タケノコと相性のいい意外な食材

今日のテーマは今が旬真っ盛りのタケノコ。アク抜きが面倒なイメージがありますが、意外にもたっぷりの水で茹でればよいだけだそう。タケノコと相性のいい食材、アク抜きの仕組みについて詳細に解説した決定版です。旬の香りをぜひお楽しみください。

春の味覚、タケノコ。水煮のタケノコは年中売られていますが、スーパーで生のタケノコが買えるのは今の時期だけの特権です。アク抜きが必要なので面倒と思われがちですが、実際はただ煮るだけなので一度挑戦してみてください。
今回はタケノコをベーコンと一緒に煮て、ごま油で香りをつけた料理をご紹介します。ここで学べるのは〈相性の科学〉です。

タケノコとベーコンの煮付け

材料(2人前)

タケノコ…1個(150g〜180g アク抜きしたもの)
ベーコン…100g(ブロック)
醤油…大さじ1
砂糖…大さじ1
酒…50cc
水…50cc
ごま油…小さじ1
七味唐辛子…少々

1.タケノコとベーコンは一口大に切る。鍋に入れ、醤油、砂糖、酒、水を加えて、アルミホイルなどで落し蓋をし、中火にかける。

2.沸騰したらそのまま10分間煮る。煮詰まってくると焦げる場合があるので注意(煮詰まるようであれば火が強すぎるので弱める)。煮汁が少なくなってきたらごま油を加え、火を止めて、器に盛り付ける。七味唐辛子を好みで振る。


タケノコと相性のいい食材

タケノコご飯に若竹煮(タケノコとワカメをあわせた煮物)、鰹節と一緒に煮た土佐煮など色々あるタケノコ料理。タケノコはそれ自体にうま味が多い食材ではないので「なにと組み合わせるか」で、料理のおいしさが決まります。

料理の食材の相性(おいしさ)はどのように決まるのでしょうか。もちろん、おいしさは主観的なもの。文化的な違いによる要素は大きいでしょう。相性=おいしさが主観的なので、相性のよさを科学的に証明するのは難しいのですが「共通する香り成分を持つ食材同士は相性がいいのではないか?」という仮説はあります。

このフードペアリング仮説はスイス、ジュネーブにあるフィルメニッヒという世界的な香料メーカーの研究者が発表したもの。この仮説は現在も議論の的で、ある論文によると西洋ではフードペアリング仮説は支持されるが、東アジア圏ではむしろ同じ風味化合物同士を避ける傾向にある、という報告もあります。

この仮説がどこまで普遍的かはさておき「この素材にはこれを組み合わせる」という固定観念から抜け出して、意外な組み合わせを発見できる利点があることから、この仮説に基づき、食材同士の相性の良さを調べることができるサイト(Foodpairing.com)も広く利用されています。


Foodpairing.comより引用)

試しにタケノコを検索してみましょう。どうやらタケノコと相性のいい食材はスペインのソーセージとブルーチーズのようです。タケノコには硫黄系の香り(例えば加熱したミルクのような)があるのでチーズとの相性がいいことは理解できます。(参考「タケノコはなにと組み合わせるか〜タケノコのソテー、ブルーチーズソース〜」

他にも色々と食材が挙げられているのですが、ベーコンとごま油が目についたので、今回はタケノコ、ベーコン、ごま油を組み合わせた煮付けを作ってみました。ベーコンとタケノコは日本料理ではあまり組み合わせませんが、ごま油とタケノコの組み合わせはメンマの構造。さて、実際に食べてみて相性の良さを感じられるでしょうか? こうしたサイトを参考にしながら自分で相性のいい組み合わせを探るのも楽しいかもしれません。


タケノコのアク抜き

タケノコのアク抜きは面倒と思われていますが、実は簡単です。必要な道具は〈大きな鍋〉だけ。しかし、大きな鍋がなくても、アク抜きのメカニズムを理解すれば対処できます。

タケノコのアク抜きの秘訣はただ一つ「たっぷりの水で茹でること」です。この写真では硬くて食べられない穂先を先に切り落としていますが、切りづらいようならそのまま茹でても大丈夫。茹でてからのほうが切りやすいと思います。根元は色が黒く変わっていれば削り落としますが、これも茹でてからのほうが具合がいいでしょう。

タケノコのアクは主にホモゲンチジン酸とシュウ酸という二つの成分に由来します。どちらにもエグみがあるので、タケノコは普通アク抜きをしてから食べます。ホモゲンチジン酸とシュウ酸は水溶性なので、茹でることで溶け出してきます。たっぷりの水で茹でるとそれが希釈され、さらにアクが抜けます。これがアク抜きのメカニズムです。

タケノコのアク抜きは一般的に「米ぬかと赤唐辛子で茹でる」とされ、スーパーでタケノコを買うと米ぬかがついてきます。しかし、米ぬかは必ずしも必要というわけではないのです。実際、タケノコの水煮缶詰の製造工場ではタケノコをかごに入れて熱湯で茹でた後、水にさらすことでアク抜きを行っています。

米ぬかを入れて茹でるとタケノコに独特の香りと甘みがつく、というメリットがありますが、米ぬかが溶けた水は排水溝に流すわけにもいかないですし、鍋にこびりつくので洗うのも一苦労。

それなら、たっぷりの水で茹でたほうが合理的です。水溶性のアクを希釈しながら溶かすわけですから、鍋が小さければ15分間茹でた後、水を入れ替えて、もう15分茹でればいいだけですし、タケノコが鍋に入らない、という場合は切ってから茹でればいいだけです。アク抜きのメカニズムさえ理解すれば、やり方にこだわる必要はありません。

茹でる時間はタケノコの大きさによって異なります。写真くらいのタケノコであれば30分程でやわらかくなりますが、大きいものは1時間ほどかかるかもしれません。タケノコに火が通ったか確かめるには根本のあたりに竹串をさして見るのが簡単。やわらかく煮えたら火を止めて、そのまま放置します。そのあいだにさらにアクがぬけるはずです。

冷めたら硬い皮を剥きますが、ここで「どこまで剥いたらいいかわからない」という問題が出てきます。答えは「剥けるところまで」です。剥いた皮の根元側の白い部分は食べられるので捨てないでください。

この白い部分、どこまで食べられるのでしょうか。たしかめるには包丁を入れて、実際口に入れて食べてみるのが簡単です。皮を重ねて力を入れずに包丁で切れるようならたいてい食べられます。この部分は絹皮や姫皮と言われる部位で、みそ汁に入れたり、ワカメとあわせてお吸い物にする、タケノコご飯にすると美味です。

根元近くの表面にある茶色い突起は、美的な見地から気になる場合には包丁で削ぎ落としますが、食べられる部分ではあるので、そのままにするという選択肢もあります。

タケノコは穂先にいくほどやわらかいのですがエグみが強く、根元の部分は硬いけれど甘い、という特徴があります。味や食感が異なるのでタケノコご飯をつくるなら、絹皮と根元の部分の角切りを入れるなど、混ぜることでおいしさを出します。硬いところは薄く切り、やわらかいところは厚く切るなど硬さを意識しながら料理するのがコツです。

煮たタケノコは水に浸した状態で保存します。冷蔵庫で数日は保存できますが、タケノコの旬は短いので早めに食べるのがいいでしょう。一年に一度くらいは生のタケノコを煮て、食べてみてください。普段、水煮しか食べてない人であればタケノコを見直すはずです。


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    コメント

    suisuiayaka まって...昨日ご近所さんから土ついたままの筍ふたつもらって途方に暮れてる私のためだけの記事かもしれない... 約1時間前 replyretweetfavorite

    jojakudesu タケノコとベーコン!香りが似ていると相性がいいそうです。 約2時間前 replyretweetfavorite