすの水分含量を70%に調節した。これに米ぬかを混合しコーヒー抽出かす90%、米ぬか10%の培地を形成した。この培地400gを500mlポリ培養びんに充填し、同時に5%の量のヒラタケ菌を接種し、実施例2と同様の方法で菌糸の育成、子実体の誘導および収穫を行った。その結果25.5gのヒラタケ子実体を収穫することができた。

〔実施例2〕
醗酵培地による各種食用きのこの菌糸の育成
コーヒー抽出かすの水分含量を70%に調節した後コーヒー抽出かす90%、米ぬか10%の割合で混合して培地を形成し、実施例1と同様の方法により好熱発酵を行い発酵培地を形成した。この培地を複数本の試験管に充填するとともにヒラタケ、ウスヒラタケ、タモギタケ、アワビタケ、ヤマブシタケおよびアラグキクラゲの菌糸をそれぞれ接種し、24℃のインキュベータで培養した。

接種3日後から3週間あるいは菌糸が試験管内に充満するまで各きのこの菌糸の伸長を毎日記録し、1日当りの菌糸生長速度(mm・day-1)を算出した。その結果を表9に示す。

表9から、コーヒー抽出かす培地に対する適応性は菌株、系統によって異り、ヒラタケがもっとも早い生長速度を示すが、他の食用きのこもヒラタケには及ばないまでもコーヒー抽出かす培地における培養が充分可能であることが判る。

Claims (2)
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  1. 水分含量60〜80%のコーヒー抽出かす60〜97%およびきのこの栄養源となる物質3〜20%を含み競争菌の生育を抑制するための前処理が施された培地に食用きのこの種菌を接種し培養するコーヒー抽出かすを主原料とする培地による食用きのこの栽培方法において、前記前処理として、培地中心部の温度60〜65℃で4〜6時間保持した後培地中心部の温度55〜60℃で24時間以上保持することにより培地を醗酵させる工程を含むことを特徴とする食用きのこの栽培方法。
  2. 培地にクエン酸0.05〜1%を添加したことを特徴とする請求項1記載の食用きのこの栽培方法。